第8話 お題「苦手」 『森本の、耳たぶ』

『森本の、耳たぶ』


あたしは同期の森本が苦手。仕事ができてチャラく、どうもあわない。

今朝、あたしは早朝出勤の森本を見た。ピアス穴のふさがった無防備な耳が、寒さで赤くなっていた。

「――あっ」

彼はあわてて耳たぶをつかむ。その指も、赤かった。


あたしも赤くなる。

泣きたい。

持っていかれる、全部。

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