第134話「ざまぁ再び! 絶縁宣言パートⅡ」
ディーノと、クリストフ・シャレット伯爵、
ふたりで存分に語り合い、帰還の車中は大いに盛り上がった。
……この道中、騎士隊100名がにらみを利かせたせいもあり、
帰路は魔物、山賊等の襲撃もなく、無事一行は王都へ戻った。
とりあえずは全員が、王都騎士隊の本部へ……
隊長専用の馬車を降りたディーノは、
同乗させて貰った、クリストフへ礼を言う。
「伯爵様、ありがとうございました。ステファニー様の件、何卒宜しくお願い致します」
「うむ、分かった。ディーノ、お前こそ、何かあったら頼むぞ」
「了解です」
という会話を、笑顔でやりとりをしているところへ……
肩を怒らせたステファニーが、女子達一行を引き連れ、現れた。
事が、己の計算通りに運んでいると思い込み、自信に満ちあふれた表情だ。
しかし!
ステファニーにとっては『衝撃的な、ざまぁ事件パートⅡ』が発生するのだ。
ディーノを見たステファニーは、悪戯っぽく笑い、尋ねて来た。
「うふふ、ディーノ! クリスおじさまから聞いてくれた?」
「はい、伯爵様から、お話は聞きました」
「よっし! じゃあ! 全て完了! さっさとシルヴァン・ベルリオーズ公爵様からOKを貰って、フォルスへ戻るわよ!」
「は、はあ……」
「あんたが、こなかけた
ステファニーは相変わらずと言うか、勝手に話をどんどん進めている。
対して、ディーノは
「成る程……」
「オレリアだけ、南方のフォルスじゃあ、すぐポミエ村へ里帰り出来ないって、迷っているけど……あとは飛竜亭のニーナだっけ? あの子共々、さっさとOKの答えを貰うわ!」
しかし!
ここで、ディーノはステファニーへ「ストップ」をかける。
「あの、ステファニー様」
「何よ!」
「その話、白紙に戻した方が宜しいかと」
「はあ? 白紙? どうして?」
「さあ、行け!」
とばかりに、ディーノはきっぱりと言い放つ。
「俺、伯爵様のご提案を全てお断りしました」
完全に不意を
「はああああああ~~っ!?」
「伯爵にはお断りする理由をきちんと話して、ご納得して頂きましたので」
「おおお、お断りする理由ってぇぇ!! な、何よ~~っっ!!!」
「……ステファニー様の為です」
と言い、ディーノはステファニーをじっと見つめる。
目と目が合い、「どきっ!」としたステファニーは少しだけ頬を赤らめる。
「な!? ななな、何よっ!! わ、私の為ってぇ!」
「はい! 俺との結婚なんかより、遥かに大事な事があります。ステファニー様はお父上の跡を継ぐ方が、ダントツで重要でしょう?」
「ディーノったら、何言ってるの? 馬鹿言わないでよ! あんたとの結婚も、同じくらいに大事よっ!!」
「そこは華麗にスルー。という事で、公爵様へ後継者のお願をいする際の手みやげとして、今回の戦果をステファニー様の功績としてお持ちください。そうすれば、後々上手く事が運びます」
と、ここで口をはさんだのが、クリストフである。
「うむ、ステフィ、ディーノの言う通りだぞ」
絶対的な味方のはずが!?
裏切った!?
クリストフはディーノの味方!?
さすがに動揺する、ステファニー。
「ク、クリスおじさまぁ!?」
「ステフィ、残念ながら……ディーノはお前と結婚するつもりはないようだ。貴族と平民では折り合わぬと言ってな。すっぱり
クリストフは、ディーノの意思を代弁してくれた。
ディーノは嬉しさのあまり、「うんうん」とさりげなく頷いた。
一方、ステファニーは『クリスおじさまの裏切り』に驚きっ放しだ。
「な!?」
「私も同意見だ。ディーノはこのまま冒険者を続けるそうだぞ」
「う、うううっ」
「養子の件も断って来たし、騎士隊入隊の件もナシだ」
ステファニーには、話が見えて来る。
経緯が分かって来た。
状況が完全につかめた。
当然、彼女の怒りは頂点に達し、
顔を真っ赤にしたのは勿論、
目が吊り上がり、口を「かあっ」と開け、悪鬼のような表情となる。
「ぬうおおおおおううううう!! ディーノォォォォォォ!!!」
声を枯らして絶叫するステファニー。
遠くに居た騎士達も驚いて、一斉に振り向いた。
最も驚いたのは、当然ながらクリストフである。
「お、お、おいっ! ステフィっ!! い、一体どうした、その怖ろしいオーガのような顔と、とどろく叫び声はぁ!? い、いつもの可愛いお前らしくないぞっ!」
と言われ、ステファニーは我に返り、何とかいつもの表情へ戻した。
慌てて取り繕う。
「はっ! は、は~いっ! ク、クリスおじさま、ステフィは、ほんのちょっと驚いただけですわぁ……」
「で、で、では、ステフィ。今回の件は、これで了解したという事で構わないな?」
ディーノから頼まれた通り……
クリストフは、ステファニーへ、『結婚断念のOK』を取るべく尋ねた。
「う~~……」
しかし!
ステファニーは眉間にしわを寄せ、犬のように唸り、答えない。
クリストフは、再びステファニーの名を呼ぶ。
「ステフィ!」
「は、はい……わ、分かりましたわ、ほほほ……」
しばしの間を置き、ようやくステファニーは答えた。
両こぶしを「ぎゅっ!」と、悔しそうに固めて。
今、ステファニーの心の中では、超が付く怒りの感情が渦巻き、
ディーノの「ざまあ~っ!!!」という声も、大きく響いていたのであった。
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