第63話「復讐①」
ディーノ達から反撃の脅しを受け、慌てて引き揚げて行った愚連隊
すかさず、魔獣ケルベロスは彼等を追跡した……
尾行を悟られないよう、慎重に追跡したケルベロスは、
ブリアック達が鉄爪団のアジトと思われる、スラム街付近の古ぼけた敷へ逃げ込むように消えたのを見届けると……
王都の中央広場の片隅で、
ジャンは開口一番、叫ぶ。
『おう、犬っころ!』
『…………』
しかめっつらで無言のケルベロスに対し、ジャンは完全な上から目線で言い放つ。
『俺様の指示通り襲撃者のヤサは見つけたか?』
ここでケルベロスは反論する。
『はっ! お前じゃなくディーノの指示だろうが! 相変わらず偉そうな猫だ』
『俺様はディーノの次に偉いんだから仕方にゃあ』
『何だと! って、お前と喧嘩していたら、ディーノに迷惑がかかる』
『けっ! 優等生ぶりやがって!』
『スルー。奴らのヤサはスラム街にある古い屋敷、奴らの正体はある貴族に雇われた愚連隊だ』
『成る程、なら愚連隊の名と雇っている貴族の名は?』
ジャンの問いかけに対し、ケルベロスはディーノから教えて貰った通りに報告する
『愚連隊の名は
『ふむ、犬っころにしては上出来の報告だ。後は優秀な俺様に任せろ』
『優秀な俺様に任せろ? 本当に大丈夫か?』
『誰にモノを言ってる? 世界一の情報屋である俺様に不可能は全くにゃい!』
『……まあ、良いだろう。それでディーノとオルトロスが帰還したら、集合場所は?』
『俺様が市民街に隠れ家を持ってる。そこに集合して打合せだ』
『ほう! 猫小屋か?』
『バカヤロ! 小屋じゃにゃい! れっきとした人間用の屋敷だ』
『人間用? ほう! どうやって確保した?』
『けっ! 俺の
『ふふ、中々やるじゃないか。少し見直したぞ』
『少しじゃにゃい! 全部見直せ! そして俺様を敬い称えるんにゃ!』
『分かった、分かった。じゃあ俺はもしもの場合を考え、奴らから飛竜亭の者達へ危害が及ばぬよう、遠巻きにして見張っておこう』
『あほう! そんなの今更だ!』
『今更?』
『愚か者の犬っころめ! 俺様にぬかりはにゃい! 既に部下達が飛竜亭と冒険者ギルドを見張ってる。ついでに
『…………』
ディーノとつながりがある全ての者に見張りを付けたジャンの手筈。
聞いたケルベロスは無言で二ッと笑った。
相手の感じ方が気になったのか、ジャンが問う。
『どうだ?』
『いや、全くの予想外だな。そこまで手配していたとは……少しだけ驚いたぞ、見事なものだ』
『だろ! ようやく俺の実力を素直に認めたか? えっへん!』
『うむ、100点満点のうち、半分の50点をやろう』
『はあ!? 50点だとぉ! 何でたった半分なんだよぉ!』
『残りの半分はお前がディーノの役に立つ有用な情報を持って来たら、だ。そのときは満点をやろうじゃないか』
『言ったな! 犬っころ! じゃあ100点取った時は俺様を尊称で呼ぶ事! 約束だぞ!』
『……ああ、約束しよう』
『男同士の固い約束だぞ! 絶対守れよ!』
『分かった! 俺は約束を
こうして……
魔獣ケルベロスと妖精猫ジャンの間には、『奇妙な約束』が交わされたのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ケルベロスから遅れる事、約1時間……
ディーノを背にしたオルトロスは、王都まで少しの距離にある街道沿いの雑木林へ到着した。
ここでディーノはオルトロスの背より降りて、徒歩で王都へ戻る。
オルトロスは第一形態の子犬に戻り、王都入場の混雑に紛れて、入り込む作戦である。
獰猛な狼の姿なら身体を張っても阻止する門番も、可憐な子犬なら咎めて少し追いかけるくらいであるだろうから……
案の定、子犬の姿に擬態したオルトロスはほぼノーマークで王都へ入場した。
一方ディーノは、薬草採取の為の小旅行から帰還という形で、正式な手続きを経て、同じく入場する。
手続きの為、並んでいたディーノの心へ、ジャンとオルトロスから交互に念話で連絡があった。
ジャンはケルベロスのぶらさげた『人参』に釣られたのか、気合が入ったらしい。
既にロシュフォール伯爵の身辺と王国との関係、加えて愚連隊
ディーノがジャンの情報収集能力を褒めると、「えっへん」という声が聞こえた。
思わず笑いそうになったディーノがジャンを労い、指定されたジャンの隠れ家の場所へ向かうと告げれば……
入れ替わりにケルベロスからも連絡が入る。
珍しくジャンを褒めたケルベロスは、現在飛竜亭の近くに待機、万が一の場合に備えているという。
ディーノはケルベロスも労わった上、彼の弟オルトロスの働きを褒めると、
ジャンの隠れ家で落ち合う事を告げたのである。
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