第23話 眠れる獅子
「兄ちゃん、こんなに大量の短剣何に使うんだい」
「へへ、ちょっと作戦があってな。これはおっちゃんにも教えてやらねぇよ?」
あれから俺は武器屋を複数巡り、ありったけの短剣を購入した。
大量の短剣を購入する俺を武器屋のおっちゃんは不思議そうにしていた。
それもそうだろう、短剣は多くても一人二本までしか持たない。メインで使う用とサブで体のどこかに仕込んでおくようだ。俺はそんな常識から大きく外れたニ十本近くを購入していた。
「ま、なんでもいいけどよ。毎度あり~!」
俺は武器屋のおっちゃんに手を振り、急いで会場へと戻った。
「お~い! 時間大丈夫か?」
リリアとカーヤはそわそわした様子で参加者入り口の七本の分かれ道の前で待っていた。
俺を見つけるなり二人は七番の入り口の前に移動し、俺を手招いていた。
「ちょっと京谷! 早くしなさい、始まるわよ!」
「皆さん待ってます~!」
「悪い悪い!」
丁度順番が回ってきていたのか、俺たちが出る試合のベット終了まであと三分との表記がモニターに映し出されていた。
俺は素早く動かす足を緩めることなく七番の参加者入り口まで走った。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「ち、近くで見ると凄い迫力だな……」
俺たちは七番の入り口を一分ほど走って進むと、そこにはリヴァイアサンへの搭乗口があった。
中には三人の魔導士がリヴァイアサンに睡眠魔法を発動している。
一人では不十分なのか、三人がかりでようやく眠っているという様子だった。
「今からこれに乗るのね……恐怖もそうだけど、興奮もしてきたわ」
「これ起きないんでしょうか……」
二人は怖がっている様子だったが、ひとまずはここで辞めるなんて事を言われなくてよかったと思った。
「京谷さんチームですね、こちらへどうぞ」
俺たちは屈強な戦士に連れられ、七番のゼッケンをつけたリヴァイアサンの後ろを通り、数段の段差を登って頭付近までやってきた。手を伸ばすと届きそうなくらいまで近寄った。
背中にはきちんとした足場が付けられており、腰丈くらいにある手すりもついている。
「こちらからリヴァイアサンの上へどうぞ。あまり激しく振動を与えると起きてしまうので、慎重に」
やはりよほど気性が荒いのか、指を一本口の前に持ってくると、喋らないようなジェスチャーをされた。
俺たちは無言でリヴァイアサンの上に乗り、頭の方に視線を持っていくとそこにはゲートの向こうに広大な湖が広がっていた。
「それでは、ご武運を」
戦士はそう告げると、睡眠魔導士三人だけを残しこの部屋を後にした。
すると全員の準備が整ったのか、会場に響き渡るアナウンスが聞こえてきた。
そのアナウンスが響くや否や、起きないようにと睡眠魔導士たちは先ほどよりも強力な魔法をリヴァイアサンに浴びせていた。
『それでは本日ラストの試合! 第三回戦リヴァイアサンの水上ロデオ! 相手の邪魔をするもよし! リヴァイアサンに喰わせても良し! なんでもありの極悪非道のギャンブル開催だぁぁぁ! 皆ありったけのベットはしたよなぁ? それじゃあ解き放たれるぞぉ!』
アナウンスが終わると睡眠魔導士たちは慌ててこの部屋を立ち去った。
すると魔法が切れたのか、リヴァイアサンはいきなり暴れ狂う。
「おわぁ! まだゲート空いてないぞ!?」
「気が早いわね! 私のダンスがそんなに早く見たいのかしら?」
「あわわわ……」
数秒後、考える間もなくゲートが開いた。
七つすべてのゲートが一斉に開かれると、俺たち含め闘技場のあらゆるところからリヴァイアサンが解き放たれているのが見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます