第92話 自覚しろ
ううう……結婚とか、恋愛とか、そういうのは考えたくなかったです。
私は若白髪のおじさん―賈詡さんーに正論で殴られながら思いを馳せました。
そのために
えっと、先送り。先送りしましょう。
冷汗を垂らし、横を向きながら言い訳をつぶやきます。
「そういうのはまだ早いと思いますよー、だって私、まだ
「そうですな、では2年後、3年後なら構いませんな?そのためには今から誘惑して皇子の心をがっちりつかんでおく必要がありますな?」
「あぐっ」
逃げ道を一瞬で塞がれたっ?!
こ、この若白髪の中身、一切容赦してくれない?!
もう答えは決まってます。そう、あのどこか頼りない弁皇子の妃に収まり、ひたすらお尻を叩いて改革を続けないといけないのです。それでほかに側室がたくさんいて、周りには宦官がいて……。
ああ、私は一族みんなでワイワイ楽しく、白ちゃんの成長を愛でて暮らしたかったのに……。
「うう、なんでみんなして私の幸せを潰そうとしてくるんです?私が女だからですか、男だからってずるい……」
思わず口から出た言葉を聞いて、賈詡さんが信じられないようなものを見た顔をしました。
「……あの、
「へ?」
んーー???
いや、そうか。これは私の感性がおかしいのかな。普通の人は後宮に入って絹服を着て暖かい宮殿で美味しいご飯を食べられれば幸せなのか。
いや、だって、後宮の生活みてたけど、別にそんなに羨ましくなかったし。むしろ必要なものは教団で作れるし、服や装飾品は教団の職人のほうがいいもの作れるし、食事は私が作ったほうが美味しいし、朝廷の将軍っていう高位高官の娘だから屋敷も立派だし……。
「あと、男だからずるいというのは?」
「その……
「ええ、それを防ぐために改革が必要なのですな」
「男だったら自分で軍隊も率いて、自分で出世して、立派な父上の後継ぎになれるわけじゃないですか……なのに女だから私は中途半端に男装したり女装したりで、結局は何もできないんですよ?」
「何もできない?!」
賈詡さんがいきなり怒り始めました。
「
「……ごめんなさい」
ぜぇ、はぁ……
またもや賈詡さんがしゃべりにしゃべりつくして、息切れして止まってくれたかと思ったら、言葉を続けます。
「
……だって、だってだって……じゃないか。
うん。
私が知っているのは、
すでに、公明くんや賈詡さん、教団の皆さん。そして董卓パパと董一族の皆。
大勢の人の運命を私が左右してしまっているんでした。
自分の力を正確に把握せずに、戦いなんてできるわけありません。
自分の評価から逃げちゃだめだ、受け止めないと。
「そうですね、私はまだ英雄とは言えませんが、群雄ぐらいはやれてるんでしょうか」
「天下一品の英雄だと申し上げておるんですが……まぁまだマシですのでそれで」
なんで呆れてんですか。ちょっと。
「
「目的とは?」
「先ほど仰ったではないですか、
「えっと、私は一族みんなで楽しく暮らせればそれで……今以上の富貴とか望みませんし、あ、あと結婚を強制されたくない、かな?」
「……娘が、親のいうとおり結婚しないで、どうやって結婚するのですか。
「いや、その父上にも祝福はしてほしいんですがえっと……愛されて結婚したいです……お見合いとか結納で買われるんじゃなくて……あとその、能力とか仕事とか親のコネとかじゃなくて、私を見てほしい、かな……なんかこう、私が頼られて私が尽くすより、私が頼れて、私に尽くしてくれる感じで……」
賈詡さん、すごい変な顔してますよ。
何言わせるんですか恥ずかしい。こんなの策謀の士に相談することじゃないですよね?!
「普通の娘は、衣食住が揃っていれば幸せな結婚と考えるものですが……これは大変強欲なお方ですな」
「強欲で悪かったですね、目標は全部いいですよね?これで!」
「とりあえず分かりました。それでは皇后は厳しいでしょうな。弁皇子を確保する方法は別に考えることとしましょう」
というと賈詡さんはちょっと迷った風な表情で、退出しかけて、足を止めました。
「……その、余計なお世話かと思いますが……。いま、一番、
「へ?」
一瞬、思考が止まる。
……ちょっとまって?
正気に戻って詳しく聞こうと思った時にはすでに賈詡さんはその場にいませんでした。
……えー。
私のために戦ってくれて。
うん。
私に贈物をくれたり。
あー……
私がしてほしいと思ってたことを先回りしてしてくれて。
好き?
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