第15話 処分

 4人の生徒は取り敢えず反省室という独居房へ入れられ、悠理は服部と沖川に生徒指導室で事情を説明した。

「なるほどな。ゼルカが落ちて来て箱が破損して、そこから出たゼルカを芋づる式に操ったというわけか」

 服部が言うのに、悠理が目を輝かせる。

「ゼルカというのは、砂鉄に磁力が通るように、作用が連鎖するんですね?」

「まあ、滅力を通しやすい性質だからな。とは言っても、あんな量を、しかも加工前の状態でというのは、聞いた事がないがな」

「来週、1年生は武器の貸与があるだろう。その時にわかるだろうが、あのゼルカを形にして、それを武器として使用できる強度に加工するんだ。加工前の状態で、人を吹っ飛ばせるような強度は、普通はない」

 服部に沖川が言い添える。

「どういうわけだ」

 服部が呟くように言い、悠理は思った。

(それは、たぶん、死に際に体の内も外もゼルカにまみれたせいだろうな)

「何かその原因がわかれば、ほかの人間も滅力を高める事が可能かも知れませんよ」

 沖川が真剣に言い、悠理は慌てた。

「と、ところで、あの4人の処分は」

 悠理は話を変えた。ゼルカにまみれて死んだせいだろうとは、言えない。

「未遂とは言え、あいつらはふざけ合いの域を超えた。これは犯罪だ」

「しかし先生。徴兵逃れのように、こういう事をしでかして前線行きを免れようとすることが横行しては困ります」

 沖川が真面目に言うと、服部は面倒臭そうにしながらも頷いた。

「ああ、妙な前例を作るわけにはいかん。

 未成年だという事、未遂だという事から、既に悪魔が出て激戦区になっている所への転校と、保護者への報告、一定期間の給与カットと外出と外泊の禁止。そんな所に落ち着くんじゃないか。まあ、校長とか政府とか防衛省とか文科省とか色々協議するだろうけど」

 悠理は眉をわずかにひそめた。

「不満か?」

「いえ。幸いにも未遂だったんだし、穏便にしても、と」

 服部は苦笑し、沖川は悠理に向き直った。

「かわいそうか?どの辺が?」

「ええっと、激戦区に転校とか」

「今現在も、現にそこの生徒は悪魔相手に命をかけている。そいつらは?

 そもそも、滅力が発現した時から、俺達はそのためにここに来て、給料をもらっている。それにこれが悪い事だとあいつらも十分に理解していた。子供とか関係ない」

 悠理は俯いた。

「……そうでした」

 悠理は唇を引き結んだ。

(なんて世界だ)

「ま、そういう事だ。

 あとは大人の仕事だ。お前は帰って、メシ食って今日は寝ろ。

 沖川、手間をかけさせたな」

「いいえ。

 それと花園は」

「今はどうしようもねえな。しばらく注意だな」

 それで悠理と沖川は服部に追い出され、寮へ向かって歩き出した。


 服部はタバコをくわえ、火を点けた。

(敷島悠理、か。滅力は多いのかも知れんな。使えるか。沖川も使えそうだが、どっちも、どうやって使うか)

 面倒臭そうな顔は引き締められ、目は昏い輝きを帯びていた。



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