第41話 ゆったりまったり

 オスカル君から教会軍の始動を聞いて、私たちが何をしてたかというと…… 「まったり」してました。


 だってさあ……

 さすがは最強魔獣有力候補のフェンリル、その桁外れの嗅覚と聴覚によると、軍の規模はおよそ2万人。

 ヒト属領の南端の港から船団を連ねて、ほとんど真っ直ぐに南に向かっているらしい。

 そして、このまま行けば

 これはどういうことだろう?


(おそらくは、、我々の行先を知ったのだろうな)


 やっぱりそうだよねえ。

 昨夜の創造の魔力を感知したのなら、わざわざ海じゃあなくて山、それもこの場所に向かって直接に軍を送り込んでくる筈だものね。

 それに、たまたま行先が一緒で、「おやぁ、奇遇ですねえ」だったなんて筈はないし。


(しかし、我々が出発したのは昨日の午後だぞ。なのにもう軍を始動させるとは、今回に限って妙に情報の入手と動きが早いとは思わぬか?)


 まあ、こっちだって別に一生懸命に隠してる訳じゃないからね。

 それに、情報なんて漏洩するためにあるようなものだし、どうせいつかは皆に知れ渡るものでしょ。

 向こうが邪魔立てするなら戦うだけのことですよ。


(…………)


 ということで、ここでクイズです。


(おっ! 久し振りではないか)


 はい、およそ10万文字ぶり(?)でしょうか。ファフニール君の弟子入り志願の時以来かなあ。


(いやいや。タコスを作った時にもあったぞ)


 う。オッサンのくせに意外と記憶力がいいじゃん。

 それはそうと、とにかく第1もーん


(ほう。第1問ということは、今回は2問目や3問目もあるのだな)


 ないよ。


(はあ?)


 まあまあ、こういうのは勢いが大事ですから。

 あまり細かい所にツッコまないように。

 とにかく、問題です。


 Q:教会軍の目的は何でしょう?

 A:① 私たちを討つ。② 旧人類の集落を討伐する。③ は、そうだなあ、① と ② の両方なんてどうよ?


 さあ、レギュラー解答者の心の声さん、お答えください。


(まず、② はないな)


 そうでしょうねえ。

 このタイミングで軍を出動させて、目的が旧人類の集落を討伐することだけとか、それはありえないでしょうねえ。

 では残るは ① と ③ です。

 ズバリ正解はどちらでしょう?


(難しいな)


 おろろ、ギブアップでしょうか。

 これはめずらしい。


(ギブアップなどするものか…… よし、① だ!)


 おお、なぜそう思われるのでしょう。根拠は?


(ターゲットを分散させれば目的の遂行が困難になる。これは戦術の常識ではないか。いや、待てよ。まずはアスラを討って、その後に余裕があればと考えることは有り得るか。うーむ)


 ということは ③ でしょうか?


(いや、違う! あくまで主たるターゲットはお前だから、敢えて言うなら ④ だ)


 あ、ズルい!

 選択肢にないものを解答とか、反則だ。


(ズルいも何もあるものか。いわゆる「最も適切な選択肢」がそもそも存在しないのだから、悪問ではないか!)


 あれ、もしかして毎回マジで正解狙ってんの?

 大人げないなあ。

 もう、年甲斐もなく負けず嫌いなんだからぁ。


(そ、そんな事があるものか! 我はお前がクイズとか言うから、毎回、渋々と付き合ってやっているだけで…… では、いったい正解はどれなのだ?)


 わかんない。


!!!何だとぉ~っ


 だって私、教会関係者じゃないからね。

 あっちの人の考えてることなんてわかる訳ありませんって。


(全く、出題者が正解もわからないクイズとは。ぶつぶつ……)



 まあ、心の声さんの言う通り、であることは間違いないんだろう。

 旧人類の集落を狙うとしても、私たちを討つ「ついで」ということだ。

 だとすれば教会軍を動かすきっかけを作った私たちとしては、土地の人々を戦いに巻き込む訳にはいかない。

 私たち3人と1頭で撃退するしかない。

 だったら当然に魔法主体の戦いになるから、防衛設備の構築や武器の準備も不要だ。

 敵の軍が目的地に到着するには2日以上かかりそうだっていうから、それまでゆっくりと休息を取ったり、せっかくの旅を楽しもう。


 そして海岸で待ち受けて戦おうかなあ。

 そうすればオスカル君の戦力・機動力が存分に発揮できるし。

 それとも飛翔の能力で海上に出て、火炎魔法で戦うべきかなあ。

 ヒト族の船はどうせ木造だろうから、あれもこれも炎上させて壊滅を狙うとか。

 きゃはーっ、どっちにしても水着で戦うのもいいかもね。

 秋に入りかけたとはいえ、南国の青い海を背景に美少女が水着で大活躍するとか、絵になるなあ我ながら、うっとり

 あ、そうすると、読者さんのいろんな好みも考慮して、グラマラス美女のガイアさんも一緒に来た方が良かったかなあ……


(………………)


 あ、でもそういえば、例の白銀色のドラゴンさんに頼んで暴風雨を起こして、船団を一気に沈没させるって手もあるぞ。


 とか考えてたら……


「それはダメ!」


 と、どこからか声がして、例のドラゴンさんアプスーです。覚えてるかな~?御本人が登場。

 いきなり目の前の空中に白銀色の巨体が現れ


「あーっ、びっくりした!」

「うん、僕は召喚獣だからね。姿は見えなくても、いつもアスラちゃんの傍に居るよ。それで何? 暴風雨でヒト族の船団を沈めるんだって」

「あ、うん、そうなんだけど、なんでダメなの?」

「それはこの子が居るから」


 と言うドラゴンさんの視線の先には…… イシュタル。

 また面倒の元凶はコイツかい!


「その子が属する神族が遥か遥か大昔に『アプスー』と『ティアマト』っていう原初の、しかも自分たちの先祖にあたる龍体の神様を滅ぼしたんだよね。つまりその子も龍族の敵」

「はぁ。でもそれは今のアプスーさんやティアお婆さんとは関係ないんでしょ」

「それはそう。でも、だからって龍族の敵と簡単に手を組んで一緒に戦うことはできないよ。ぼくらは繊細だからそうなのか?

「う~ん……」

「だから、いくらアスラちゃんの頼みでも、今回はパス。この埋め合わせはいつかするからね~」


 と言ってドラゴンさんは消えた。

 短い出番でした。


 ま、いいか。

 何とかなるでしょう。

 今はとにかく山間のリゾート気分で、ひたすらリラックス。


 高地なだけに少し広葉樹の色づき始めた森を散歩したり、新築の別荘(!)のテラスでお茶を飲んだり。


 そして夕食は

 空気のいい山では、やっぱりこれが夜のお楽しみだよね —————— !!!

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