ログイン30 王城にて、そして大通りにて
『ガーディアンの王国内:王城において』
「ですから! ほんの僅かな時間で問題ないのです、ぜひ一度王との対談をお許しください!!」
「ダメだ! 王は数日前から、極めて重要な課題に直面していらっしゃる。その対策で頭がいっぱいでおられるのだ。お主の在らぬ戯言を頭に入れて、それを邪魔されては余計に困るのだ!」
王の側近である役職についている男に厳しく言い渡されると、そのまま少しだけ開いていた重たい扉がゆっくりと閉ざされる。徐々に扉の先が見えなくなっていき、視界を染める扉の面積が大きくなっていく。彼は一度大きく息を吸い込むと、最後の希望をかけて再び扉に向かって声をかけようと試みる。
「王よ!! ガルシオ王よ!!! ぜひ、一度ご対面を!!!」
完全に閉ざされた扉は、自分の声を反射させるだけで開かれる気配は一切見せない。そのまま、どれほど時が経っただろうか。分からない。少なくとも数時間は経過しただろう。王城にたどり着いた時に背中を赤く染めていた夕日は、今では見る影もなく、青白い光を放つ月が顔を出している。
「はぁ⋯⋯ 。やはり、今日はご対面は叶わないか——。重要なことを伝えなければいけなかったのに⋯⋯ 。あの権力の魔力に取り憑かれた王の御機嫌取りめ! あやつは現在しか見ようとしていない。なぜ、王は以前の神の洗礼の際にあやつをご同行されたんだ!?」
いつの間にか声が大きくなってしまっていた。いくら気分が昂ったからといって、玉座がある部屋とこの場所は、重たい扉一枚でしか隔たりはない。もし、この声が王の耳に入ってしまったら、私の首がどこに飛ばされるか分かったもんじゃない。
彼は一度辺りを見渡し、誰も近くにはいないことを確認する。そして、その事実に一人でに胸を撫で下ろすと、踵を返し赤い絨毯が引き締められた廊下を歩き去っていった。
『ガーディアン王国:大通りのどこか』
「俺は信じていないってことだけは伝えておきたいんだ、ザキナの旦那よ。俺はリーダーが信じていればそれに従うだけだが、だからと言って個人的な見解を捨てるつもりはねぇ。俺たちが何年もかけて下準備を進めてきたところを、会った事もねぇ青二歳に肝心なところを任せるってんだ。気持ち悪いったらありゃしねーぞ」
「それは、私も同意なのです。野蛮なそいつと、同意見というのは少々頭が痛みますがね。その神の遣い人とやらがどれほどの腕前をしているのか、何か実証できる事例でもないのですか?」
「ある!」
ザキナは二人の苦言を断ち切るかのように、力強く言い切ってみせる。
「ほう。お主がそこまで断言するとは⋯⋯ どれ一つ聞かせてみせろ」
先ほどから黙り込んでいたリーダーが口を開く。同様に、口を開こうとしていた二人の男は、そのまま言葉を発することはなく口を閉ざした。居心地が悪そうに、何かの動作にかこつけて口を戻す仕草に、ザキナは思わず口元を緩ませそうになるが、それを表面上に出さぬよう神経を尖らす。
「誘いの森。お主らも知っておるだろう?」
「当たり前だ! 馬鹿にしてんのか!!」
「神の洗礼により、何度も洪水を浴びているにも関わらず神聖さを失うことのない銅像があると呼ばれる場所ですよね。触れると神の力が宿るという伝説が残る場所ですが、憎きガルシオ王が私有地化し、屈強な守護隊が軍を敷いていると聞きますが?」
「あぁ。その場所に、あの神の遣い人様は単身で乗り込み⋯⋯ 守護隊を打ち破り、あの銅像に触れてみせたのだ!!」
「「「「「なんだって!!?」」」」」
五人全員が、同じ言葉で声をハモらせた。皆が似通った表情を顔に浮かべながら。
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