ごぶりんの本能

あぁ、今日はいい日だ。そう思った。

光の届かない暗くじめついたひどく居心地のいい洞穴もそう。ギャーギャーとやかましい仲間の声も、一人の寂しさに比べるとなんてことはない。毎日が平和ってわけでもないが。今だって俺の周りには真新しい仲間だったものの骸が転がってるさ。しかし、いやだからこそこうして侵入者を組み伏せることができたんだ。食料が増えたと思えば掃除の手間も苦にならないさ。それになりより死んだのは別のやつで楽しむのは俺だ。股ぐらでわめくソレの顔に一発くれてやって、それから服を乱暴にはいでやった。乳房があらわになる。入ってきた時からわかっていた。男が3人に女が1人。何がどういう理屈かはわからんが色でも付いてるか頭の上に男、女って標識でもついてるかのようにハッキリわかるんだ。食料とか敵とか、苗床とかでもいいか。とにかく野郎をとっちめて後は一目散。屍を踏み越えて早いものがち。他のやつも一緒さ。たまたま、偶然いいところに居合わせた俺が一番に辿り着けた。いい日だろう?

いい日だったんだよ。それなのになんだよこれは。

せっかく手に入れたお楽しみ。邪魔な布きれを剥いだらこれなんだもの。やかましく抵抗するのを抑え、殺さないように慎重に(〆たほうが楽だけど俺は生きてる方が好きなんだ)剥いでいくとコレだもん。股間にぶらさがるソレ。男の象徴。

なんでだよ。乳房だってしっかり膨らんでる。甘ったるい匂いだってそうさ。今も甲高い声でキーキー喚いて楽しませてくれている。標識はどうあっても女だって俺に訴えてくる。うしなった同士を増やせと芯を熱くさせてくる。それなのに別の方向からコイツは男だと強く主張して冷水を浴びせてくるんだ。

やんなっちゃうよもう。いい日だと思ったのにさー。

逡巡している間によこあいをどつかれて転がされた。やらねーんなら変われってことだろう。乱暴極まりない。とんでもない仲間だと思ったが俺と同じように固まっているそいつを見ていくらか気分がはれた。しばらくもしないうちに同じようにそいつも転がされてきた。今度はおっ始めたようだ。たまげた。いや、やれるんなら惜しいことをしたか。転がってきたソイツもおんなじことを考えてたんだろう。何が何だかわかんねぇって顔したやつを見てる顔だ。俺もおんなじ顔してんだろうな。

いい日だと思ったのにな。

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