第160話

ピクっ…


クイーンはエイトの悲鳴のようなものが聞こえた気がしてキョロキョロと周りを気にしだす。


「クイーンちゃん…どうしたの?」


落ち着きのないクイーンにウールが話しかけた。


「今…エイトの声が聞こえた気がした」


「エイトの?私はわからなかった…戻ってきたのかな?」


ウールはエイトが向かった先を見つめるが先は真っ暗で何も見えない。


すると…カツカツ…と遠くから足音が聞こえる。


「エイト?」


ロンが声をかけようとすると


「違う、エイトの足音じゃない」


クイーンはエイトの言葉を思い出す。


「エイトの嘘つき…帰ってきたら…」


クイーンは悔しそうに歯を食いしばると…


「居たぞ!捕まえたガキがやっぱり逃げてやがった!」


暗闇から鎧を着た兵士が現れるとクイーン達を見つけた。


「ああ…ど、どうしよう」


「うっうっ…」


「な、泣くな!くっ…」


ウール達は明らかに味方でない兵士達に愕然としていると


「捕まって…何があっても守ってあげるから私を信じて」


クイーンは三人を抱きしめるとその姿をドラゴンへと変えた。


「う、うそ…クイーンちゃん?」


「あ、あああ…」


「おまえ…その姿…」


ウール達は姿を変えたクイーンに言葉を失い腰が抜けてしまった。


ちょうどいい


クイーンは力の抜けた三人を掴むと羽を広げた。


クイーンの羽が壁や天井に当たり崩れると兵士達の頭に落ちる。


「な、なんだ!?ドラゴン?なぜ急に!」


「捕まえたガキだ!その一人が化けやがった!」


「他の奴らもドラゴンか?絶対捕まえろ!高く売れるぞ!」


兵士達はクイーン達に目の色を変えた。


気持ち悪い奴ら…好奇の視線が人が変わるだけでこうも違うとは…


クイーンは人間共に呆れる。


やっぱり…エイトだけだ、早くエイトに会いたい。


エイトを一番に助けたいのにエイトからの願いはこの子達を守る事…ならこの子達を安全なところに連れていけばあとは私がどう動こうと構わないはず!


クイーンはそう考えると


「捕まっててよ…って無理か。なるべく落ちないでね」


三人に話しかけるが返事はない、見るとみんな気を失っていた。


「まぁいっか…」


クイーンはエイトが言った方向をなるべく崩さないように反対側へと飛び出した。


体で壁を崩しなら進むと先程の牢屋の並ぶ部屋に着く。


クンクン…


うっすらと残るエイトの匂いを嗅ぎ分ける。


あっちから少しエイトの残り香がする…


一つの扉に前に立つと扉を口でこじ開けて中を覗き込む。


そこは洞窟のような道が続いていた。


ここかな?


クイーンは手を伸ばして三人を洞窟の奥に置くと扉の前を岩で塞ぐ。


コレで兵士達があの子達に手は出せないはずだ。


クイーンはドラゴンの姿から人型に戻ると…


「うっ…うっ…」


いきなり泣き真似をし出した。


すると兵士達が瓦礫を退かしながらクイーンの泣き声を頼りに追いついた。


「何処に行った!」


「あっ!あそこにひとりいるぞ!」


兵士達がクイーンに気がつくと…


「おい!ガキ!」


髪の毛を掴んだ顔を上げさせる。


「きゃぁ!」


クイーンが泣きさげふと


「さっきのドラゴンは何処に行きやがった!」


「わ、分からない…私は落とされた」


クイーンは泣くふりをして一番怯えてたチャバの真似をした。


「くそ…まぁいい、こいつはさっきの奴と同じ様に捕まえておけ」


ドンッとクイーンを仲間の方に放り投げた。


さっきのやつ…きっとエイトの事だ。


こいつらの態度は気に食わなかったがエイトのところに行けると思うとクイーンは泣くのを忘れて思わず口をニンマリと動かしてしまった。

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