第97話

「ふふ、勝負あったね」


エイトがニコッと笑ってそういうと…


「いや!俺のだってうまい!そう変わらんだろ!」


焦って大声をあげると


「何言ってんだ?どう見ても差は歴然だよね。それになんかそっちの味こっちのを食べると物足りないんだよな」


「な、なんだと…そんな事あるわけ…」


「あら?なんで違う店で味が同じになるわけ?おかしくなぁい?」


いつの間にかダレンが親父の背後に回っていた…


「確かに似てるなぁ…でもおばさんの方が美味いんだな」


うんうんと村の人達が頷く。


「そりゃそうだよね?おじさんおばさんの串焼きの真似してたんだもん」


エイトが大声で話すと


「な、何言ってやがる!そんなわけないだろ!むしろあのババアがこっちの味を真似したんだ!」


「えー?それはないよ、だってあっちの味の方が濃くも旨みも深みも強いもん。おばさんそのタレってずっと継ぎ足してるよね?」


「え?ええ…なんでわかったの?」


おばさんがタレの容器を見せると


「ずっとこのタレを昔っから使ってるよ…誰も知らないはずなのに…」


「味が違うもん!それに比べておじさんのタレは熟成が足らないよね~なんか若い感じがするよ?一回一回タレを作ってるでしょ?」


「なっ!」


親父は慌ててタレを隠すと


「あらぁ~コレがタレ?もうほとんどないじゃない」


ダレンさんが親父のタレを奪うと中身を確認する。


「それに自分より美味しくないタレを誰が真似するの?そんな人いないよね」


エイトは笑って親父を見つめると


「う、うるさい!散れ!散れ!見せもんじゃないぞ!」


親父は屋台をサッと片付けるとそそくさと逃げて行った…


「なんだありゃ…」


村の人が唖然としていると…


「まぁいいや、おばさん串焼き頼むわ」


それよりもおばさんの串焼きとみんなおばさんに詰め寄った。


大変そうなおばさんを手伝いながら肉を売り終わると…


「今日はおりがとね!あの親父が逃げる時スッキリしたよ!」


「僕は本当のこと言っただけだよ」


「でもこの肉は今日っきりだね、また明日から安い肉で頑張るよ」


「それだけど…」


エイトは笑うと


「ギルドにこの肉を卸して置いたから買えると思うよ!今日の売上からしても高い買い物じゃないと思うなぁ~」


「えっ…」


「ギルドの人にもおばさんのことよろしくって言っといたから!頼めばギルドの人が肉を調達してくれるはずだからこれからも美味しいの串焼き作ってね」


エイトはおばさんにはいっと袋を渡す。


「えっ!こ、今度はなんだい」


おばさんが慌てると


「今日のお肉のお金だよ。買った方のお肉を全部買うって言ったでしょ?」


「貰えないよ!こんなにしてもらっても何も返せないよ」


おばさんがエイトにお金を返すと


「僕がお肉貰った時も同じ気持ちだったよ」


エイトは首を振ると


「ありがとう!じゃあお店頑張ってね!」


手を振ってお店を後にした…

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