第68話

『なんだ…こいつ…』


エイトを金がないと決めつけてシッシッ!と手で払うと…ジャックは気に食わないと店のオヤジに牙を向いてグルグルと唸っている。


そんなジャックやエイトに構うことなく


「あっ!いらっしゃ~い!お姉さん一本どうだい?うちのは美味いよ~」


オヤジは後ろを歩いていたおばさんに狙いを付けて愛想良く声をかけている…


『ジャック…このお店じゃなくてもいいかな…』


エイトが苦笑いしながらジャックに聞くと


『当たり前だろ!こんな店の物など食いたくもない!』


ジャックが隣りの店に向かうと…


「僕大丈夫?」


隣でその様子を見ていたおばさんが心配そうに話しかけてきた…


「あのオヤジは感じ悪いのよ!いつも人を選んじゃって!本当に気に食わないわ!」


プンプンとオヤジのことを怒っていると


「ちょっとほかの店よりいい肉を使ってるからって!」


ポカンと聞いてるエイトに気がつくと


「あら、ごめんね。思わず愚痴を言っちゃったわ。僕は何を買いに来たの?」


「ぼ、僕…肉串…食べたくて…お金もあるよ」


ラルクからもらったお小遣いの銅貨を五枚見せると…


「あら、それならうちにも肉串あるわよ」


おばさんが焼きたての肉串を見せてくれると美味しそうなタレがポタッと落ちる。


『エイト!美味そうな匂いだ!ここでいいんじゃないか!』


ジャックがパタパタと尻尾を振っている!


「おばさん…それ買いたい!二本くれる?」


「あら…二本食べるの?」


おばさんの顔色が曇ると…


「この子…ジャックの分もなの!」


「ごめんなさい…一本銅貨三枚なの…あと一枚銅貨が足りないわ…持ってる?」


「えっ…じゃあ一本下さい」


エイトは構わずに一本だけ貰うと


「ありがとう!」


銅貨を三枚渡して肉串を受け取ると…


『はい!ジャック!』


エイトはジャックに肉串をあげた。


『お前の分は?』


『僕はいいよ』


『蛇の金を使えばいいだろ?』


ジャックが肉を受け取らないでいると


『あれは…使っていいのかわからないから…ラルクおじさんの許可をもらってからの方がいいと思うんだ…』


エイトは気にした様子もなく皿を出すと串から肉を取ってお皿に入れてジャックに差し出す。


「ま、待って!僕全部その犬にあげちゃうの?」


それを見ていたおばさんはてっきりエイトが食べるんだと思っていて驚いている。


「ジャックが欲しくてきたから、僕はまた買いに来れたら来るね!おばさんありがとう!」


エイトが笑って帰ろうとしていると…


「うーん…もうしょうがない!今日だけのおまけだよ!もう一本銅貨二本でいいよ!」


おばさんがもう一本の肉串をエイトに差し出すと


「えっいいの?」


「そんな自分の分をあげちゃう子に我慢なんてさせられないよ」


しょうがないと笑いながらお金を受け取ると…


「あはは!」


隣りのオヤジがその様子を見ていて笑いだした…

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