第37話

僕は薬屋のおばあちゃんから預かった紙袋を持って外で待っているジャックの元に向かった。


ジャックは僕に気がつく草むらから顔を出した。


どうやら目立たないように隠れていたようだった。


「ジャックおまたせ!薬貰えたよ!」


僕は手に入れた薬を見せると


「あとね…この先にチーズが売ってるお店があるんだって…ちょっとよってみない?」


チーズと聞いてジャックの耳と尻尾がピーンと立った。


その様子にジャックも賛成だと感じて僕とジャックはさらに町の奥へと歩いて行く。


僕は薬屋の買い物が上手くいった事で少し町が怖く無くなっていた…


周りを見る余裕が出来るとチラチラと町の様子を見ながら歩いて行く。


するとすれ違う人が僕らをじっと見ている事に気がついた。


「ねぇ…ジャック、なんかすれ違う人みんな見てない?」


ジャックに聞くがジャックが答えてくれることはない…気のせいかなと僕は少し歩く足を早めた。


薬屋さんから少し行ったところにチーズを売っている店が見えてきた!


「あっ!ジャックあれじゃないかな!」


僕はお店目掛けて走り出した!



「こんにちは!」


お店に出ていたおじさんに声をかけると


「いらっしゃい!うちに買い物か坊主?」


おじさんが笑って声をかける。


「うん!チーズが欲しいんだけど…」


「チーズか、もちろんあるぞ!ほら!」


おじさんがチーズを出して見せてくれる。


そこにはいつも山爺がくれるチーズとは違う黄色いチーズがあった…


「あれ?いつもと違う…」


僕は顔を曇らせると


「これじゃないのか?チーズだぞ?」


「うんと…もっと白くて…お菓子作る時に使うんだ…」


「あー!もしかしてクリームチーズか!あれは少し高いんだが…お金は足りるかい?」


おじさんが心配そうに言うと


「あっ!これを薬屋さんのおばあちゃんから預かってきたんだけど…」


思い出して紙袋を取り出す。


「く、薬屋の婆さん!」


おじさんはバッ!と紙袋を奪うとコソコソと後ろを向いて中身を確認する。


「おじさん?」


声をかけると


「確かに受け取った…坊主!中身は見てないだろうな!」


おじさんが真剣な顔で問い詰める!


「見てないよ。それ何が入ってたの?」


おばあちゃんが教えてくれなかったからおじさんに聞いてみる。


「教えられないなぁ…もう少し大きくなったら教えてやろう…」


ぐふふ…とおじさんが気持ち悪く笑った。


「ぼ、僕はいいや…」


なんだか急に中身を知るのが怖くなり断ると


「それで…おじさん、チーズもらえる?」


話を変えておじさんに聞く。


「あ、ああ。薬屋のばあさんからもよろしくって書いてあるからな!ほらこれを持ってきな!でも…おじさんが薬屋さんから何か買ったって言うのはここだけの秘密だぞ!」


おじさんがしーっと口に指を当ててクリームチーズを包んで渡してくれる。


あっ…


エイトはおじさんの後ろに女の人が来たのに気がついた…おじさんに言おうか迷っていると


「何が秘密なんだい?」


おじさんの後ろに女の人が腕を組んでおじさんを睨んでいる…


「ヒッ!」


おじさんがビクッと肩を揺らすと


「ちょっと何があるのか聞きたいねぇ」


「か、かぁちゃん!な、なんでもないよ!」


おじさんが無い無いと顔を青くしながら首を振る。


「じゃあ秘密ってのはなんなんだい!」


おじさんの奥さんが腰に手を当てておじさんに怒鳴りつけた!

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