第30話

カズキは元気そうなエイトの様子に腕から下ろしてやると


「ふたりとも汚れたから先に風呂に入ってこい」


カズキはふたりを先に行かせた。


「うん!ジャック行こ!」


エイトはジャックに声をかけると文句も言わずにあとをついて行った…


ふたりが風呂に向かうのを確認すると


「何があったの?」


ナナミがカズキに聞く。


「オーク狩りをふたりでさせたんだが…ハイオークが出てきてしまったみたいでな。あのふたりには早かったようだ」


「ハイオーク!ここら辺ではあまり見なかったのに」


「ジャックといい、ハイオークといい…魔物達に何かあったのかもしれないなぁ…」


カズキが考え込んでいると


「それで?ハイオークはどうしたの?」


ナナミが聞くとカズキはニコッと笑い


「もちろん仕留めたさ、ほら」


ドンッとハイオークを取り出す。


「あら…珍しく状態が悪いね」


ナナミがハイオークを見るとカズキには珍しくいたぶったあとが見えた。


「エイトとジャックが下手したら死んでたからな…つい感情的になっちまった」


苦笑していると、ナナミが困ったようにわらいかえす。


「それもそうね。わたしなら骨も残さず焼き殺したかも」


ふふふと上品に笑うとハイオークを持ち上げてキッチンへと向かう。


「早速美味しく料理してあげましょ」


「そうしてくれ…あいつら腹が減ってるだろうからな」


カズキは武器を片付けてからエイト達のあとを追った。



エイト達は風呂に入ると…


「ジャック、お風呂に入る前に洗ってあげるからおいで」


エイトが湯船の前でジャックを手招きするとジャックが珍しく素直にそばにくる。


エイトはジャックの身体に石鹸をつけて泡立てるとゴシゴシと毛を洗い出した。


ジャックは大人しくエイトに洗われる…


「なんか今日ジャック大人しいね?大丈夫?まだ痛いところあるの?」


エイトがジャックの顔を覗き込むとジャックはぷいっと顔を逸らす。


いつものジャックの様子にエイトは笑って毛の泡を流し落とした。


「僕も洗っちゃうからジャック先に入ってていいよ」


エイトはジャックに湯船に浸かる様に言うと自分の体を洗い出す。


すると背中を洗う感触がして振り返った…そこにはタオルを噛んだジャックがエイトの背中を洗っていた…


「ジャック、洗ってくれるの?」


ジャックは気まずそうにしながらエイトの背中をゴシゴシと洗う。


するとさっさと入ろうと言わんばかりにお湯を被った。


エイトも自分の体の泡を洗い流すとジャックに続いて湯船に入る。


「気持ちいいね…」


エイトはそっとジャックに寄り添ってお風呂を堪能した。

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