落下中のりんご



りんごが木から落ちた

もちろんこれはごくありふれたこと

わたしたちはべつに驚きもしないし

それがあったことすら忘れてしまうのだろう


ところが突然時間が止まり

りんごはぴたりと動かなくなる

りんごは宙に不動のあぐらをかき

ふふんと鼻でせせら笑っている


木の枝と地面のちょうど真ん中で

空間から自分にあった大きさをえぐり取り

りんごはそこにきっちりと収まっている

まるでそこが自分の玉座であるかのように


こうなるとこの落下中のりんごも

皿の上に置いてあるのと大して変わらない

わたしたちは世界一鋭いナイフでもって

そいつをぐっさり刺してやろうと思うのだ


それからりんごは地面に落ちた

もちろんこれはごくありふれたこと

わたしたちはべつに驚きもしないし

時間が止まったことすら忘れてしまうのだろう


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