第296話
王都における建国祭は、陛下と王妃が連れ立って用意された舞台に上がり、祭りの始まりを宣言する事で始まる。舞台にはこの国の主だった上位貴族たちが集まるため、カノッサ公爵夫妻も今日は朝からしっかりと準備をして、時間に余裕を持って舞台のある場所へと向かって行った。
そんなカノッサ公爵夫妻を見送った俺たちは、警戒しつつも建国祭を楽しもうと、まずはダミアンさんの劇場へと足を延ばす事にした。建国祭の為に用意した新しい劇との事なので、イザベラたちももの凄く楽しみにしている。
「ダミアンさんたちが公演する劇って確か…………」
「姫を攫ったドラゴンを倒す、勇者とその仲間たちの話だと聞いているわ」
「ダミアンさんが賢者様からドラゴンの事を色々と聞いて、今回の劇の事を考え付いたみたい」
「ドラゴンは伝説上の存在で、歴史上においても見た者はごく少数だと言われています。そんなドラゴンを見た事があるなんて、やっぱり賢者様は凄い人です」
「それに小物類に関しても、賢者様やローザ様、それからカトリーヌさんの魔道具が提供されているみたいです。劇団員さんたちの高い技量と、三人の魔道具が合わさると考えると、もの凄い劇になる事は間違いありませんね」
俺も建国祭における劇について、ジャック爺から色々と聞いてはいた。ダミアンさんとの楽しい会話の中で、色々な魔物についての話題になった時に、劇でも栄える様な派手で強い魔物はいるかという話になったそうだ。その話題の中で色々な魔物を挙げては、二人で劇に合う合わないを話していた中で、別格の存在であると言ったのがドラゴンだった。
ダミアンさんは突然挙がったドラゴンという名と存在に、知的好奇心をもの凄く刺激されて、ジャック爺に根掘り葉掘り質問攻めにしたみたいだ。ジャック爺はそれに対して特に嫌がる事もなく、ドラゴンが何処にいるかなどは伏せたまま、どういった生物であるのかをダミアンさんに教えてあげた。そしてドラゴンの話によってダミアンさんに閃きが舞い降り、そのまま徹夜で劇のシナリオを書き上げ、劇団員さんたちに見せて驚かれたそうだ。その出来の良さから、建国祭でお披露目しようという事になった。
ダミアンさんは、シナリオの大本となった話を聞かせてくれたジャック爺に、今回の新たな劇に全面協力してほしいとお願いした。それをジャック爺が快く引き受け、色々と協力して劇を作り上げてきた。
「それにしても、ローザさんやカトリーヌも協力するとは、流石に予想外だったな。勿論、良い意味でだけど」
今回の劇に協力すると決まった時、ジャック爺はローザさんにも、
「三人が劇の為に作り上げた魔道具が、ダミアンたちの劇をより一層素敵なものにしてくれるわ」
「賢者様やローザ様、カトリーヌさんも自信満々だったからね。王都の人たちの話題になる事も、劇を見た人を満足させてくれる事も間違いないよ」
「私たちにも劇の内容は秘密でしたから、本当に見るのが楽しみですね」
「一体どんな劇になるんでしょう?今からワクワクが止まりません」
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