第189話
コーベット男爵領での長期休暇から、王都に戻ってきて既に二週間が経過しているが、色々な事が次々と起こっていった。その中で最も衝撃的であった事件としては、アルベルト殿下によるマルグリット嬢に対する婚約破棄の成立、それに伴うベルナール公爵家からの追放だ。どうやら俺たちが王都を離れた事をいい事に、根回しから何まで全てを済ませて、マルグリット嬢に責がある形で婚約破棄を成立させたのだ。
そして、そこまでスムーズに婚約破棄が進んだ背景には、ベルナール家の動きも関係している様だ。ベルナール家当主であるイヴァン・ベルナールが、殊勝な態度で娘であるマルグリット嬢のナタリー嬢に対する行いを勝手に認めた事で、本人不在でありながら婚約破棄となったのだ。当然だが、アルベルト殿下の王族としての権力や、この国のトップである陛下の息子への思いが、決定に大きく影響したのは言うまでもない。
だが、ここまで上手くいっていたアルベルト殿下たちにとっての大誤算が、俺たちが帰ってきてから起こった。それが何かと言えば、コーベット男爵家公認での俺とナタリー嬢の婚約だ。マルグリット嬢との婚約破棄が成立し、いざと
「マルグリット嬢は今の所大丈夫なんですか?」
「バタバタして報告が遅れたけど、マルグリット様はカノッサ公爵家で保護しているわ」
「カノッサ公爵家では、今後の事について考えているんですか?」
「はい、色々と考えています。その中で最も良い案は、このままカノッサ公爵家の養女として、そのままウォルターさんと婚約するというものです。正式に養女にするのに時間はかかりますが、既に派閥の貴族たちの方たちには、養女や婚約に関して説得済みです。それから魔法学院の方も、正式なカノッサ公爵家の養女になったら復学する予定です」
「そうですか。それなら安心ですね」
カノッサ公爵家の方で、正式に養女にすると考えてくれているなら安心だ。魔法学院にも復学させてくれるとの事だし、カノッサ公爵夫妻には感謝してもしきれない。そしてマルグリット嬢の問題が解決したのなら、次は俺が頑張る番だ。ナタリー嬢を守るためにも、アルベルト殿下と側近たちとの決闘に勝ち、隣に立つ男は俺だと示さなければならない。絶対に負ける事が出来ない戦いだ。
「それにしても、流石に本人不在で勝手に罪を認めるというのは、公爵であったとしても行き過ぎなのではないでしょうか?」
「その辺の事もカノッサ公爵家の方で調査中よ。何かの思惑があっての事だというのは間違いないけど、まだ確実なものはつかめていない状況なの」
「ローラ・ベルナールの方はどうなんです?」
「ローラの方も同じく調査中ね。イヴァン・ベルナールと行動を共にしている事からも、少なくとも今回の件に関しては共犯なのは確定しているわ。ただ、ベルナール公爵家や派閥全体で動いているのか、個人個人で動いているのかまではまだ不明です。ですが、どういった理由であろうとマルグリット様を傷つけた相手ですから、こちらとしても手加減するつもりはありません」
『当然』
もしマルグリット嬢を傷つけたのが下らない理由であったのなら、カノッサ公爵家と共に、全力でベルナール公爵家と派閥の連中を潰してやる。まあ下らない理由じゃなかったとしても、マルグリット嬢を、俺の大切な人を傷付けたんだ。確実に息の根止めて、完膚なきまでに叩き潰してやる。
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