第160話
「今後も収穫なしかもしれないけど、この件について色々と調べてみるわ」
「お願いします。俺の方でも色々と調べてみますので」
「ウォルター君、調べ物をする時は慎重にね。情報が一切ない組織が相手の時は、何処に誰が潜んでいるか分からないから。それに、どんな風に接近してきて、どんな手を使って仕掛けてくるのかも未知数よ。警戒だけは怠らないようにね」
「分かりました。忠告ありがとうございます」
「いいのよ。後輩に助言してあげるのも先輩としての務めだもの」
カトリーヌさんは、そう言ってニコリと微笑んでくれる。こういった所が、カトリーヌさんの懐の深さや器の広さであり、色々な人に好かれている要因なのだろう。俺はもう一度、頼りになる先輩に頭を下げる。
話題は再び変わり、魔法・騎士の両学院の長期休暇の話となった。日々勉学に励む学生たちへのご褒美の様なお休み期間であり、それと同時に、日々忙しく生徒たちに勉学を教える先生たちの
「ウォルター君は、長期休暇の間の予定は決まってるの?」
「いえ、今の所まだ何とも。ただ、今年はジャック爺が王城勤めじゃなくなったので、ジャック爺と二人でベイルトンに帰省してもいいかなとは考えてます。まあまだ本決まりじゃないですし、結局王都で過ごす事になるかもしれません。現状では何も決まってませんね」
「なる程ね……(まだ予定が決まっていないなら、イザベラたちと協力して、ウォルター君の予定を押さえてしまうのもありね。問題があるとすれば、どう動くのか分からない賢者様ね。イザベラたちとしっかり相談しないといけないわね)」
「カトリーヌさんは最近どうだったんですか?」
「どうって?」
「休暇とか、冒険についてですよ。こうしてお会いするのも久々ですし、何か面白い話でも聞かせてもらえればなと思いまして」
「そうねぇ……。そういえば、一つ面白いダンジョンに潜ったわ」
「面白いダンジョン、ですか?」
「そうなのよ。そのダンジョンはね、肉しかドロップしないダンジョンだったの」
「へぇ~、珍しいダンジョンですね」
そのダンジョンに出てくるのは、牛・
浅い階層の魔物は新人冒険者でも倒せるレベルだが、階層が深くなるごとに魔物の強さが上っていき、深い階層になると中位どころか高位冒険者でも手こずる様な強さになるとの事。
「でも、その強さに見合った上質なお肉をドロップしてくれるのよ。それを軽く焼いて食べてみたけど、今まで食べたどの肉よりも美味しかったわね。思わず声を上げて喜んじゃったもの。冒険者として色々と美味しいもの食べてきたけど、あれを超えるものはそうそうないわね」
「そこまでですか。でもそんな良いダンジョンなら、もっと有名になっててもおかしくないんじゃ?」
「人目につかない様な場所にダンジョンの入り口があったし、人の手も全く入ってなかったわ。恐らくだけど、あそこを知ってる人は殆どいなんじゃないかしら」
「なる程。それなら納得です。それにしても、肉しか出ないダンジョンか~」
「興味ある?それなら長期休暇を利用して、誰か誘って一緒に行ってみる?」
「貴重な情報をいいんですか?」
「私とウォルター君の仲だからね。このくらい別に何ともないわ」
「ありがとうございます。今日帰ったら、早速ジャック爺に相談してみます」
そう言いつつも、俺の気持ちは肉のダンジョンへと傾いていた。王都で食材を買い込み、和やかにバーベキューをしている姿を想像し、思わず出た
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