第27話
タイムセールやバーゲンセール、ゴールデンウィークや年末年始などで起きる女性たちの戦争は、テレビ越しであっても十分に恐怖だった事を思い出す。隣にいるのが、友人であろうとお婆ちゃんであろうと、自分の欲しいものを手に入れるために戦う姿。そしてお婆ちゃんたちもお婆ちゃんたちで、普段の姿からは考えられない様な気迫と雰囲気で、セール品という獲物を奪いにかかる。そこは正しく戦場であり、老いも若きも関係のない戦争なのだ。
普段から研いでいる爪をさらけ出し、本気になった女性たちというのは、男性にとっては非常に恐ろしいものだ。それは、日本であろうと異世界であろうと変わる事はない。つまりは何が言いたいかというと、不用意に女性を怒らせるべきではないという事だ。
この国にも、男性が優先・優遇されるような風習などが残っている。だが、女性たちの持つ力を侮ってはいけない。普段家を空けている当主や息子たちがいれば、その間当主に代わり家を守るのが、当主の妻たる夫人の仕事であるからだ。さらには、夫人たちを誘ってお茶会やパーティーを開催したり、趣味を通じた様々な集まりを開くなど、女性たちの戦場にも
だが、高位貴族たちは真逆の考えをしている。高位貴族たちは、女性の持つ大きな力をしっかりと理解しており、それが自分や子供たち、そして受け継いできた家にまで影響する事をよく分かっている。なので、爵位の高い貴族になればなるほど、女性と無暗に敵対する事を避ける。
「まあ、女性たちが固い結束で結ばれた時の強さは、イザベラ嬢たちの方がよくよく知っていると思います。ですので、女子生徒たちとの繋がりを強めていけば、その生徒たちのご家族である各貴族家の夫人たちが、上手くいけば味方になってくれる可能性もあります」
「子供同士の事に、親を巻き込むのですか?」
「相手は、要職に就いている貴族たちの子息に、王の息子です。最悪の場合になった時、公爵家と強い力をもつ男爵家の二つでは、国を相手にするには不利です」
「私の家とクララの家は含まないの?」
「恐らくこのままの状況でいけば、今回の騒動に直接的な関係のある、マルグリット嬢とナタリー嬢のご実家しか対象にはならないと思います。というよりも、そうなる様に仕向けられる可能性すらありますね」
「なる程ね。そうなってくると、ウォルターさんの案が一番現実的かもね。本当に追い詰められた時に、他の貴族家の夫人たちが味方として助けてくれるなら、それは非常に大きな力になるわね」
「王家としても、各貴族家の夫人たちの力を知っているから、安易に手出しは出来なくなるわ」
「大筋はウォルターさんの案でいいとして、後の細かい所は、私たちで詰めていきましょう。ウォルターさん、色々貴重な意見をありがとう」
「いえいえ、お力になれたなら良かったです」
やる事が定まったイザベラ嬢たち四人はやる気を漲らせて、アルベルト殿下とその側近たち、そしてローラ嬢に対抗するために、どの様に女子生徒たちとの繋がりを強固にしていくのかを話し合い始めた。
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