第27話
深層に足を踏み入れ、顔を強張らせていた冒険者達がため息のような安堵の息を吐く。
恐れられている魔の森の深層に足を踏み入れた。噂では足を踏み入れた瞬間、命を落とした者もいたという。そんな場所に入り、何事も起きない為緊張感が緩んだのだ。
「……何も起きねぇじゃねぇか」
「何だよ脅かしやがって」
「所詮噂は噂、って事だろ」
「案外、魔物共も俺達にビビッてんじゃねぇか?」
そんな事を口にして冒険者達は笑う。その姿から、先程まで抱いていた警戒心は何処かへと消えてしまっていた。
今生きているのは運が良いだけ、という考えは、この冒険者達の頭に無かった。偶々森の魔物や魔獣に遭遇しなかっただけだ。足を踏み入れた瞬間、偶々そこに魔物が居た場合、逃げることすらできずに命を散らしていた事もあり得るのだ。
そういう事にこの冒険者達は気付いていない。故に、必要なはずの警戒心も何処かへ行ってしまっていた。
「さて、この辺りに居てくれりゃいいんだがな」
「聖女様だろ? 本当にいるのか?」
冒険者達がここに足を踏み入れた理由ーー聖女の捜索を口にする。
「噂だけどよ。見かけた奴がいるって話だぞ」
「聖女様ってあれだろ? すげぇいい体してるって」
「助けりゃイイ仲になれるってか」
下心しかない下衆な笑い声を、森に響かせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます