第37話・後継者問題
その後、わたしはベルサザを婿に迎え、皆に祝福されて夫婦となった。元許婚だったティボルトは、ジュリエットと異父兄妹と知り、その相手と惹かれあい結婚しようとした自分を恥じて自ら修道院入りしていた。
ジュリエットは、ティボルトとのショックが抜けきらないまま気晴らしに夜会へと出かけ、手当たり次第異性と関係を持ち、キャピュレット家の尻軽娘として醜聞を集めていた。しまいには、わたしの夫になっていたベルサザと一緒になりたいと言い出し、付きまとい始めたので、大公殿下の怒りを買い、問答無用で戒律の厳しい修道院に入れることになった。跡継ぎの方は養子を迎えることで決着した。
モンタギュー家のロミオは、恋人のベンを連れて遊びに来る。
「やあ、義姉さん、来ちゃった」
「いらっしゃい、ロミオ」
応接間に通すなり言われた。
「唐揚げ食べたい」
「はいはい。そうだと思いましたよ」
彼の目的は唐揚げ狙いだ。わたしが揚げていると、その匂いを嗅ぎつけるのか、ちょくちょくやって来る。
「いやあ、上手い。最高!」
「ベンさんもどうぞ」
ロミオに褒められて悪い気がしない。その恋人のベンにも進めていると、何気なくロミオが例の件を振ってきた。
「……義姉さん。お願いがあるんだ」
「あの件に関してわたしから言えることは何も無いわ。ベルに任せているから。ベルにはどう言われたの?」
「……」
ベルには断られたようだ。当然だ。ため息が漏れる。わたし達が結婚してしばらくしてから、ある問題が浮上してきた。キャピュレット家と、モンタギュー家の後継者問題。それに巻き込まれそうになっているとは思わなかった。
モンタギュー家のロミオは同性愛者。一生、独身を貫くと言い切り、後継は養子をもらうと言っていた。その養子は兄の子をもらうと言ってきかない。
キャピュレット家の方は、嫡女がやらかして修道院入りしたのを機に叔父が当主を退くと言いだし、その座を父に譲ると言い出した。そのうち宣言しかねない勢いだ。もしも、そうなるといずれキャピュレット家を継ぐことになるかもしれなくて、わたし達の間に生まれた子がそれぞれの家を継ぐことになるかも知れなかった。
今のところ、ベルが全て断っているけれど、この先はどうなるか分からない。せっかく両家の諍いが無くなったと思ったのに。
「あ。兄さん」
「また、来たのか? 懲りないな。おまえも」
「義姉さんの唐揚げが美味いからね」
青い騎士団の制服を着たベルサザが帰って来た。
「おまえのことだからどうせ、子供を養子にくれという話だろう?」
「そうだよ。だめ?」
「僕達はおまえ達の後継を作る為に結婚したわけじゃない。僕達は新婚ホヤホヤなんだから、しばらくそっとしておいて欲しいな」
せっかくの蜜月を楽しむ暇も無いと、ベルサザがふて腐れたように言い、わたしの隣の席についた。
「分かったよ。今日のところはこれで解散するよ」
「ずっと来なくて良いぞ。ロミオ。跡継ぎのことならモンタギューの叔父上や、叔母上のところだってあてはあるだろう?」
「それじゃあ、駄目なんだよ」
「はあ? なんで?」
「兄上の子じゃないと、僕は可愛がることが出来ない気がするから。父上達も兄上の子を楽しみにしているし」
「それと跡継ぎの件とは、別の問題だろう?」
「同じだよ。母上だって兄上の子を手元に置いて可愛がりたいと思うだろうし、父上だって母上の望みは叶えたいって思うよ」
ロミオの発言にベルサザは引いていたけど、モンタギュー家の人々は、ベルサザに構い過ぎていた。反発していた頃のベルサザから、距離を置いていたことへの後悔なのか、少しでも距離を詰めてこようとする。
「分かった。分かった。今日は話にならないな。帰れ、ロミオ」
ベルサザが追い立てると、また来るよとロミオは席から立ち上がった。
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