サンタさんってほんとにいるの 

朝香るか

1.サンタさんとあったこどもの話

 私ね、サンタさんに会ったんだよ。

 あ、信じてないね。

 子供の空想だって言いたいんでしょ。


 十三歳なのに信じているっていうと

 大人の人は頭をポンとたたいて私にいうの。



「そんなこと信じていないでお友達と遊んでおいで」

 分かっている。

 ほとんどの人は信じてくれないと。

 私だってあれは夢なんじゃないかと思うくらいだもの。

 5歳のときのことだから、そう言われたって仕方ない。

 けれど私が体験した本当のことなの。



 ☆☆☆

 それはクリスマスイブの夜だった。


 家ではクリスマスイブの日に皆でケーキを食べて、


 テレビをみていることが毎年の過ごし方なの。

 その年のクリスマスイブもケーキを食べて、

 テレビを見ていた。



 サンタさんに逢えるかどうかわからなかったけれど


 ウキウキしながらベットに入った。

「楽しみだな~。

 でもいい子にしていないと会えないよね。

 早く寝よっと」



 私は眼を閉じた。

 不意に声が聞こえて目を開けた。

「可愛い子だね」

 おじいさんくらいの声だった。赤と白の服を着ていて、白いひげも生えていた。

 そのおじいさんは私の頭をなでで、こう言ったわ。

「君は負けず嫌いだね」

 ゆっくりとつむがれた言葉に私はうなずいた。

「そうだよ。男の子に馬鹿にされるのが嫌なんだよ。

 だからよーちえんでもよく喧嘩するんだよ。

 でね、きょうも先生に怒られちゃった」



「先生はなんていって怒ったんだい?」


「んと、いっぱいいろんなこと。

 今日は男の子を殴らないようにって。

 その前はおしとやかにしなさいだったし」


「そうかい。では勉強しなさい」


「べんきょー?」

 言っていることがよくわからなかったから聞き返してみた。



「そう。それはね、君に力をくれる。

 きっと男の子でも負かせるくらい強くなるよ」


「でもお母さんは家の中にいるくらいなら

 外に行って来いっていってるよ」


「そう。体を動かすことも大切だぞ。

 でもなぁそんなことよりもよく考えたほうがいいんだ。

 なぜかは分かるね?」



「考えないと男の子に負けちゃう?」

 私はサンタさんを見上げる。


「正解だ。お嬢ちゃんにこれをあげよう」

 赤い服を着たおじいさんは、

 私が片手で持てるくらいのガラス瓶を手渡した。

「なぁに? これ?」

 キラキラと光って綺麗だけれど重くて、

 何に使うのか分からない。右に傾けるとコロコロと音がする。

 左に傾けてみても同じように音がした。

 傾けて遊んでいるとサンタさんに諭された。

「コレコレ。あまり傾けたり振ったりしては割れてしまうかもしれない。

 この瓶をもらったことはだれにも言ってはいけないよ。

 君は自分の部屋はあるのかな?」

「あるよ。広いでしょ?」


 サンタさんは周りをぐるっと見回したの。

 学習机、ベッド、ラグと子供用の洋服ダンス。あとはおもちゃ箱といった感じだ。

「そうだったね。確かに広くていい部屋だ。

 しかし誰にも見つからんようにできるかな」

「うーん。お母さんも入ってくるし……。でも大丈夫。なんとかするよ」

「そうかい」

 サンタさんはちょっと考えたように目を閉じたの。

 でも眉毛もお髭も白いから目を閉じてもわからない。

 だから私の推測なんだけどね。

 そして目を開けた後も少し唸ったけど、私に言ってくれたの。



「二十歳まで秘密にしていたらいいことがあるよ」

「いい事って?」

「それはまだ秘密だ。良いかい。絶対だよ」

「うん」



「指切りげんまん嘘ついたらハリセンボン飲ーます指切った」

 そうして約束を交わした。

「サンタさん、お休みなさい」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る