『KINGDOM』

第39話 ??【side : ???】

39話 魔王【side : ラヴィエナ】


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 私はラヴィエナ・エルムンダーク。

 魔王としてこの世に産まれた……。


 だが、私はそのことを決していいことだとは思っていなかった。

 古来よりこの世界では、魔王という存在は、生まれるたびに殺されて来た。

 そう、勇者という憎き存在に――!


 まるで殺されるために存在するかのようなバカげた存在。

 それがというものだった。

 殺されないように抵抗はするが、いつも殺されてしまう。

 先代も、先々代もだ…………。


 それでは生きる意味なんてないんじゃないか!?

 私が産まれた意味とはなんだろう。

 殺されるために産まれるなんて、まっぴらごめんだ。

 私は自分の生に意味を見出すために、様々なことを考えた。

 しかし、答えは見つからない。


 わかったことはこれだけだ。

 私は確実に殺される。

 いったいどんな意地悪な神が仕組んだことだろうか。

 私は運命を呪った。





「クソクソクソ! またダンジョンが潰されたのか……!」


 そして、私は今焦っていた。

 魔王城――いわゆるラストダンジョンというやつだ――に籠り、私は水晶とにらめっこする。

 水晶には魔王軍のダンジョンが地図に表示されていた。

 しかし、そのうちの中級ダンジョンがどんどんバツ印になっていく。


 これは、勇者がどんどんとダンジョンをクリアしているということだ。

 人間領側のダンジョンがすべてクリアされてしまえば、次は魔族領への扉が開き、勇者たちは我々の領地にやってくる。

 そうなれば、いよいよ我々は追い詰められてしまう。


「しかも……勇者がクリアしているのはどこも強めのダンジョンばかりじゃないか……!」


 そう、勇者たちは人間領側のダンジョンを、強い順にクリアしていっていた。

 どうやら今回の勇者はかなりのつわものらしい。

 これでは実質、すでに人間領側のダンジョンは壊滅したも同然じゃないか!


「くそ……もう少し時間を稼がなくては……!」


 私はものすごく焦っていた。

 勇者が魔族領に入ってくる前に、力を蓄えねば。

 魔王は魔王城に設置されたダンジョンコアの出力に応じて、その力を増す。


 魔王城のダンジョンコアの出力は、時間経過と各ダンジョンが算出するDPの合計で決まる。

 なので、私としてはなるべく勇者にはゆっくりしていてもらいたいのだ。

 さらに、ダンジョンコアの出力がマックスまで高まると、私は真の力に覚醒することができる。

 そうなれば、いよいよ私も人間領に攻め込み、世界を征服することが可能になる。


 つまりこれは、勇者がダンジョンコアをすべて潰すか、私が先にダンジョンコアを強化するかという戦いなのだ。

 ダンジョンコアの出力を高めるには、他のダンジョンにも頑張ってもらわなければならない。

 だから現状のように、勇者に次々とダンジョンを壊されまくっているのは、かなり私の不利なのだ。


 この勇者の動きは、予想以上に早すぎる……!

 このままでは、私はそうそうに詰んでしまう……!





 だがしかし、予想に反して、勇者はなかなか攻めてこなかった。

 あれからかなり時間は経ったはずだ。


「おかしいな……勇者はなにをしている……?」


 私は水晶で、ダンジョンのクリア状況をもう一度確認する。


「そろそろ人間領のダンジョンをクリアして、こっちの領地にせめてきてもおかしくないはずなのに……」


 地図で確認してみても、人間領側のダンジョンの大半はこわされていた。

 だがしかし、私はあることに気づいた。


「あ……!」


 最弱とされるエリア――Fランクダンジョン――のダンジョンがまだ一つ、未クリアで残っているではないか……!

 こんな序盤にクリアされそうなところを見落としていたとは……。

 いや、ムリもない。

 こんな雑魚ダンジョンは勇者パーティーがクリアしなくとも、そこらの冒険者が勝手にクリアしていておかしくないような場所だ。


「いったいどういうことなんだ……?」


 そのダンジョンの名前は「始まりのダンジョン」だった。

 明らかにおかしい。

 なぜこのダンジョンだけが、いまだにFランクで唯一攻略されていないんだ……!?


「うぅん……わからん……」


 私はひとり頭を悩ませる。

 これは勇者側による策略なのか……?

 それとも、なにかのメッセージ?


 魔王城のボス部屋で、一人困惑する私。

 そこに部下の一人が大慌てでやってきた。

 息を切らして現れたのは、諜報部隊のガーゴイルエリート。

 彼は水晶だけでは補いきれない情報を、実地へ赴いて知らせてくれる。


「ま、魔王様……! たたたたた、大変です……!」


「ど、どうした……! そんなに血相を変えて……!」


 まるで天地がひっくり返ったかのような勢いで、彼はやってきた。

 まさか、ついに勇者がダンジョンの攻略を終え、魔族領に侵入したというのだろうか……?


「驚かないで、落ち着いてきいてくださいよ……? これはいい知らせですからね」


「あ、ああ……それはいいが……。落ち着くのはお前だ」


 まったく、いったいなにがどうしてそんなに慌てているんだ。

 いい知らせと言っても、そんなもの、何があるんだ。

 私にとっていい知らせなど、ありはしない。

 どうせ最後には、私は勇者に敗れる運命なんだから。


 なにを聞いたって、今更無駄なのだ。

 なにをしても無駄。

 それが絶対不変の運命で、神によって決められているんだ。

 私が介入して、変更できる余地などないんだ。


 私はそのときまでは、そう、思い込んでいた――。


 だがしかし、ガーゴイルの次の言葉で、私のすべてが変わることになる。




「ゆ、勇者が……倒されました――!」






「……………………は?」

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