適正属性?いらないね

 五歳になりました。フィン・トレードです。


 ソフィアは四歳になります。


 師匠と出会って毎日、修行をした。


 一年経ったくらいからは、ソフィアもたまに参加するようになった。


「フィン〜教会に行くわよ〜」


「お前にどんな適正属性があるのか気になるな!」


 五歳になると教会にて適正属性を調べに行くらしい。今知ったけど。


 あれ?それより、適正属性を調べるって?

 何だろ、それ。


「適正属性って?」


「ぎくっ」


 後ろでなんか師匠の声が聞こえた。


 師匠と、あと従者みたいなフォレスさんは俺から家族に紹介した。

 だから、師匠たちは家族と仲が良い。


「あら〜フィン知らなかったのね〜」


「適正属性は使える魔法の属性のことだ!だから、炎属性しか適正属性を持たない人は炎属性の魔法しか使えない!他の属性は頑張らないと使えん!」


「頑張ったら、使えるの?」


「最悪死ぬがな!」


 え?死ぬの?え?何?じゃあ二年前の俺、危なかったんじゃ……。


「そう〜。だから普通、魔法使うのは五歳からなのよ〜」


 は?え?


 普通……五歳……から?


「……師匠?」


「いや、あのな〜。違うんじゃ。儂も歳だから忘れてたっいうか……本当にすまなかった」


 この老いぼれがあ!


「ゼノムさん、あなたまさか……」


 フォレスさんも何かに気づいたようで、師匠を睨みつける。


「ほ、ほら!フィン行ってくるのじゃ!」


 そう言って、師匠が俺の背中を押す。


 て、てめぇ覚えとけよ!


「いってらっしゃ~い」

「頑張れよ!」

「お兄ちゃん、いってらっしゃい!」


 そして、気づいただろうか。

 ソフィアの俺の呼び方が『にぃに』から『お兄ちゃん』になっていることに。


 まあ、どっちにしろ天使には変わりない。


「いってきます」



◆◇◆◇◆◇



「フィン・トレード様ですね。では、こちらに手を」


 シスター服を着たお姉さんが青い水晶を指差す。


 俺は言われた通り手をのせる。

 すると、水晶は光りだし。


「『ステータス』とお唱え下さい」


「『ステータス』」


_______________________


フィン・トレード


人族 


魔力:10325


適正属性:無属性〈創造〉LEVEL1


スキル:《剣術》LEVEL3


_______________________


「これからは、この水晶がなくても『ステータス』と唱えるだけで、ステータスを見ることができます」


「……あ!はい」


 俺はその場を立ち去った。


 俺、一応全属性使えるんだけど、これどういうこと?

 どう見ても無属性としか……。


「あ!お兄ちゃん!」


 俺に気づいたソフィアが走ってくる。


「どうだった〜?」


「あ〜、それが適正属性何もなくて」


「あら〜」


 母さんは残念そうに言う。


「大丈夫だ!魔法が使えなくても生きていける!」


 父さんが励ますように言う。


「バカな……適正属性なしじゃと……。じゃあ、どうしてフィンは魔法を……」


 師匠がぶつぶつと呟いている。

 よく聞き取れないが、内容はなんとなく分かる。


 何故、適正属性がないのに魔法が使えたのか。


「師匠。なんか無属性魔法っていうのがあったのですが」


 まあ、俺が魔法を使えた理由なんてこれしかないよな。

 名前からどんな効果を持っているのかも予想できる。


「たぶん俺、魔法創れます」



 無属性魔法〈創造〉:魔法を創ることができる。

           既存の魔法も可。

           消費魔力の量で創れる魔法

           威力が変化。そして比例す

           る。 


◆◇◆◇◆◇



 今から脳内会議を始める。


 最初に現状報告。


 あれから師匠とフォレスさんは宿に帰宅。

 トレード家も帰宅。

 俺は、考えごとがあると言って部屋にいる。

 創造については家族に報告済み。


 そして、俺の魔法について。

 効果は魔法を創れる。


 うん、チート。

 しかも、既存の魔法も使えるから適正属性、実質全部。


 これは、普通じゃないな。


 師匠によれば

「こんな無属性魔法は見たことない」

 とのこと。


 まずい。


 この魔法、魔力尽きない限り無敵じゃない?


 普通じゃない。


 つまり、隠すしかないな。


 この魔法は、誰にも言わないでおこう。


 ゴホン。

 では今から実験を行いたいと思う。


 これが成功すれば……。


 俺はあの恥ずかしい魔法詠唱を唱えなく良くなる!


「『炎』」


 イメージは指先から出るろうそくくらいの炎。


『確認。消費魔力は?』

「『10』」


 ぼっ。


 そんな音を立てて俺の指先に炎が宿った。


「いよっっっしゃああああぁぁぁぁぁぁぁあっっ!」


 俺は絶叫した。


 飛び跳ねた。


 走り回った。


「フィン〜、うるさいわよ〜」


 後ろから声がした。


 いつものほんわかした声じゃなくて、静かで冷たい声が。


「ひっ……ご、ごめんなさい」


 後ろを振り向けなかった。


 いつだって一番怖いのは、母さんだ。


 





 




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