レア種
学校が消失した、転移石を使用したみたいに呆気なく。
学校だけじゃない、その周りの地面も半円状に抉れている。
「これは規格外だろ」
その半円状の地面を埋めるように黒い水が渦になり、注がれていく。
リクスウェルトンは恋人の死を見送るショーと言ったか?
愛華は死んだのか?
ありえない。最強の魔法少女がこんなにあっさりと。
俺の心の中で、ドス黒い感情がうごめいて
いる。
抑えて、抑えて、抑えて。
必死で抑える。
心を乱されてはいけない。愛華は最強の魔法少女だ。
コイツにやられるわけが無い。
じゃあ愛華が消えたのは何故だ? それは決まっている。愛華を倒せそうにないから結界の外に追い出したんだ。
「お前さ、もうちょいまともな嘘をつけよ」
「バレました? 転移を殺したことにするのは良い案だと思いましたのに。計算していたよりも魔法少女が厄介で、だから外に出しました。目の前から魔法少女が消えたら元凶は絶望をするかと思ったのですけど」
「元カノが消えて、俺が悲しむとでも思っていたのか?」
「嘘の匂いがしましたよ。私はただ純粋に、元凶が絶望した姿を見たかっただけですよ。ココで死ぬという事には変わりないですし」
そうだ、愛華が居たから俺はターゲットにされなかっただけ。愛華が居ない状態で俺とコイツの二人、戦闘は避けられない。
リクスウェルトンはいつでも俺を殺せる力がある。
勝ちは無い。
白い炎を宿した刀をリクスウェルトンに向ける。
「知ってるか? 俺は愛華よりも強い」
「そうですか、自意識過剰なんですね。嘘はついてないようですが。貴方の怪人の力は武器に特化していると見ています。珍しい形ですね」
よく見ているな、さすが幹部クラスというところか。
俺の怪人化では、少しは身体的にも強くなっているが、俺の専用武器は格が違った。
俺の欲しい力が、怪人化によって現れたんだろうと想像がつく。
俺のトラウマになっているブレイドルドの試合で、正義マンや怪人はチート武器を使って、こちらの武器では傷一つ付けられなかった。
チート武器は重すぎて俺には持てなかった。成長した正義マンや怪人には普通の武器を当てても傷がつかない。
傷がつかないとブレイドルドでは当たった判定にならないルールで、どれほど苦渋を舐めたか分からない。
怪人になった今、俺は怪人も正義マンも切れる刀を手に入れた。
怪人になったからと言っても、怪人の先輩たちのような圧倒的な身体能力がないのは残念だがな。
「元凶のような怪人化は今までに見たことはないですが、武器以外は怪人の並以下というスペックで、どう私と戦うと言うのですか。そういえば言ってましたね、魔法少女よりも強いと。それは……ククク、クハハハハ!」
リクスウェルトンは口の端をピクピクさせながら喋っていたが、最後の方で我慢出来ずに大きな笑い声が出ていた。
なんでこんな奴にビビってたんだ? 俺の剣技のスキルは、誰にも負けない。
なんでも切れる刀がある。それで十分に戦えるじゃないか。
リクスウェルトンの呼吸を探り、意識の境を空歩で埋める。
そして俺は……。
「強い奴から1点取るやり方を知っている」
「いつの間に!?」
空中にいたリクスウェルトンを刀で切り捨てた。
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