第12話  ギュウさんにアドバイス

 予想通り、ギュウさんの移動中は、あちらこちらで、襲われた。


「すみませんね」


 その度、謝るギュウさんは、凄みのある声とは、うらはらに可哀想でもあった。


「気にしなくていいです。というよりあんな連中は無視してください。門でタクシーを降りた後は、迎えの天使しか見ないようにして下さい」


 今度こそ無事極楽に行けるだろうか。


 前途多難だが、とにかく極楽門にタクシーを着けた。


「タクシーを降りると、すぐに天使が極楽から出てきます。門をくぐり抜ければ極楽です。彼らには、手出し出来ません」


「ありがとう。ガキの頃、お兄ちゃんみたいな人に会っていれば、俺の人生も歪まなかったかもな」


 そんな事はない。全てあんた自身に問題があるとは、言わなかった。


 極楽門は、極楽の入り口だ。


 閉じた門の前に立つと、天使が極楽から飛んでくる。彼らのみが、門をくぐらず、極楽と霊道を行き来出来る。


 天使たちに、極楽門を開いてもらい、一歩でも踏み込めば、ギュウさんは、はれて極楽の住人だ。


 しかし、今までになく妨害者が、多い。


「僕は、生身なので、タクシーから降りることが、出来ません。天使たちは、欲さえ見せなければ、よほどの事が無い限り、門を開きます。しつこい様ですが、くれぐれも妨害者に構わないように」


 ギュウさんは、タクシーを降りて門の前に立った。


 あっという間だった。


 何十人という妨害者に、抵抗する間もなく、ギュウさんは連れていかれ、漆黒の闇に消えていった。


 その後現れた天使たちは、門の前を見て、不思議そうな顔をして、帰っていった。


 まあ、無理だろうと思っていたが、これ程あっさり連れて行かれるとは、思わなかった。


 相手にさえしなければ、触れられる事も無かったのに…。

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