第14話 悪役令嬢は僕のもの!(ハインリヒト視点)
「ココ…………」
お昼休み。待ち合わせの時間が過ぎてもなかなかココが姿を現さないので、もしかしてまたヒロインに絡まれているのではないかと心配して探しに来た。すると遠目からでもわかるくらいになんとココが男に迫られているじゃないか!?
遠目からよく見れば……もしかしなくても攻略対象者の教師だ!
はっ!よもや実は王子ルートに見せかけた教師ルートで、悪役令嬢のココを糾弾しているのでは?!なにせ教師ルートの時の攻略対象者……アルフレッド・エンデアイはヒロイン至上主義を拗らせてヒロインより成績のいい悪役令嬢をなにかと批判して無理矢理カンニング疑惑を作って糾弾してくるような奴なんだぞ!
ココが危ない!そう思って急いでココの元へと走った。
しかも近づいたときに聴こえた「…………俺の愛するアフロディテ……!」ってなんだぁ?!
まさかこのアルフレッド・エンデアイは、ヒロインに攻略されつつ悪役令嬢も手篭めにするような極悪人だったのか?!とんでもない教師だ!
確かにココは愛と豊穣の女神(アフロディ)のように、いや、女神よりも美しいけども!
今にも泣きそうな複雑な顔をしているココの姿に息が止まる。
「……ハ、ハインリヒト殿下…………」
「ココ……」
その顔を見た瞬間、僕は自分を叱責した。
こんな
この世界が常に悪役令嬢にとって不利な状況を作ろうとしているなんて、僕こそがよくわかっていることじゃないか。
だからこそ僕は、にっこりと笑顔を見せたのだ。
「やぁ、ココ。あんまり遅いから心配したよ」
「あ、えーと、あの」
焦りながらアルフレッドの手を振り払い、目を泳がせるココの姿に胸が痛む。この場面は公爵令嬢としてはかなり失態だからだ。これが乙女ゲームそのままの王子だったならば、ココの不貞を疑うような暴言を吐くに違いないだろう。
「なにかあったのかい?」
だから僕はココの不安を拭うように優しくココの手を握った。
君を信じていると、想いを込めて。あ、ココの手ってマシュマロみたいに柔らか~い。
「じ、実は……」
「え、えーと、ハインリヒト殿下?ですよね?
も、申し訳ありません。実は俺が困っていたところを彼女が助けてくれまして……感謝を述べていたところなのです。しかしそのせいで彼女が腰を痛めてしまったようで……」
下をうつむくココの言葉を遮ってアルフレッドがしどろもどろと言い訳を口にした。
なんだこいつ、僕のココに気軽に触りやがって!貴様の○○○《ピンク》を○○○《ピー》して、さらにあれやこれしてから今すぐ王子の特権使って(物理的に)潰してやろうか。とか思ったが(この間コンマ0.3秒)ココの前なのでなんとか顔に出すのは押さえた。
「そうですか。ですが彼女は僕の婚約者なので、あとは僕にお任せ下さい。……いいですね?」
にっこりと王子スマイルで対応してやれば「ひぃっ!は、はいぃぃぃ!」と情けない声を上げながら真っ青になって逃げていった。
ふん!僕のココに何かしようなんて百年早いのさ!
「あの、ハインリヒト殿下……」
「ココ、どうやらなにかトラブルに捲き込まれたみたいだね。大丈夫だったかい?腰を痛めたとか言っていたけど」
「えっと、実は……」
ココの説明によれば、木に人が引っ掛かってて助けたらその人がココの上に落ちてきたとのこと。しかし、悪役令嬢が助けたのが攻略対象者でさらに絡まれるなんて……。
なんて可哀想なココ!やっぱり僕がココを守ってあげなくちゃ!と僕は決意を新たにしたのだった。
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