目指せグランドエンディング
畔藤
共通ルート
第1話 岐路の分岐点
人生は選択の連続だ。
今後の人生を左右するような大きな決断を迫られる瞬間もあるし、その時はささいな選択だと思っていても、振り返ってみればとても重要な選択であり後悔する……誰しもが経験することだろう。そんな事をくり返しながら時に成功し、時には失敗を重ね、人間とは成長していくものなのだ。
俺こと
人生の分岐点が見える。より正確にいえば、人生において重要な選択に直面した際、ゲームのように選択肢が頭に浮かぶのだ。
選択肢が浮かんでしまえば、普通の人とは違い、選択により行動が制限されるというデメリットがあるが、事前に大きな選択肢になると分かっていれば心構えもできる。不便を
「おーい。岐路。3組の奴らから帰りカラオケに誘われてるんだ。お前どうする?」
「あー。どうすっかな」
そう答えながら少し頭を悩ます。おっ! 珍しい。ここで選択肢だ。
『友人と遊びに行く』 『1人で帰る』
日常の何気ない瞬間に選択が脳内に浮かぶ。本当にありきたりな日々の一コマだが、経験上これが浮かんでしまう場合、大きな選択であることを俺は知っている。
「なに悩んでんだ? 早くしろよ、アイツら待たせてんだ」
「ああ。悪い……そうだな。今日は気が乗らないし帰るよ。よければまた誘ってくれ」
「おう。わかった、んじゃな」
俺は『1人で帰る』ことを選択した。
選択したという事は、今日のところは誰からも誘われることもなく、こちらから誰かを誘っても断られることになるだろう。
この『選択肢』の力は絶対である。ゲームのシステムのように選んだ以上必ず
無駄な抵抗をしてもしょうがないし、選んだ以上大人しく帰るか……。
せっかく久しぶりの選択肢が浮かんだんだ。いつもと違う道を通って帰ってみる。
遠回りになるが普段使わない道を選び歩いてみれば、自分の住んでいる街なのに、不思議とどこか知らない場所にきてしまったかのような錯覚を覚えた。
「へぇ。こんなところに神社なんてあったのか」
キョロキョロしながら歩いていると古い
鳥居をくぐって辺りを改めて見回す。全然人がいない。関係者らしき人も見当たらないのためどこか薄気味悪い印象をうけた。
どうせだし、お参りだけして帰るか。
賽銭箱にお金入れて……えーと、二礼二拍手一礼だっけ? まぁ、適当でいいか。こういうのは気持ちが大事だ。ソレっぽい感じになっていればいいのだ。
「かわいい彼女ができますように」
願いごとが特に浮かばなかったため、信心深いわけでもない俺は適当な願いごとを口にする。とっさに健全な男子高校生らしいお願いができたため、「ここに来た甲斐があったな」と俺は1人で勝手に満足してニヤニヤしていた。賽銭を入れた事により、なんとなく良いことをした気分になって
「ん? なんだあれ……さっきまで無かったよな?」
するとどうしたことだろう。来たときには気づかなかったが何かが落ちている。近づき確認してみれば古いゲームソフトのようだ。かわいらしい女の子が何人かパッケージに描かれていた。手にとってよく見てみる。なになに?
「クオリアハート、恋愛アドベンチャーゲーム。バッドエンドで世界が滅ぶ、全ての女の子を攻略して最高のハッピーエンドを……攻略対象は5人+αって」
思わず苦笑がこぼれる。幼馴染みとか他校の同級生が攻略対象になっているのは分かる。そういうゲームだし義妹が対象になっているのもいいだろう。でも幽霊に宇宙人って……。全てを救うためには全部クリアしろってのは鉄板かもしれないが、世界滅亡とか脈略なさすぎでしょ。でも昔のソフトみたいだし色々ぶっ飛んだ設定のもあるのかなぁ。ああ。それは今も同じか。あれ? この感じはっ!
『ゲームで遊ぶ』
「!? なんだこの選択肢!?」
急に頭に浮かんできたモノに
「……ははっ。いいじゃないか」
もしかしたら俺の適当な願いを、さっそく神さまが叶えてくれたのかもしれない。少し要求と違う物が届いたが、ソレも含めて面白い。いずれにせよ、選択肢の強制力から逃れることは出来ないのだ。
俺は落ちていた怪しいゲームをカバンにしまうことで、選びようがない選択肢を己の意思で選んだ。
「ああ! もうっ。やめだ。やめ!」
帰宅して夕食を済ませた後、すぐにゲームを開始しようとした俺に問題が立ち
あらすじがゲームのパッケージに書いてあるのみで、中は謎のディスクが入っているだけ。説明書も無しときている。不親切極まりない。
決して多くはない手持ちのゲーム機やPCなど、手当たり次第入れてみたが反応はない。ネットでゲーム名や単語で検索しても全く引っかからない。こんな事はあり得るのだろうか?
「個人が趣味で作ったとか? だとしたら凄いなこれ」
寝転がりながら改めてジャケットを見直す。女の子が5人描かれたジャケットは、どの子も魅力的で今にも動き出しそうな雰囲気を
「世界を救え。か」
ジワジワと眠気がおとずれる。時刻を確認すると結構いい時間になっていた。選択肢が出たという事は、能動的に動かなくてもゲームで遊ぶことになるはずである。
何かを変えてくれるきっかけになると期待していたのは間違いないが、焦ることもないだろう。ゲームを床に置き布団に潜り込む。すぐに俺の意識は暗い闇の底に落ちていった。
その日、不思議な夢をみた。
高校生になるまでの別人の生涯を凝縮したような、濃密な夢である。
一人っ子の俺にはいないはずの義妹や、仲の良い異性の幼馴染みと登下校する、まるで漫画やゲームのような都合のいい一夜の幻想。
ゆりかごのような居心地のいい場所であったが、夢には必ず終わりがやってくる。その夢が
バンっとドアが何者かに強引に開けられ意識が覚醒する。
「もうっ。お兄ちゃん! いつまで寝てんの!?」
なんだ!? え? なにごと!? 不審者? 泥棒?
体感的にもの凄い長い夢を見たせいで、頭が混乱している。慌てて声の出所に顔を向ければ、知らないはずなのになぜか知っている美少女が入り口からこちらの様子をうかがっている。
「やっと起きたっ! いつまでも寝ぼけてないで早くしないと遅刻しちゃうよ?」
理解が追いつかず、間抜けな顔をさらしている俺に向かって謎の少女は未だに何事かをまくし立てている。
呆然とする俺にとどめを刺すように選択肢が浮かび上がった。
『挨拶を返す』 『ハグをする』 『もう一度寝直す』 『無視して状況を確認する』
流石に俺の異変に気づいたようで、さっきまでプリプリ怒っていた女の子は黙ってこちらを不思議そうに見ている。
そのどこか、幼い顔つきを
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