世界の狭間
ゼロside
「ゼロ、ゼロ。」
ん…。
「起きてくれゼロ。」
誰…?
ボクの事を呼んでるのは…?
「ゼロ!!」
「っ!?」
ジャックの大きな声に驚いて慌てて目を覚ました。
「ジャ、ジャック…?」
「っ!!」
ガバッ!!
ジャックがいきなりボクの事を抱き締めて来た。
突然の事にボクは動けないでいた。
ど、どうしていきなり抱き締められたんだ!?
「良かった、目を覚まして…。」
ジャックの体がカタカタと震えていた。
震えてる…。
ボクはジャックの震えてる背中に手を伸ばした。
ギュッ。
あ…。
凄いポカポカする。
カチッとハマッてる。
開いていたピースがピタッと収まった感じだ。
「会いたかった…。」
ジャックの聞いた事ない甘い声が耳に届いた。
胸がギュウッと締め付けられた。
「今まで気付かなくてごめん。俺の愛した女が戻って来た事に気付かなくてごめん。ごめんなアリス。」
「っ!!」
ジャックの手がボクの頬を包んだ。
「ごめん。ごめんなアリス。」
そう言ってジャックの額がボクの額にくっついた。
「ジャック…、ジャック。」
ボクの頬に冷たいモノが流れ落ちた。
ジャックにずっと、こうして欲しかったんだ。
優しくて甘い声でボクの本当の名前で呼んで欲しかったんだ。
「泣くなよ。」
「ボク…、泣いているのか?」
「汗とか言うなよ?」
「言うか、馬鹿。」
ボクがそう言うとジャックはフッと笑った。
ボーン、ボーン、ボーン。
時計の音が聞こえて来た。
音につられてボクは周囲を見渡した。
白と黒の階段と階段を繋ぐ為の4角形の白と黒の床が沢山あった。
ボクとジャックは4角形の白い床の上にいた。
「ここは…?どこなんだ?」
「分からない。いきなり大きな穴に俺達は吸い込まれたんだ。行き着いた場所がここだったって訳だ。」
「ゼロー!!ジャックー!!」
上からマリーシャの声が聞こえて来た。
上の方に視線を向けると、ロイドとマリーシャが黒い床の上に逆さまの状態で立っていた。
「マリーシャとロイド!?落ちないのか!?」
「それはこっちの台詞よ!?」
どうやら、マリーシャ達の場所から見えるボク達は逆さまの状態で立っているらしい。
「どうなってるんだ?この世界は…。」
そう言ってロイドは乱暴に髪を掻き分けた。
もしかして、この世界は…。
「世界の狭間…?」
ボクは小声で呟いた。
一方、その頃 Night mare達はー
「ここは、この世界の狭間か。」
Night mareは1人でこの状況を整理していた。
「俺達はこの世界に出来た穴に吸い込まれ、吸い込
まれた先の世界に辿り着いた事になるのか。」
Night mareはそう言ってポケットから煙草を取り出した。
「Night mare!?」
突然聞こえて来た声に驚きながらもNight mareはゆっくり振り返った。
すると、そこにいたのは怪我だらけのマッドハッターとインディバーの姿があった。
「よぉ、久しぶりだな。」
「ちょ、ちょっと!!いつ、いつ戻って来たの!?」
インディバーは戸惑いながらNight mareに尋ねた。
「さっき、ゼロと一緒にいたんだよ。」
「嘘…。本当にNight mareなの?信じられないわ。顔にこんな傷を付けて…。」
インディバーは泣きそうな顔をしながら、Night mareの頬に触れ抱き締めた。
「無事に帰って来てくれて良かったわ…。ずっと、待ってたのよ?」
「長い間、留守にして悪かったなインディバー。それにマッドハッターも悪かったな。」
Night mareはそう言ってマッドハッターに視線を向けた。
マッドハッターは固まったままNight mareの顔を見つめていた。
「ゼロを連れて帰って来てくれたんだな…。その顔の傷はどうしたんだ?」
「あぁ、これか?あっちの世界でゼロの事を守って
生活してたら出来たんだよ。お前の妹はしっかり俺が守ってたから安心しろよ。」
Night mareはそう言って軽く笑った。
マッドハッターはそんなNight mareに近付き軽く肩
に拳を当てた。
「お帰り…。ゼロの事を見つけ出してくれてありがとう。」
「あぁ。ちゃんと見つけて戻って来たよ。それより
今の状況を整理するぞ。」
Night mareはそう言って穏やかだった空気を変えた。
「この世界は何なの?」
「この世界の狭間だな。」
インディバーの問いにNight mareは指を刺しながら答えた。
「作られた世界の狭間って事か。さっきの揺れも世界が崩壊し始めた…って事なのか?」
「ゼロがどうして異世界に飛ばされたのかを説明するぞ。」
Night mareはそう言って2人にミハイルの話をした。
「じゃ、じゃあこの世界を作ったのはミハイルで、ゼロを追い出しアリスをこの世界に連れ来たのもミハイルなのね?」
「あぁ。この世界を壊すにはアリスを殺す事しかない。」
インディバーの問いに答えたNight mareはマッドハッターを見つめた。
「なら、アリスを殺すしかないだろ。俺は殺すよ。この狭間の世界にいるんだよな?」
「いるだろうな、ミハイルと。あっちもゼロを殺す気だろうからな。」
「今度こそ俺はゼロを…、妹を守る。」
マッドハッターの瞳を見たNight mareは背中を向けた。
「アリスとミハイルがゼロを見つける前に見つけるぞ。」
Night mare一行はアリスとミハイルを殺す為に階段を登り始めた。
その頃、アリスとミハイルはー
アリスはぶつかり合う大きな歯車を見つめていた。
「アリス、アリス。」
「…。何。」
「いや、ボーッとしてから大丈夫かなって…。」
「この世界だけは守らないと…。」
アリスはそう言って自分の親指の爪を噛んだ。
「アリスは俺だけのアリスじゃ駄目なんだよね?」
ミハイルの突然の問いにアリスは驚いた。
「何を言い出すの?」
「ジャックはもう、手に入らないだろ?」
「っ!!アンタに何が分かるの!?」
そう言ってアリスはミハイルの頬を叩こうとした。
パシッ!!
「っ!?」
ミハイルはアリスの手首を掴んだ。
「アリス。この世界の最後の歯車は君の命なんだ
よ?」
この世界の大きな歯車の間に赤い宝石で出来たハートを歯車が守っていた。
この赤い宝石のハートはアリスの心臓。
つまり、このハートを壊せば世界が壊れアリスの存
在が消えて元の本来の世界に戻る。
「この方法しかなかったじゃない。貴方の心臓じゃ駄目だったのよ。ゼロを殺せばこの世界は治る。ゼロを殺してあたしが本物のアリスになるの!!」
パシッ!!
アリスはそう言ってミハイルの手を払った。
「ミハイルだけのアリスじゃ駄目なの!!皆んなの
アリスじゃなきゃ意味がないのよ!!」
「アリス…。君は少しでも僕の事を好きでいてくれたの?」
「ミハイル?どうしたの?何で、今になってそんな事を言うの。」
アリスはキョトンとした顔でミハイルに尋ねた。
「…、何でもないよ。ゼロを探そう。」
ミハイルはそう言ってアリスに背中を向け階段を登り始めた。
アリスはこの時のミハイルの感情が理解出来なかったのだった。
ゼロside
「ミハイルの作った世界が壊れて来たのか?」
「っ!?何で知ってるんだ?それよりも、ジャック。いつ、正気に戻ったんだ?」
ボクがそう言うと、ジャックはこれまでの経緯を話してくれた。
「つまり、ジャックは洗脳に掛かったフリをしてアリス達の所にいたのか。」
「あぁ。それで、ミハイルが色々喋ったんだよ。この世界を作ったのが自分だってさ。」
「成る程な…。」
キラッ。
ふと、大きな歯車の間に光る物が目に入った。
「ゼロ?どうした?」
「いや、あの歯車の間に何かある。」
「え?どれ?」
ジャックとボクは目を細めながら歯車の間を見つめた。
だが、距離がある所為で光しか見えなかった。
「あの光が気になるな…。なぁ、ジャック。あの歯車の所に行かないか?」
「え?良いけど…、辿り着けるのか?」
「分からないが、行くしかないだろ。」
そう言って、ボクは歩き出そうとした時だった。
パシッ。
ジャックがボクの手を掴んで来た。
「ジャック?」
「手、繋いで行こう。」
「え?」
「良いだろ?別に繋いだって。」
突然の申し出に驚いた。
ジャックってこんなタイプだったか?
「嫌だったら無理にとは言わないけど…。」
「いや、嫌じゃない。」
そう言うと、ジャックはボクの手を繋いだまま階段を登り始めた。
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