入れ替わり II
ゼロside
アリスと一緒にいた仮面の男は違う男。
その男は自分の事をNight mareと名乗った。
Night mareの体から嗅いだ事のある煙草の匂いがした。
この煙草の匂い…。
嗅いだ事があるぞ。
この煙草を吸うのはアイツしかいない。
そんな事を考えているとNight mareが声を掛けて来た。
「あの扉はゼロの閉ざされた記憶だ。」
「ボクの閉ざされた記憶?」
「前に話した事があるだろ?ゼロの記憶は誰かの魔法で閉ざされてるって。」
そう言えば…、前にNight mareが夢の中で言っていた事か。
ボクの知らない記憶がこの扉の奥にある…っと言う事か?
「この扉はどうやって開くんだ?かなり頑丈に鍵がされているが…。」
「ゼロはもう手にしている筈だよ。」
「え?」
「ゼロは気付き始めているだろ?自分の幼い頃の記憶に出て来る人物が誰なのか。」
トクンッ!!
Night mareの言葉に強く胸を打たれた。
薄々感じていた事をNight mareに突かれた。
ボクと一緒にいた男の子が誰なのか。
教会でいつも一緒にいた男の子は…。
ズキンッ!!
頭に痛みが走った。
「ゔっ。」
「ゼロ、もう少しだ。」
Night mareがよろけそうになったボクを支えながら呟いた。
ズキズキと痛む頭痛が吐き気を誘う。
男の子の事を思い出そうとするとこの痛みが走る。
まるで、ボクに思い出させたくないようだ。
もう少し、もう少しなんだ。
もう少しで…、もう少しで顔が見れるんだ。
男の子の顔に靄(モヤ)がかかっている。
その靄が徐々に晴れて来ている。
「ゔっ。ゔぇ…。」
「頑張れゼロ。頑張れ。」
Night mareがボクの背中を摩りながら声を掛けてくれている。
吐きそうだ…。
何かがボクの頭の中で抵抗している。
思い出せ、思い出せ!!
強く瞼を閉じた。
ボクの知らない記憶が頭の中に流れ込んで来た。
教会の子供達は1つの大きな部屋で寝ていて、ボクと男の子はいつも隣で寝ていた。
ボクはいつも夜はあまり寝られなかった。
暗闇がどんどん大きく見えてボクの事を飲み込んでしまうんじゃないかって思っていた。
「眠れないのか?」
男の子は眠れないボクを見ていつも声を掛けてくれた。
「う、うん。」
「怖くて眠れないのか?」
「暗いのがどんどん大きくなっていくから…。怖いの…。」
ボクがそう言うと男の子がボクが着ている布団の中に入って来た。
「俺が隣にいてやる。怖い物は俺が全部倒してやる。だから安心して寝ろ。」
「うふふ…。」
「何…、笑ってるんだよ。」
「そうだよね。あたしにはジャックしかいなかったよね。ジャックの隣なら安心出来る。」
そうだ。
そうだった…。
ボクの隣にいたのは…。
「良い夢を見ろよアリス。」
ジャックはそう言ってボクに微笑んだ。
そうだ。
ボクの隣にいたのはジャックだった。
ボクの本当の名前は"アリス"だ。
「ボクは…、ゼロなんかじゃなかったんだ。ボクの名前はアリスだ!!」
そう言うとボクの目の前に鍵が現れた。
「キミはこの世界の住人だったんだよアリス。」
「どうして、ボクは異世界に飛ばされたの?」
「異世界の住人が偽物のアリスの願いを叶えてしまったからだ。」
偽物のアリスの願いを?
「偽物の願いはただ1つ。ゼロ、キミの世界を欲しがったんだ。」
「ボクの世界を欲しがった…?」
「俺はゼロを守る為に異世界に行き、キミの側にずっといた。俺の正体…、分かってるよね?」
Night mareはそう言ってボクの前で少し屈んだ。
その体勢は仮面が取りやすかった。
ボクはNight mareの正体に気が付いた。
いや、煙草の匂いで分かったんだ。
Night mareの仮面にゆっくり手を伸ばした。
カパッ。
「お前だったんだろヤオ。」
仮面を外すすと、ヤオの顔が現れた。
「いつ、俺だって気付いたの?」
「お前の吸っている煙草の匂いで分かった。」
「アハハハハハ!!流石、俺の相棒だな。」
「どうして、ヤオも異世界に来たんだよ。」
「ゼロを元の世界に戻す為。」
ボクを元の世界に戻す為…だと?
「アリスがどうして、異世界に飛ばされたかと言うと。偽物とゼロが同時に鏡を見たからなんだ。」
「鏡を見ただけで飛ばされたのか!?」
「あぁ。偽物とゼロの境界線が繋がってしまったんだ。自分と瓜二つの人間の境界線は繋がる事のない平行線だ。だか、偽物も協力者の意図でゼロは鏡を見たんだ。」
「じゃ、じゃあ…ボクは意図的に鏡を見せられたと言うのか?」
「あぁ。ゼロは心当たりはないのか?鏡に誘導するのように仕向けた人物が誰なのか。」
ボクを鏡に誘導した人物…。
「分からない…。だか、もしかしたらこの扉の奥に行けば分かるかもしれない。」
そう言ってボクは扉に視線を向けた。
ヤオも何かも察した様子だった。
「ゼロ、その鍵を使って扉を開けよう。この先に答えがある筈だ。」
「あぁ。」
ボクとヤオはゆっくり扉に近寄った。
そして、南京錠に鍵を差し込んだ。
カチャッ。
「南京錠が解除された。」
「周りの鎖は俺が取る。ちょっと待ってろ。」
ヤオはそう言って手際良く鎖を外した。
ガチャガチャッ。
重たい鎖がゆっくり外されて行く。
この先に行けば分かるのか。
ガチャンッ!!
全ての鎖が外され扉だけになった。
「さぁ、ゼロ。」
ヤオはそう言ってボクに手を差し出して来た。
「心の準備は良いか相棒。」
そう言ったヤオの笑顔はいつも見ていた笑顔だった。
「準備ならとっくに出来ている。お前こそ出来ているのか相棒。」
「ハッ!!冗談はよせよ。じゃあ…行くぞ。」
ガチャッ。
ヤオはゆっくりドアノブを捻り扉を開けた。
ボク達は手を繋ぎながら扉の中に入った。
真実を知る為にー。
グサッグサッグサッグサッグサッ!!
アリスは爪を噛みながら縫いぐるみにナイフを刺し続けた。
「早く、早くアイツを殺さないと…。」
アリスの後ろで仮面を嵌めた男がいた。
「お、落ち着けよ。」
仮面の男がアリスの肩に触れようとした。
パシッ!!
カランカランッ…。
アリスが払い除けた手が仮面の男の顔に当たり仮面が外れた。
男は地面に転がった仮面を拾おうとした。
だが、アリスが男の手を取った。
カーテンの隙間から照らされた月がアリスと男が口付けをしている所を見ていた。
「どうにかしなさいよ!!あの時のようにしてよ!!あたしをこの世界に飛ばしたようにしてよ!!」
アリスは男の胸を叩きながら叫んだ。
「ねぇ…、お願いだからあたしを助けて。」
男はアリスの体引き寄よせ抱き締めた。
「助けてよミハイル。」
月の光に照らされた男はミハイルだった。
第4章 END
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