ロイドとアリス I
ロイドの家に到着すると、ロイドが家の前で待っていた。
ロイドは車に気付くと慌てて車に駆け寄って来た。
「ゼロ!!どこに行ってたんだよ!?」
「近所迷惑だぞロイド。」
帽子屋が車の窓を開けてそう言った。
「心配掛けて悪い。」
「いや…。無事なら良いんだ。怪我とかしてないか?」
「大した怪我はしていないから大丈夫だ。」
ボクがそう言うと安心したのかロイドはホッと一息吐いた。
こうやって、ボクの事を心配してるのも演技かもしれないんだよな…。
ロイドからアリスの話を聞き出して、様子を伺わないとな。
考え込んでいると、帽子屋とインディバーの視線を感じた。
ボクは軽く頷き車のドアを開けた。
ロイドはボクの両肩に巻かれた包帯を見て驚いていた。
「ゼロ!?大怪我してるじゃないか!!」
「い、いや…。」
「早くベットに横になれ!!」
そう言ってロイドはボクの手を掴みドシドシッと足
音を立てながら家の扉を開け、ボクの背中を押して家の中に入れた。
パタンッ。
「お、おいロイド。帽子屋達に礼を言わずに…。」
グイッ!!
ロイドに不意に手を引っ張られた。
バランスを崩したボクはそのままロイドに抱き締められた。
ギュュゥ…。
ロイドは力強くボクの体を抱き締めた。
「ロイド?どうしたんだよ。いきなり…。」
声を掛けても抱き締める力がさらに強くなった。
どうしたんだ?
どうして、ボクはロイドに抱き締められてるんだ?
「ロ、ロイド。」
名前を呼んでもロイドが反応をしてくれない。
「ロイド!!!」
「っ!!」
大きな声を出すと、ロイドがハッと我にかえりボクの体を離してくれた。
ポツッ…。
ポツッ、ポツッ、ポツッ…。
外から雨の降り出す音が聞こえた。
ザァァァァア!!!
小粒の雨から大粒の雨に変わり、暗闇がボクとロイドを包んだ。
ロイドは何も言わずにその場に座り込んだ。
「わ、悪い…。」
「どうしたんだロイド。様子がおかしいぞ?」
ボクもその場に腰を下ろしロイドの肩に触れた。
「ゼロがいない間に仮面の男が現れたんだ。」
「仮面の男が?」
Edenの連中がロイドに接触して来たのか。
「あ、あぁ。アリスが助かるにはゼロを殺せって言って来たんだ。」
ジャックの時と同じか。
「だけど、俺はゼロを殺す事が出来ない。」
そう言ってロイドは顔を上げた。
ロイドは今にも泣き出しそうな子供のような顔をしていた。
「アリスの事を大事だと言っておきながら俺は!!ゼロを殺したくないと思ってる。こんな考えがおかしいんだ。アリスの事が大切なのに…。」
ロイドは頭を乱暴に掻きながら呟いた。
ボクはそんなロイドの姿が見ていれなかった。
ロイドは間違った事なんて、1つも言っていない。
それなのに、ロイドは自分が罪を犯したかのような慌てようだった。
アリスの事を大事にしていないといけないような…。
思わずボクはロイドを抱き締めていた。
「ゼ、ゼロ?」
「ロイドは何も悪い事はしていない。自分を責める必要はないんだよ。それに、ボクの事を考えで悩んでくれた事は凄く嬉しい。」
「ゼロ…。どうしたら良いんだ俺は…。」
アリスがEdenの団長だと言う事は言ってないようだな。
洗脳のようなモノがロイドに掛かっている気がした。
ロイドの様子は、ロシアの軍隊にいた時に見た事があった。
敵軍の兵士を拷問し過ぎて、こちら側の言う事を聞くだけの奴隷化してしまい、どうせならコイツを敵
軍に戻して仲間内で殺さようと言う計画になり、敵軍の兵士に戻し仲間内で殺させた。
仲間を殺さないといけないように洗脳されてた姿と
ロイドの様子は同じ感じだった。
ロイドの洗脳を解かないと…。
このままだと、ロイドの心が死んでしまう。
「ロイド。実はEdenの団長がアリスだと分かったんだ。」
「えっ?ど、どう言う事だ?」
ボクはロイド顔を見る為に体を離した。
Night'sの事は伏せながらアリスとジャックの事を話した。
ロイドは信じられない様子だった。
「じゃあ、アリスの死体も全部、自作自演だったって事なのか?」
「あぁ。十字架事件の被害者女性も全員がアリスに似ている容姿の女性だそうだ。」
「嘘だろ?そんな…。Edenを作ったのがアリスだなんて…。あのアリスが?」
「信じられないのは当たり前だ。だが、アリスは自分の為にやった事なんだよ。ジャックの事やロイド達を支配する為にな。」
「ッ!!」
ロイドは苦痛の声をあげながら頭を抱えた。
「ロイド!?」
「あ、頭が割れそうだ…。」
どうして、いきなりロイドの頭が痛くなったんだ?
もしかして…?
ロイドがアリスへの気持ちに疑いを持ったからか?
そうだとしたら、この状況に説明がつく。
「ロイド、大丈夫か?」
「くっそ…、何だよこれ。何でこんなに頭が痛いんだ。」
そう言ってロイドは頭を押さえながら蹲(うずくま)った。
これは…、ロイドに掛かっている洗脳が解けようとしている…のか?
「恐らくだがロイドには洗脳が掛かっている。」
「せ、洗脳…?」
「あぁ。その激しい頭痛は洗脳が解けようとしているからだろう。」
「アリスはいつから…、変わってしまったんだ。あの、優しいアリスは?それも初めから嘘だったのか?」
ポタッ。
ロイドの目から涙が零れ落ちていた。
「ロイド…。」
「アリスはいつから壊れてしまったんだ。」
「アリスの事を知る為に教えてくれロイド。ロイドか見たアリスの事を。」
ボクがそう言うと、ロイドの頭痛が止まったようだった。
ロイドは蹲ってた体勢を整え座り直した。
「頭痛は平気なのか?」
「あ、あぁ。今は治ったから大丈夫だ。アリスの話
をゼロにするのは初めてだな。」
「そうだな。改めてロイドの口からアリスの話を聞くのは初めてだ。」
「ッフ。アリスとの出会いは俺が教会にアリスを迎えに行ったからなんだ。」
「ロイドがアリスを?」
ボクがそう言うと、ロイドはポケットから煙草を取り出し口に咥え火を付けた。
ロイドが自分の煙草をボクに差し出して来たので1本貰った。
ボクも煙草を咥え火を付けたのを見たロイドはゆっくりと語り始めた。
ロイドside
当時の俺はまだ19の子供だった。
親父から時計屋を引き継いだ俺は1人で黙々と時計を作っていた。
時計屋を引き継ぐ前は情報屋として働いていた。
表向きは時計屋、裏では情報屋をしていた。
情報屋の仕事は主に、依頼主の欲しい情報をどんな
手を使ってでも情報を集める事だった。
命の危機を感じる時もあったが、どうやら俺は情報屋に向いていたらしく顧客は沢山いた。
そんな中、俺の店に女が訪ねて来た。
カランカラン♪
来客を告げる鈴の音が、時計の針が響く店内に鳴り響いた。
「いらっしゃい。」
俺は客の顔を見ずに挨拶をした。
「客の顔を見て挨拶しなさいよロイド。」
聞き覚えのある声だったので、俺は修理をしていた時計から視線を外し声のした方に視線を向けた。
赤い縦ロールの髪は肩までの長さで、長い睫毛にネイビー色の瞳、赤い口紅が映える白い肌は露出の高
い服を着こなしている女だった。
「女王様。来る時間を間違えてるけど?」
「あら、別に良いじゃない。今日はそっちの要件じゃないから。」
この国の女王も俺の情報屋のお得意様だ。
女王が昼間に俺の店に来るのは今日が初めてだった。
「何の要件ですか?」
「アンタ。今日から女の子を育てなさい。」
「は?」
「聞こえなかったの?今日から女の子を育てなさい。」
女の子を育てろ?
「は?」
「ちゃんと理由があるから心配しないで良いわよ。」
「いやいや!理由があるかないかじゃなくて、何で俺がガキを育てないといけないんだよ?!」
「ほら、さっさと店を閉める準備しないよ。」
「はぁ!?」
俺の返事を聞かずに女王は俺の手を掴み店の外に出そうとした。
「分かった!!分かったから引っ張んなや!!」
「さっさと店を閉めないアンタが悪いのよ。」
「分かりましたよ。」
俺は渋々鍵を閉めて店を出ると、女王の乗って来た車に無理矢理乗せてられ、車を走らされた。
「あのさ、行き先くらい教えてくれない訳?」
俺がそう言うと、女王が写真付きの資料を何枚か渡して来た。
資料を受け取とり、目を通すと4歳ぐらいの男の子と女の子の写真とプロフィールが書かれていた。
女の子名前はアリス、男の子の名前はジャックと書かれていた。
「教会に拾われた孤児達の情報か?」
「えぇ。私の娘マレフィレスを女王に即位させる為にハートの騎士団を作る計画をしてるのよ。その男を騎士団に入れる為に1回会ったのよ。」
「それで?」
「ジャックがアリスも一緒に教会を出してくれないと入らないって言ったのよ。」
「あー。それで、アリスを俺に引き取れと。」
そう言うと女王はニヤッと笑った。
「報酬は?」
「勿論。いつもの倍を用意してるわ。」
「なら、良い。」
結局、この女との金の繋がりは信じられる。
金さえ貰えるならこの女のガキを引き取れる。
俺達はアリスとジャックがいる教会に向かった。
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