Endless Game

パァァァンッ!!


マリーシャよりも数秒早くボクは銃口を引いた。


グチャッ!!


放った銃弾がマリーシャの右腕に当たり、ボクは近くにあった家具で銃弾を弾いた。


ヒュンヒュンッ!!


やっぱりボクの撃った弾は百発百中当たる。


このTrick Cardの能力は本物か。


「いったぁぁ!!アンタ何者?普通のメイドじゃないわね。」


ポケットからオレンジ色の液体が入ったドリンクを取り出した。


「あのドリンクはなんだ?」


「回復ドリンクだよ。傷を治すドリンク。」


「そんなモノがあるのか!?」


ボクの呟きにCATが答えた。


ロシアに合ったら大変だったな…。


ゴクゴクッ。


マリーシャがドリンクを飲み干すと見る見るうちに傷が治って行った。


そして腰にぶら下げてあった鞭を手に取った。


「答えないとお仕置きするわよ。」


お仕置き…って。


アンタはSM嬢か!!ってツッコミたくなった。


ロイドの時計を使うのもコイツと距離を取ってからの方が良いな。


「何の騒ぎだ!!」


「おい!!侵入者がいるぞ!!」

タタタタタタタッ!!

20人のハートの騎士団がマリーシャの後ろに集まった。


「マリーシャ様!!ご無事ですか!!」


「遅いわよアンタ等!!」


マリーシャが1人の団員を怒鳴り付けた。


ハートの騎士団とマリーシャは一応仲間って事…か?


「やっぱりバレちゃうよねー。収穫は出来たゼロー?」


「少しだけだがな。そろそろ行くか。」


「了解ー。」


CATはそう言ってポケットから時計を取り出そうとした。


ボクはハートの騎士団の1人がCATに向かって銃を向け銃弾を放とうとしたのを見逃さなかった。


咄嗟にボクはCATの腕を引き後ろに隠して素早く銃を向けている男の腕を撃った。


グチャッ!


「うがぁぁ!!腕が、腕がぁ!!」


男は腕を押さえながら床に崩れ落ちた。


「総員、銃を構え!!!」


団長らしき男がそう言うと団員は一斉に銃をボク達に向けた。


「さぁ、これで逃げれないわよ女。アンタ等この女を捕まえるわよ。」


「了解した。」


マリーシャが団長と共に団員に指示をして居た。


「ゼロー。どうする?」


「隙を作ってから時計を使う方がベストだ。それに体を動かしておかないと鈍るからな。良いかCAT、ボクが合図をしたら時計を使え。それまで団員の人数を減らしておく。」


「OK。」


ボクは団員が落とした銃を拾い左手に持ち替えた。


両手に銃を構えている状態になった。


スゥ…。


大きく息を吸い呼吸を整えた。


今からのボクはアラスの代わりではなくコードゼロに戻る。


目を閉じてゆっくりと目を開けた。


「っ!!」


「な、なんだ?」


「急に雰囲気が…。」


団員達はボクの放つ空気を察したのか、辿々しい態度をした。


マリーシャの顔付きもスッと変わった。


「アンタ達、気を張りなさい。」


「マリーシャ殿?それはどう言う意味ですか?」

団長がマリーシャに尋ねた。


「気を抜いた奴からあの女に食われるぞ。」


ボクは少し勢いを付けて走り出した。


「う、撃てー!!」


団長が団員に合図をした。


カチャッ!!


手前にいた団員の左側の顎に周り蹴りを入れた。


ゴキッ!!


骨の折れる音がした。


ボクはそのまま流れに体を任せて銃を撃った。


バンバンバンバンッ!!


「うがぁぁ!!」


「ギャアアア!!」


ボクの放った銃弾が次々に団員に当たる。


「な、何だこの女!!」


「普通の女じゃねぇ!!」


ボクはその声を無視して銃を撃ち続けた。


飛び散る血はボクの着ているメイド服を汚した。


マリーシャが能力を使い家具をボクに投げつけて来る。


だが、スピードが遅い為ボクは軽々と避けれた。


飛んで来る家具を避けるとマリーシャがボクに向かって銃弾を放った。


この銃を使って方向を変えるか。


そう思っていると目の前が炎で包まれた。


ゴォォォォオ!!


「えっ?」


ガシッ。


誰かがボクの肩を掴んだ。


この手の感触を知ってる。


ボクはゆっくりと振り返った。


そこには汗だくのジャックの姿があった。


「な、なんだこの炎は!!」


「か、火事だー!!」


ハートの騎士団は炎見てアタフタしていた。


「はぁ…、はぁ。間に合ったな。」


「ジャック…。どうしてここに?マレフィレスと一緒だった筈じゃ…。」


「部屋に送ってから走って来た。怪我してねぇ?」


そう言ってボクの顔を真っ直ぐ見た。


何だ…コレ…。


鼓動が速くなった。


「ジャックー!!助かったよ!!」


「ロイドの時計を使って早く戻れ。」


「う、うん。」


「俺が炎を出してる内に。」


そう言ってジャックはボクの肩から手を離した。

あ…。


温かい手が離れてしまった。


パシッ!!


「ゼロ行くよ!!」


CATがボクの手を掴みロイドの時計を出した。


時計に付いて居るスイッチを押すとさっきまで動いて居た炎が止まった。


周りを見るとジャックやマリーシャ、ハートの騎士団達の動きが止まっていた。


「ほ、本当に時間が止まってる…。」


「この時計は1分しか止められないんだ。ホラ、早く行こう。オレが抜け穴を作ったから。」


CATはいつの間にか空間に黒い穴を作って居た。


「ゼロ!!穴に入るよ!!」


ボクは止まっているジャックを見つめた。


「ゼロ!!」


「あ、あぁ…。」


ボク達は穴に飛び込んだ。


この時、何故ジャックの事を見つめたのかボク自身

も分からなかった。



ジャックside


チチチチッ。


時計の針の音が聞こえる。


1分くらい経っだろうか、体の自由が効き始めたのは。


「何だよ一体!!」


「ど、どうしたら良いんだ!?」


団員達には俺がTrick Cardを持っている事を教えていない。


教えてあるのはミハイルと身内だけだ。


ここは演技をして場を収めた方が良さそうだな。


後ろを見るとゼロ達の姿がなかった。


無事に城を抜けれたんだな。


なら、安心だ。


ロイドからゼロ達が城に潜入する話を聞いて居なかったらアイツ等ヤバかったな。


「消化が先だろう。落ち付いて行動しろ!!」


あたかも今来たかのように演技をした。


「ジャック隊長!!」


「そ、そうだな!!急いで消化器を用意しろ!!」


「は、はい!!」


パタパタッ!


団員達は消化器を探しに行った。


事の数分で火は消却出来た。


「ここの掃除を使用人達にするように指示をしろ。

女王にはお前が報告をしろ。」


この団員を率いた団員にマレフィレスに報告するように指示をした。


「分かりました。」


「ジャック。」


後ろからマリーシャが俺に声を掛けて来た。


「アンタ、何で早く来なかったわけ?こんな事態があったら直ぐに来る癖に。」


「俺だって仕事があんだよ。お前みたいに暇じゃねぇよ。」


「はぁ!?あたしがいつ暇だって言ったのよ!!」


相変わらず五月蝿い女だなコイツ…。


本当はゼロがどれ程の実力か見たかったけど、マレフィレスが俺を帰そうとしなかったから時間を予想

以上に食っちまった。


「アンタさ、あの女の事知ってんの。」


マリーシャが質問して来た。


コイツ、俺とゼロが繋がってる事を知っているのか?


いや、知らないからこの質問をして来たんだろうな。


「女?知らね。俺が来た時には誰もいなかったぜ。」


「へー。」

マリーシャは俺に疑いの目を向けた。


俺はマリーシャの視線を無視して廊下を歩いた。



ジャックの後ろ姿をマリーシャはジッと見つめていた。


「ふぅん。マッドハンターに教えておいた方が良さ

そうね。あの人の喜ぶ情報を手に入れたし♡」


ジャックと反対方向にマリーシャも歩き出した。

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