なんでもない日常
「それで?」
何百回目かの、平穏な日曜日の朝。彼女は綺麗に手入れされたブロンドの髪の毛を退屈そうにいじりながら、怪訝そうな顔でそう言った。右手には飲みかけのブラックコーヒーの入ったマグカップが握られている。
あぁ.......また無理して飲んでるな。
「別になんでもないさ」
ただ.......僕はそう付け加えた。
「なんでもない日常を、文にしたくってさ」
「ふぅん」
彼女は興味があるのか無いのか、そう言ってまた珈琲に構い始めた。やはり相当苦いのか、口を付ける度に出る渋い顔が隠しきれていない。
「ちなみにだけど、その面白い表情も文にしてるんだよ」
「別に、存分にすればいいじゃない」
彼女は俄に立ち上がると、珈琲ポットに手をかけた。
「アンタもどうせ飲むでしょ?」
ぶっきらぼうな彼女の問いかけに僕は頷く。
彼女は出来上がった珈琲にミルクと砂糖を目一杯入れ、僕に差し出した。
「ありがとう」
「相変わらず甘党だね」
「まぁね」
何百回目かの日曜日の朝。
平穏な朝が過ぎていく。
文字にすべき事象は日常にこそ、存在する。
僕はそう言うと、椅子に腰掛けた。
「いつも言ってるよね、ソレ」
「僕の決めゼリフにしてるんだ」
「ふーん.......」
彼女はネコのように目を細め、僕を眺めている。僕に興味があるようで無い。そんな顔だった。
「もう行くの?」
「うん、日常を文にしないとだから」
「そっか」
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