【episode11-電話のベル】


「久しぶり〜!!」「ほんと久しぶり!」


3年ぶりに会った中学の同級生は相変わらず美人さんだ。




開口一番、彼女が美しい笑みと共に疑問を投げかける。


魁人かいとと何かあった?」



彼女は、魁人と沙楽さらにとって共通の友人である。


「ん、まぁ、あったけど…。」




「実はね、魁人からメッセージがきたんだよ。」


そう言って、彼女が携帯の画面を沙楽に見せた。



そこには、『沙楽といろいろあってキツイんだよね。』という、魁人の想いが綴られている。



友人がその画面に手早く何かを打ち込んだ。


『今、沙楽といるよ。』



程なくして魁人から返信が届く。


『それを俺に言われてどうしろと(笑)』



おいでよと言う友人誘いに『沙楽がヤバいだろ。』という返信があった。


予想外の思いやりと配慮である。



あいつも少し大人になったのかな。


沙楽が心の中で悪態をついていると、友人の携帯電話に彼からのメッセージが届く。



『仕事終わりに少し顔出すわ。』


友人の携帯電話に届いた彼の言葉を覗き込んでいると、突然沙楽の電話が鳴った。




「えっ、どうしよう。」




沙楽は慌て戸惑い、思わず自身の電話を友人に差し出した。


その姿はまるで、受験の日に頬を染め、「どうしよう。」と呟いた10代の沙楽を想起させるものであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る