鮫の肺はいつも冷たい・作品集

汐咲アクメ

屋上の楽園

 限界まで貯めた尿意を開放するときというのはなんと心地がいいのだろう。


「そろそろ席つけよー」


「海藤お前長すぎだろ!」


「何が?」


「しょんべん」


「チO子」


「二次関数むじー」


 チャックを閉めて席へ帰ろう。

 僕は屋上の端から離れて自分の席へ座る。

 今日も当たり前のように一日の授業を終える。先生がいつものように号令をかけて、みなもいつものように返す。


「上もない、下もない。我々は今日も平等であり、屋上が居場所であると誓います」


 残っているのは僕だけになった。

 先生がいなくなったあたりから焦りはじめ、僕も勇気を振り絞ったがさすが。

 クラス内テスト順位最下位保持者僕。...すってんころりん!


「彼女も友達もいて、赤点は回避してるし、そこそこなのにな」


 初めて知った。


 乾いた空は無人だった。

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