主要人物の殆どが伝説級の武器なのに、なんで私だけひのきの棒なんですか!?
あぱろう
第1話 プロローグ
キラキラした人生を謳歌する人達は物語の主人公達だ。
小さな頃、親の仕事でたまたま行ったお城での舞踏会。
王子様の婚約者を発表するための舞踏会で女の子達は皆着飾っていた。
貴族や王族は私にとって憧れの存在だったから、一瞬で私の心は奪われた。
でも自分は平民で、この招待客でもない。
ただお城に備品を運んだだけのモブキャラだ。
「よし、準備できた!」
そんな私は、人生の主人公達が通う学校、イクストラ学園に今日から通う事になった。
「シェリー、鞄は持った? 着替えは?」
「大丈夫だよお母さん」
「本当に!? 本当に大丈夫!?」
「もー、本当に大丈夫だって! 暫く会えないからってそんなに心配しないでよね!」
私ことシェリー・モルドレッドは今日から国内でもトップクラスの教育が施される、イクストラ学園に入学する。
この学園は貴族平民関係なしに優秀な人材が集まるエリート校。
卒業後の進路は、政府機関や大企業が約束されている。
でもこの国で力があって優秀な人物の殆どは王族か貴族、平民の割合は少ないのだ。
だから、若い平民達はこの学校に入って何としてでもいい職に就こうとしているのだ。
かく言う私もその1人。
この学校には特待生制度があり、優秀な成績で入学した平民は学費免除等お得なサービスが受けられる。
ちなみに私は受験をして普通に受かりました。
貧乏人で特待生入学したとかそういうのは無い。
普通に確実に頑張って努力した結果名門校に入学することが出来た。
そして、この学校は全寮制で24時間好きな時に勉強したり自分の力を高めたり、私たちが成長しやすい環境を提供してくれる。
だから、この家と暫くお別れしないとならない。
でもなぁ……そこまでしなくてもいいと思うんだけど……普通に家に帰りたい。
「おっすーシェリー! 今日から学校だね!」
「レイ! おはよ! 一緒に学校に行けて嬉しいよ!」
彼女はレイ・アルペジオ、私の幼馴染だ。
ずっと私達は一緒で今回も一緒に頑張って勉強した。
「いやぁ、どっちが落ちたらどうしようなんて思ったよ~」
「ほんとねー、あっそうそう!エイル様達もいるかな!?」
エイル様とはこの国の王子、エイル・ゴールドプラントのことである。
達と言ってるのは彼の友人、宰相の息子レン・ロジックと公爵家の息子スペンサー・ウィンド事だろう。
「一度でいいから生で見たかったんだよね! シェリーは見た事あるんでしょ!?」
「まぁ、仕事でたまに」
私の家は商店だ、色んな家から商品の注文があるので従業員と親とで配達も行ってる。
それでたまに親の仕事を手伝っているから貴族の家に行くことがあるのだ。
「でもなぁ……エイル様には婚約者のモルガナ様が居るんだもんなぁ……」
「モルガナ様……」
「知ってるの?」
モルガナ・ディアヌビス、ディアヌビス公爵家の長女だ。
とても美しい白い髪を持った美人だ。
小さな頃、舞踏会で見て一瞬で心を奪われた。
まじで可愛い。
「ただのファンです」
「なっ、なるほどね。でも悪い噂めっちゃ聞くよ? 中等部で侯爵家の子を脅したとか……」
「泥棒猫だからしかたないよ」
「おお、メアリー様に対して辛辣ぅ……」
メアリー・ノンシュレ厶、彼女はノンシュレ厶家に入り込んだ平民の子だ。
彼女の母はノンシュレ厶侯爵と結婚した、それでメアリーは貴族の仲間入り。
まぁ、よくあるシンデレラストーリー。
彼女ほど主人公に相応しい人間はいない。
イクストラ学園中等部で彼女はエイル様と親しくなったようで、メアリー様に釘を刺されてるという話を聞いている。
簡単に言えばヒロインに悪役が絡んでヒーローを取り合ってる関係だ、まるで小説さながらの恋愛模様だ。
「くっ、私のお姫様が負けヒロインだなんて! しかも! 最近まで私達と同じだったあの子がよ! 平民だったくせに触れちゃあいけない王族に触れたのよ!しかも私の推しから……婚約者を……やっぱ許さん!」
熱く語る私を異様な物を見る目で見つめて顔をひきつらせるレイ。
「あっ、ああうん。そうだね、理解した。そういうことよねうん。わかるわーそれ」
適当に頷くレイは咳払いをして腰に手を当てる。
「まっ、私達は卒業していい仕事につけることだけ考えましょ、普通の平民の私達が、王子達なんかに関わる事なんてないんだからさ」
「そうだね」
そう彼女達は平凡な私達とは関係ない。
私達は何も無く卒業していい職に就いて、楽しい人生を送ることが出来れば……
「シェリー! シェリー! 見て!」
「うっわぁ……でっかい」
お城のような美しい真っ白な建物、屋上の大きな鐘がリンゴンと鳴り響く。
ついにきちゃった、憧れのイクストラ学園。
これから私の学園生活が始まる!
「行こう! レイ!」
「あっ、ちょっと待って!」
私達は校門を駆け抜け集合場所である講堂へと向かった。
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