クリスマス会
クリスマス会当日。水木母さんの手料理が並ぶ。天音はケーキを持参した。
「はい、それじゃ後は若者でどうぞ。ゆっくりしていってね。」
「え?おばさん一緒に。ほらケーキだってホールですよ。」
「天音ちゃんならぺろりといけるでしょ。いいのよ。私も友達と約束あるんだわ。」と出かけていったのだった。幸太郎の母は息子と同じく優しい気の利く人であった。
テレビに動画サイトから高校のダンスサークルのチャンネルをつける。
再生回数1万回超えの動画が多数。どこぞの高校生のチャンネルにしては、なかなか見られている。
最新動画ラストに流れたのは
『新メンバー募集中!女子歓迎』と叫ぶイケメン集団であった。
「私、踊ろうかな」ポツリと呟いたのは天音である。何を思ったのかダイエット目的だろうか。
他愛もない会話が続く。
「天音さ、クリスピーと骨付きどっちが好き?」と勝太郎。
「ああ やっぱり骨付きかな 肉肉しいじゃん」
フライドチキンの話である。
「ねぇクリスマスぽい映画あるっけ」
と杏里が映画配信コンテンツをいじる。天音と勝太郎はコメディタッチな映画を押したが、杏里はラブロマンス一択であった。
しばらく静かに鑑賞する四人。幸太郎が立ち上がり電子レンジでポップコーンを作り出す。
パンッパンッと弾ける音が一分間ほど続く、香ばしい匂いが立ち込める中
「フガッフガッフガッ」
ん?ペットなど飼ってはいないはずだ。
それは満腹になりすぎてうたた寝をかます天音の鼻であった。
「あ 寝てる」
近寄り天音の鼻をつまむ幸太郎。
「ンガッ!?ふーはっ」
「ははははっ寝るなよ。いいとこだし」
「あちゃ血糖値上がり過ぎたかな睡魔にやられた」
と笑い合う二人。そこへ向けられた冷めた眼差しは杏里から放たれていた。
そんなことには気付かず「ポップコーンいるか」と天音の隣に座る幸太郎であった。
片割れは、ラブロマンスに釘付け、画面凝視であった。
映画が終わりそろそろ帰る時間である。
「送るよ」と幸太郎が言うも杏里は電車。天音は近い。
「私は近いから大丈夫っ。ほら、こーちゃん杏里送って」
なんとかキューピッド役は忘れていないようだ。
「お 分かった」
「じゃあさ しょうたろう君、天音を送ったら?」
「送るよーちょっと待ってションベンするわ」
先に出る二人を見送る天音
「メリクリ〜気をつけてねっ」
その迫力ある背中に似合わずちょっぴり寂しげな背中である。それをバチリと叩く勝太郎。
「お待たせ 行くぞ」
「いいのに、すぐそこだし」
「一応女子高生だろ?しょーたろが守りますよ〜」
「へっこのモテ男め」
「天音、まじでダンスサークル入る気?」
「ん、暇だし。ちょっとくらい青春したいなって」
「たまにしかないしな。俺も入れてもらおっかな〜」
勝太郎はメンバー基準クリアであろう。しかし天音はどうだろうか。
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