機械ラプトルとの交戦

 雄叫びをあげるなり二本の脚を繰り出して機械ラプトルが泉を飛び越えるのを、大剣を抜いたボギーが迎え撃つ。


「グーギュルル!!」


 頭上から機械ラプトルのうち一体が食らいつこうとするのを、ボギーが大剣で受け止めた。


「ぐっ!」


 しかし大剣に噛みついた機械ラプトルのパワーに圧されてるのか、ボギーは歯を食い縛ってこらえるので精一杯である。


「ボギー!」


 彼の名を呼んだ私が向かおうとするが、それよりも早くハンナが機械ラプトルの元に駆け込んだ。


「はっ!」


 ハンナが手にした拳銃での射撃に怯んだ機械ラプトルが、彼女へおもむろに無機質な眼を向ける。


「アタシも戦うよ、ボギー!」

「頼んだぜ、ハンナ!」


 ハンナに目配せしたボギーが、大剣で機械ラプトルを弾いた。


「ギュルルルルル……!」


 それぞれの武器を構えて臨戦態勢なボギーとハンナを、三体の機械ラプトルが唸り声をあげて睨み付ける。


 そんな二人に加勢へ動こうとすると、いつの間にか足元でうつ伏せになったカレンに呼び止められた。


「デューク、あんたはわたしたちの護衛をお願いっ」


 そう指示するカレンはスナイパーライフルを構えて狙いを定めているようである。


「ボクからも頼みます。デュークさんがいてくれたらとっても心強いです」

「ああ、分かった」


 上目遣いのウィルからのお願いに、私は思わずうなづいてしまった。


 どうやら彼女には保護欲をかきたてる何かを持っているかのようで。


 カレンとウィルのそばに陣取りつつ、私はボギーとハンナの戦いを見守ることにした。


「てやああ! この野郎!!」


 大剣をブンブンと振り回すボギーの気迫で、機械ラプトルたちは攻めあぐねている。


「はあっ! このっ!」


 その隙にハンナが的確に拳銃で援護射撃し、機械ラプトルにダメージを重ねていた。


 倍くらい大きな機械ラプトルを前にしても、二人はまるで引けをとっていない。


 これが彼女たちの実力なのか。


 さらに私のそばで控えていたカレンがダメ押しとばかりに狙撃をし、機械ラプトルのうち一体の脳天を撃ち抜いた。


「グギャッ!?」


 汚い断末魔と共に崩れ落ちる一体の機械ラプトルを前にして、残りの奴らは怖じ気づいたのか一歩後退する。


「へっ、意外と大したことないじゃねーかっ」

「これならアタシたちでやっつけられそうだね!」


 ボギーとハンナの二人が勝利を確信した次の瞬間、私は背後からの気配を感じ取った。


「危ない!」


 とっさに足元のカレンをかばった私に、別の機械ラプトルたちが飛びついてきた。


「「デューク(さん)!?」」


 カレンとウィルが目を見開く前で、私の身体に三体の機械ラプトルがしがみつき、鋭く尖った足の爪を突き立てる。


「ぐっ!」


 その瞬間機械の身体に迸る鋭い痛みで、私は一瞬意識が飛びそうになった。


「くそっ、離れろ!!」


 私は機械ラプトルを振り落とそうと巨体を激しく揺するが、奴らは足の爪を食い込ませて離れない。


 どうすれば……!


 ほぞを噛んだその時、いつの間にかハンナが私の前に駆けつけていた。


「ハンナ!」

「デューク、アタシを乗せて!」

「しかしハンナ、ボギーは大丈夫なのかい!?」

「あいつなら大丈夫だよ、ほらっ」


 ハンナが示した先では、ボギーが獅子奮迅とばかりに独りで機械ラプトルを相手してるのが見える。


「だからデューク、アタシの力も使って!」

「分かった」


 機械ラプトルに痛めつけられる苦痛をこらえつつ、私はハンナの前で頭を下げた。


「それじゃあ行っくよー!」


 ハンナが私の顔に触れた途端に開いたクリアオレンジのキャノピーから、ハンナが頭のコックピットに乗り込む。


 その瞬間、身体に力が迸るのを私は感じた。


 ハンナの操縦のもと、私は身体にしがみつく機械ラプトルを近くの木に叩きつける。


「グギャッ!?」


 ぐしゃっと身体が潰れた機械ラプトルが剥がれ落ちたところで、私は咆哮をあげた。


「ゴオオオオオオオオオオ!!」


 この気迫で飛び退いた機械ラプトルに、私は強靭な顎で食らいつく。


「ギギギギ!?」


 すると噛みついた機械ラプトルの首がまるで紙切れであるかのように、あっさりと噛みちぎってしまった。


『す、すごい……!』


 コックピット内で私の力に目を丸くするハンナだが、すぐさま次の操縦で残った機械ラプトルに足を振り下ろす。


「グギャッ!?」


 全体重をかけた踏みつけで無残に潰れる機械ラプトル。


『よーっし! 次はボギーを助けに向かうよ!』

「承知した!」


 ハンナの指示で私は続いてボギーが相手してる二体の機械ラプトルを標的に定めた。


 二本の強靭な脚で地面を蹴ると、あっという間に泉で交戦してる機械ラプトルに肉薄する。


「てやっ!」


 すぐさま頭突きで機械ラプトルの一体をはねあげ、もう一体の首根っこに噛みついた。


「でゅ、デューク……それにハンナまで!」


『お待たせー!』


 私が機械ラプトルの首を食いちぎったところで、ハンナがキャノピー越しに手を振る。


『さあ、まだやるの~?』


 地面に叩きつけられ機械ラプトルに拡声スピーカーでハンナが挑発すると、最後に残ったそいつは一目散に逃げていった。


『はい、アタシたちの大勝利~!!』

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