Z353  宙へ姫は帰還する

*>>ナユカ視点



 追尾ミサイルのロックオン警報は静まり、少しだけ機体の動きがなめらかになる。

 と言っても敵機を全て破壊した訳ではないし、後方からしっかり追跡されているので全速力で前に逃げている。


 ユキが後方に進路を塞ぐような弾幕を撒き散らしてるおかげなのか、敵機との距離は少し余裕ができてきていた。



「あれは…?」


「ん〜?…なにあれ?」



 ギビンくんのつぶやきに反応して前方を見てみれば、少しだけ人工物が見えてきた。衛星かな?



「こんな所に衛星が?」


「リアル側でもこんな所に人が住める大きさの衛星はないはずなんだけど〜…ゲームオブジェクトかな〜?」


「緑の光はあそこから出てますよね?」



 ヒイロさんの言った通り、私たちが目指してきた緑の光はどう見てもその人工物から発せられている。ということはここが目的地?


「あ!?あそこにノアが墜落してます!」


「ほんとだ」



 まだ人工物すら小さくて見にくいが、確かにあの形はノアだと思う。ノアはその人工物に不時着したのか。少し人工物を破壊しながら突き進んだ跡のような線も見える。

 あれ?ノアの周りになにか飛んでるような…。ほんとに遠くてまだ確かでは無いけどあれって…



「ノア!たぶん敵に襲われてる!」


「OK〜ならば助太刀だ〜」


「あそこに突っ込んでドックファイトですか?」


「皆さん。ありがとうございます」


「またか?」


「…」



 約1名。いや、1匹。返事がない。見ればウルドの腕の中で目を回していた。

 よし。どうしてそんなことになったのか、開幕見当もつかないが見なかったことにしよう!


 では私たちは今から先に後ろにいる敵機を倒しておかなくてはならない。


「ナユカ〜。ちょっとおててを貸して〜」



「はい」



 いったいなんで今この状況でユキと手を繋ぎゃなきゃ行けないのか分からないが、ユキが必要だと言うならそうなのだろう。少し不安定なので、ウルドの肩に右手を。ユキに左手を差し出す。


「よ〜し、ならナユカ。1回【月降翔姫「バンブーロケット」】のスキルと構成を思い浮かべて貰える〜?」


「うん?」



 【月降翔姫「バンブーロケット」】とは、私の技。

 竹に見立てた棒状にした弾幕を落とし、地面に刺さったあと〔光〕を放つ。そして地面から真上に吹き飛んだ竹が上空に打ち上がりそのままミサイルになって降り注ぐ弾幕だ。


  スキルは〔魔力〕〔止める〕〔減速〕〔伸ばす〕〔帰還〕〔設置〕〔光〕〔火〕〔火炎〕〔爆発〕〔打ち上げ〕〔緑〕〔効果音〕が使われている。あ、あと〔技名〕だね。


「お〜け〜。んじゃ〔遠隔設置〕〔魔法陣〕起点。魔力消費を倍に〜私のGPも加えて〜」


 あれ?


「んじゃ〜ナユカ〜。私のアイズと一緒に【合技 雪月双姫「バンブーロケット」】 って言ってね〜」


 合技?確かにそんなスキルは持ってた気がするけど。それってそんなに簡単に作れるもんなの?というか!私の技!今の一瞬で読み取ったの!?


「ギビン〜。そのまま直進。ナユカ行くよ〜。せーのっ」


「「【合技 雪月双姫せつげつそうき「バンブーロケット」】!!」」



 ユキと息を合わせて技を放つ。私は唱えるだけでユキが殆どを発動させている。




 戦闘機の後ろに展開された大きな〔魔法陣〕が出現。そこから竹を模した弾幕が無数に放出されていく。緑が多いけど。中には水色っぽいのも見えた。

 直進。本来なら下に落ちる弾幕だが宇宙空間に下の概念はない。そのまま私たちの進行方向とは逆に進んでいく。


 もちろん、敵機目掛けて。

 後方敵の半分はこれだけで撃破。私の〔飽和限界突破〕もあるのか弾幕密度が濃い。

 通り過ぎた弾幕は何もない空間で停止する。そして…



ピピピピピッ!!


 前方からロックオン警報。


「上に回避!」


「はい!」



 私たちは上に逃げる。直後。後ろで眩い発光。今度は放った弾幕が引かれるように逆走を開始。その時後方に炎の攻撃を撒き散らす。

 敵機は壊滅、これで後ろは綺麗になった。


 でも私の技はここで終わらない。


「〘加速〙」


 私の弾幕に〘加速〙を二重付与したユキ。私も!


「〘スーパーアクセル〙!!」



 カッ飛ぶように突き進む弾幕。そろそろ大きく見えてきた目的地周辺。余った弾幕でノア付近の敵機へ奇襲攻撃を仕掛ける。ついでにロックオンミサイルも木っ端微塵にできたようだ。



「ナユカ〜。タイミングよく爆発させてね〜」


「了解」



 このまま放置でもいいがそれだと敵機の奥で墜落しているノアへのダメージが未知数だ。ならばちょうどいいタイミングで爆発させなければならない。


 敵機の荒れ狂う地帯に弾幕が貫くように侵入する。

 ここだ!

 

「〘爆発〙」

「〘砕く〙〘硬化〙」



 爆発。緑の竹がぜ、水色の竹が砕け、爆風にあおられ敵機へつぶてのように襲いかかる。


「残った機体は僕が処理します!」



 やる気満々。ノリノリで操縦桿を握るギビンくんだがその必要はない。

 爆発で生じた爆煙が晴れたそこに、敵機は1機も存在しなかった。

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