F142 I declare war against you

*>>花恋カレン・ガーデン・メテアノス視点



17年前…






「もう…、猶予ゆうよもない。テビィ、準備はできてる?」


「お母様、何をするおつもりで?」


 私はそうテビィに呟いたお母様に問いかけた。



「花恋…。ごめんね。私たちは今…。この「家族」の危機にひんしているのはわかっているわよね?」


 何をそんな今更な。

 もちろん理解しているわ。この星が既に敗北に王手をかけられていることくらい。でもだからって弱腰で諦めたりなんかしない。


 もしも、「ソレ」が攻めてきたなら私は…私の「役目」を果たすわ!



「はい。もちろん、「家族」を守るために私も戦います」



 この時、私は「ソレ」に私の大事な「家族」を好き勝手されてなるものかと奮起ふんきしていた。


 だから…。という訳でわないのだけど。目の前に座るお母様が私を逃がす選択なんてするとは思ってもいなかった。




「花恋…。ゆっくり聞いてね」



 お母様はその「イス」から立ち上がり、ゆっくりと私の方へ歩み寄る。そうして、私の前に来ると、私のほおに触れながら微笑んでみせた。



 周りには他の人たちもいるのだが、そんなこと関係ないとばかりのスキンシップに私はつい恥ずかしくなって…。それでもお母様が満足するまではそのままであり続けたわ。


 いや、だってお母様とは仕事の関係上会いにくいから甘えたくもなるわよ?




 でも…



「あなたは、この「ガーデンプラント」の姫。代々受け継がれた「花の約束」をその身に宿やどしているわ。それは私も同じ」


「はい。私の「花」は余りいいイメージはありませんが…」


「そんなことはない。確かにあなたの力の源は「呪い」かもしれないけど、同じく「恋」の力でもある。きっと花恋が好きになった人に一途なのでしょうね?」



「未だにそのような方は現れていませんけど」



 だってー、恋愛できるような環境でもないしそんな余裕は今のこの星には無い。



「あなたの力は確かに強力で「ソレ」に唯一防がれることは無い。でも、もう…。この機会を逃すとこの星系は完全に包囲されるわ」


 何か、様子がおかしい。星系の外に出なくても戦えるのでは?


「私たちは最悪、そのまま終わってしまう可能性すらある。だから…。あなたを…。この星系から避難させます」


「な!?何をふざけたことを言ってるのです!!」


「本気ですよ。周りの者もそれで満場一致しました」


「う、嘘です!!」


「嘘ではありません。私たちがもし、潰えたとしても、あなたが他の星系に逃げ延びることが出来れば、また、「家族」をそこで繁栄させられる。「花の約束」を持った私たちの血は薄くはなれどついえはしない。それが唯一の希望なのです」



「そ、そんな…。そんなこと嫌です!!私はこの星に残り「家族」とともに戦い続けます!!戦い続ければいつかきっと、「ソレ」を追い返すことくらいはできるはずです!!」



 私は必死にお母様に進言しましたが、お母様はそれを良しとしません。


 私が必死にそううったえている中でも…まるで聖母のように微笑んで、私の頭をでるだけでした。



 それでも駄々だだをこねる私を見て、お母様は私を優しく抱きしめてくれます。願うことなら…。そのままずっと抱きしめて欲しかった。抱きしめていて欲しかった…





 …あれ?力が入らな…い?



「ごめんなさい。あなたに私の「力」を使いました。もう…。余り時間が無いのです。テビィ。支度しなさい」


『はい。すみません。姫様。どうかご無事で…』







「…い……や…。待っ…………て…!」






 これが、私と「家族」との最後の別れでした。









*







 目が覚めると、私はもう既にその星系の外に出ていました。宇宙船の外を見るとそこには大きな暗闇しかありません。

 私はもう自分がどこにいるかも分からず、くらい孤独の黒い空間をさまよい続けていました。


「御先祖様はこんな暗い空に…。何処どこにもっ!光はないでわありませんかっ!!」


 私は何も出来ず、その場で泣き崩れることしかできなかったのです。

 何分、何時間泣いていたのでしょうか?無限に溢れ出てくるように思えた涙も、さすがに限界が来たらしく私の目からは何も出なくなりました。

 その頃には、少しだけ落ち着きを取り戻した私ですが、何とかしてこの宇宙船を戻そうと試みました。


 私の能力は機械的なものなら全般自由自在に干渉できるものです。…ですが、私の能力を使ってもそれは出来ませんでした。


「な、なんで!?」


 この時、まだお母様の「力」のせいで本来私があつかえていた能力を引き出すことができないようになっていたのです。



 宇宙船は1度航路を決めたら変えられないように設定されているらしく。このままどこか分からない場所まで飛ばされ続けます。


 すでに帰る場所も見失いました。自分が今どこにいるのかさえ分かりません。


 独りでは、気が狂うかと思いましたが、そんなことはありませんでした。


『…か…。…花…ま。…花恋様!』


「この声っ!!トビィですかっ!?」


『はい。トビィです。どうやらテビィに高度なロックをかけられ、解除するまでに時間がかかりました。申し訳ありません』


「いえ、大丈夫ですよ…。でも、良かった。独りでは無かった…」



 私はこのことに心底ホッとしました。不幸中の幸いです。



『宇宙船のデータを解析したところ、この宇宙船と同時に何隻ものダミーと攻撃機が色んな方向に打ち上げられたようです』


 ッ!!私を逃がすのにそんな貴重な戦力を…




『何とか敵の勢力圏からは脱し、そのまま逃げ延びることができたようです。さらに、探ってみたところ…。菊花きっか様からの音声データが見つかりました』



 っ!!





「き、聞かせて頂戴」



『流します』


 そこから流れたのは、お母様が歌ったよく見知った歌でした。



 まず1りん この花に詩をえよう

 きっとたくさんの花が咲き そして美しい世界に 彩りを足すであろう



 1 それは赤い実をつける 野生の花

 生き物をき付ける 力 大きな果実「家族」となった ここにあるのは 小さな種 たくさんの未来と 詩の続きを 君に託そう 



 1輪 それは予言の花 絶望の予言

 集まった「家族」を枯らすと伝えた 力 今ではなく ここにあるのは 大きな平和 笑顔の先の 小さなおべべ 詩の続きを 君からもらおう



 1輪 それは願い事の花 希望の世代

 枯れた1輪と新たな「家族」 力 それらを輝きとして ここにあるのは 受け継がれし笑顔 叶う 今はまだ 詩の続きを 君へ伝えよう



 1輪 それは叶わぬ恋の花 清廉せいれんなる家

 見つめ続けた窓に 力 悲しみに負けず 生きてゆけ ここにあるのは 見えない物 叶え 次に繋がる 詩の続きを 君へ送ろう



 1輪 それは冷酷の花 無常な城

 囲われた蕾に 力 落ちる露の 暖かな空気を欲す ここにあるのは なんなのか 見えない気持ち 詩の続きを 君から教えて



 1輪 それは忍耐の花 毒を盛って

 自らを制す 力 赤い花びらに 次の季節を探す ここにあるのは 春の季節 続いてゆけ 私の「家族」 詩の続きを 君から受け継ぐ



 1輪 豊かな心を持つ花 暖かな気持ち

 周りをも巻き込む熱い 力 鳳凰ほうおうのような そんな私になれたかな? ここにあるのは 温もり 次の「家族」 詩の続きを 君と送ろう



 1輪 それは空を飛ぶ花 鳥のように 鳳凰のように 力 胸の膨らみは きっと気のせいではないのであろう ここにあるのは 大きな「世界」 次の話と 詩の続きを 君へゆずろう



 1輪 それは灯火の花 暗闇を照らす

 偽物の 力 間違った 諦められない空は 不器用な私 ここにあるのは 真実の願いと 次の光 詩の続きを 君に願おう



 1輪 それは修復の花 壊れた心を照らす

 真実の 力 甘い香り 母の笑顔と 不器用な願い ここにあるのは 「家族」の絆 あなたと一緒に 詩の続きを 君に渡そう



 1輪 それは貧欲な花 想像を見せる

 技術の 力 晴れた「世界」に 再び灯りをともそう ここにあるのは 綺麗な「家族」 これからの 詩の続きを 君に渡すよ


 1輪 それは枯れない愛の花 うるやかなる

 蓄えの 力 暖かな心に 見せる小さな棘さえ 愛ゆえに ここにあるのは 守りたい「家族」 そのための棘 詩の続きを 君に与えよう



 1輪 それは信託の花 甘えと別離するための 軽やかな 力 見つけたい この広い「世界」から ここにあるのは そんな気持ち 受け継がれたそんな意志を 詩の続きを 君に飛ばそう



 1輪 それは健康の花 穢れを知らぬ

 清楚な 力 大きな皮に 「家族」を包んで ここにあるのは そんな香り しなやかな枝 見よ 詩の続きを 君に落とそう



 1輪 それは元気いっぱいな花 心踊る 笑顔 無邪気な 力 様々な色に 「世界」を染めて はしゃぐ ここにあるのは そんな「家族」と 見つめる私 詩の続きを 君につなごう



 1輪 それは忠実な花 青い空

 何も無い 力 そんな花でも 「家族」はあった ここにあるのは 感謝の気持ち 幸せな時間 さあ 

詩の続きを 君にも渡そう



 1輪 それは清らかな花 信頼できるもの達からの 贈り物の 力 受け継がれた青と 新しき青の花弁 ここにあるのは 母なるめぐみ 詩の続きを 君に分けよう



 1輪 それは誇りの花 小さな心

 罪なき小さな 力 抗おう 善良なる「家族」のために ここにあるのは まっすぐな茎 「世界」へ示す 詩の続きを 君に願うよ』






 先祖代々受け継がれ、紡がれてきた「花輪ノ数ゑ唄」。

 この歌詞には先代それぞれの思い、意思、願いを唄い次の代の子に聞かせます。


 そして本来ならまだないはずの最後。続きが歌われました。





 『1輪 それは戦いを宣言した花 抗う意思と

戦う 力 守ろう 大切な「家族」と 「世界」のために ここにあるのは たくさんの意志 決意 詩の続きを 君と逃がすよ』




 そして最後に今まで、お母様が歌わなかった。自分の唄がえられていました。


 お母様らしい、そのまんまの唄です。








 …おかしいですね?無くなったはずだったのですが…。目の前が見えなくなってしまいました。













*











 あれから少しして、私たちの宇宙船はけたたましいサイレンを鳴らし始めました。



「トビィ!!何事ですか!?」


『不審船です!!?我々の星の船ではありません!』



 っ!?まさかもう追っ手が!?



 前方に見える宇宙船は目視できる範囲までやって来ました。私たちは何とか宇宙船を止めたいのですが、決められた航路を宇宙船は進んでいくままです。緊急時なんだから動けっ!!



 どんどん近ずいてくる宇宙船ですが、ある一定距離をとると、そのまま何もしてきませんでした。



「どういうこと?」



『別の星系の船でしょうか?「ソレ」では無いですね。あれはすぐに攻撃してきますから。ですが味方ではありません。警戒は解かないように』


「わかったわ」



 そのまましばらくしていると、向こうから通信が入りました。



『あ〜、えっと。私は太陽系から来た人間、勇人だ。そちらとの敵対する意思はない。安心して欲しい』



 何を言ってるのかさっぱりわかりませんでした。でも何となく、怒ってたりはしてなさそう?



「トビィ。こちらからも通信を飛ばせますか?」



『いけますよ』


「あ〜、えっと、あなたは誰?」


 そう送って見ました。


『返答感謝する。言語解析のためこのまま通信をしていただけないかな?』



 また、通信が帰って来ました。まだ何を言ってるのか分かりませんが、少しだけわかる部分がありました。もしかしてこちらの言葉を学習しているのでは無いのでしょうか?


 それなら適当に返事でも返していればいずれは会話ができそうな気がします。そうであって欲しい…





*




 しばらく、そんな感じで私は通信に返答していました。




『良し!これでわかるかな?』


 あ、ちゃんとこちらの言語を習得できたみたいです。


「あってますよ!」


『それは良かった。初めに言ったがもう一度自己紹介をしよう。私は太陽系から来た人間。名前を勇人という。出来ればそちらも教えていただけないかな?』


「私は…」


『待ってください!!ここはトビィが応答しましょう。むやみに情報を開示してはいけません』



 確かに、じゃあ任せるよ。


 こうして、私は勇人さんと出会いました。



 この広い宇宙で、まさか人に会えるとは思ってもいなかったのですが、後々聞くと勇人さんもそんなことを言っていました。私が初めての宇宙人だったわけですね。


 それからだいぶ時間がたち、トビィが「ソレ」とは全く関係ないという判断をしたのと向こうから会いたい。という要請があったため、に私たちは考えた末に勇人さん側に来ていただくことにしました。

 勇人さんはそれを承諾しょうだくして、私たちの宇宙船に到着。








 えっと。…正直に言いましょう。










 一目れです。












 イケメン。正しくイケメンでした!ママときめいちゃいました!



 私が独りときめいていることも知らずに、トビィと勇人さんは互いのことについてなにやら話していますが…


 なんだかんだあって、私は勇人さんと一緒に勇人さんの出身地。太陽系の惑星の内の1つ。地球に行くことになりました。



 が、ここは広い宇宙のど真ん中。どこかと言うと恒星と恒星の間の何も無い場所のようで、その太陽系に向かうまで時間がかかるようでした。また、最寄りの恒星も無いため。長距離テレポート(当時は限界あり)を設置しておくためのビーコンを建設することもできません。(ビーコンはオールト雲の中でしか設置できません)



 そこからは長い旅路が始まりました。私たちの乗っていた宇宙船は勇人さんによって航路固定を解除してもらい。そのまま勇人さんの宇宙船に仮設でドッキングさせて航行します。

 勇人さんの宇宙船の方がスピードが出るのと、私が一緒にいたかったからですね。




 ここからは私と勇人さんの馴れ初めと、イチャイチャなので飛ばしましょうか。那由花にはまだ速いのです!ウンウン(当時16歳)




 その太陽系に行くまでに、那由花が生まれます。到着のほとんど直前でしたね。



 勇人さんには関係を持つ前に私の境遇きょうぐうや身分などを全てを明かしています。それすらも関係ない。俺が守ると約束してくれた日は今でもとても鮮明に覚えています。詳細は内緒です。



 こうして私たちは地球に到着。子育てをしばらくして、那由花が大きくなってきたあとは那由花の知っている通り。私たちは故郷を取り返すべく、故郷を探す旅に出たのです。まぁ、ビーコンをその恒星ごとに設置して帰るので長くても1年で帰って来れます。



 そして今、私の故郷だろう。そうほぼ確定の恒星にたどり着いたのです。







第三話 「F」amily

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