V1.11 プレイヤーの死
アリオト艦長が帰ってきたことで、全員の視線はそちらに向く。
そのまま艦長はユキ達とは反対側のソファに座って私たちに向き合った。その表情は今後の方針を決めるのだから真剣そのものだ。
ピロン!
ん?ユキからメール?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユキ:ビュア。今から緊急生配信を開始して。題名は
「問う」
みんなは私に任せてね〜
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは…。何かユキの邪魔だけしないようにしないとね。
「まずはこちらから確認したいことがある。そちらへの回答はその後でいいだろうか?」
「いいよ~」
ユキが答え、アリオト艦長は真面目な態度のままユキを見つめる。両者に流れる見えない緊張の糸がピンと張り。この場で何か重要な未来の選択が…。そんな雰囲気さえ感じられた。
「今回、我々がこの星系に来たことで、ここに住んでいたもの達の生活を壊してしまった。我々は被害者であるが、それと同時にそなた達にとっては加害者である。なのになぜ…、我々にその責任を取らせようとしない?むしろ協力的であろうとしてくれているのだ?」
「そもそも、君たちが来たことで起きた変化なんて、私たちにしてみればそんなに変化だと思って無い…。…とまでは言わないよ~。でもね?常日頃から私たちは私達同士で戦ってたし、例え死んだとしてもそれは本当の「死」とは限らないんだ~。どちらかが負けて、消えてしまってもすぐに違う場所で生き返る…。そんな生き物だって思ってくれたらいいかな」
ユキが言っているのは「プレイヤー」という生き物について。例えHPがなくなりデスしようとも、それは現実の自分の「死」とは違う。自分が設定したセーブポイントで再びプレイすることができる。
私たちはこのゲームをプレイしているプレイヤー。そんな生き物である。
ってことを伝えたいんだと思う。でもゲームのキャラクターにそれって通じるのかな?
「そ、それは死なない…。ということか!?」
「いや、死なないわけじゃないよ~…。私たちのことを私たち自身が「プレイヤー」と呼んでいる。そのプレイヤーはこの世界に現れたり消えたりを繰り返すんだ〜。新しくプレイヤーが現れたり、逆に元々いたプレイヤーがある日から突然現れなくなったり…。プレイヤーの「死」とは、もう二度とこの世界に現れなくなった時なんだ~。分かる?」
ゲームを始めた時が誕生であり。
ゲームをしなくなった時がプレイヤーの死。
そのタイミングは人それぞれで、予告無しに居なくなる。それは現実側の死であったり、このゲームに飽きてしまったり。
様々な死因がある。ただ、この世界にいる間は死なない。それがプレイヤーだ。
「我々とは色々と違うのだな…。だからあまりこの土地の人間…。プレイヤーだったな。プレイヤーには被害を受けたと思っている人は限りなく少ない…。と言うことか?」
「私たちはそれぞれ、考え方も感じ方も全然違う。だから一概に全てのプレイヤーがあなたの味方とは言えない。でも味方になりたいと思っているプレイヤーは多いと思うよ~。…さて、回答としてはどうかな~?」
ユキの言った。「プレイヤー」。これをアリオト艦長はどう受け取るのか。この
しばらく考え、結論が出たのかアリオト艦長が再びユキを。私たち「プレイヤー」を
「わかった。こちらからの情報を全てそなた達に伝えよう。我々ももう帰る故郷すらないかもしれないのだ…一緒に…。協力して欲しい」
「わかった~。私たちはそちらにスキルと、住む場所を与える。でも、「協力」じゃない。「共生」していきたいと私は考えているよ~」
「?!…。それは、プレイヤーも巻き込んでしまうぞ!?」
「いいよ~。私たちプレイヤーは問題ない」
「だな」
「うん!!」
「ですわ!」
「いいぜ!」
『俺は賛成!』
『わたしも!』
『ノ!』
『ん』
『楽しそうだな』
『第2のアインズみたいなの作るのもいいな!』
『大工とかのスキル持ってる人ギルド作るぞ!』
『まずは闘技場周辺のセーフティエリアから街でも』
『いいねー!!!』
『やるよ!!』
『プレイヤーは自由だからな!』
『私は〔料理〕や〔農業〕なんかで食料関係かな?』
『ワイは〔漁〕ですわー』
『モンスター駆逐してきマース』
etc.
「コメントも賛成多数です!」
ユキがこっそりメールでビュアさんに指示した生配信。そこでは今の内容が全部映し出されていた。
それを見ていた「プレイヤー」の数は計り知れない。
後に、「問う。プレイヤーと来訪者」と言われるこの動画はこの時様々な人間に拡散され、どんどん世界中に広がっていく。
今ここに、「プレイヤー」と、「来訪者」が歩み寄り、「協力」の2文字を「共生」へ。
意図せずに昇華させたこの時。
〖ワールドクエスト「来訪者」がクリアされました〗
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ワールドクエスト】「来訪者」:クリア
「来訪者」を救い。協力関係を構築する。その後■■■を倒し、彼らを新たな星へ送り出す。
勝利条件 「来訪者」の旅立ち。or帰郷。
敗北条件 各惑星。衛星の敗北。来訪者の全滅
クリア状況:測定不能。
マザーへ報告。
回答。
ゲームシナリオの破棄を開始。
ゲームシナリオの再構築を開始。
「協力」から「共生」へ。
ワールドクエスト「???の??」を破棄。
ワールドクエスト「共生社会の構築」を作成。
勝利報酬:???、???、???、???。
を破棄。
報酬変更→「共生関係構築」
備考:彼らに決して屈してはならない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ゲームはまた、予想外の進路をとることとなるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます