V1.07.1  とある少年の憧れ。その世界に焦がれ、踏み出した一歩は辛く険しくとも、いつかこの物語に出会えると信じて。

いつもと違う感じのお話です。


*>>とある少年視点




 いつも自宅でその世界にあこがれていた。


 友達と語ったこともあるし、ここには無い「それ」にとてもやんだりもした。

 なぜ自分は地球の生まれでは無いのだろう?地球じゃなくても良い。火星や月でも良かった。でも僕が今いる場所は木星の重力圏の中。人工的に作られたその巨大な星である。


 人類ははるか昔に宇宙進出を果たし、太陽系の至る場所に、散らばるようにして住んでいる。そんな現代でも技術というものは日々進化していく。

 その進化が人を幸せにすることももちろんあるが、人を幾度となく窮地きゅうちおちいらせたりもした。


 そんな技術進歩の中でも、ほんの小さな一歩。でも僕にとってそれはとてつもない重要な案件なのだ。










「うそッ!?」


 今僕が見ているフォログラムには、「RBG」の情報が書かれていたのである。そこのひとつに。


 RBGサービスエリアの拡大。


 という文面を見つけたのだ。現在RBGのサービス開始から現在まで。RBGのサービスエリアは太陽系の中で、金星から火星までの間でしか行われていなかった。

 数あるゲームの中でもサービスエリアが広いことでも有名なRBGでも、さすがに音声や映像データの送信はある程度のズレが生じるため、同一サーバーでのプレイは不可能と言われていたのである。


 これについては、前々からサーバーを新しく設けて、別々でいいからサービスエリアを広げて欲しいと言う声が多く寄せられていた。僕もその1人だ。


 しかし、そこに書かれていたのは。

 今プレイできるエリアをさらに広げると書かれている。これの意味するところはひとつの巨大な空間で、常時ARを途切れることなくゲームとして体験できるということ。つまり、同一サーバーで遊べるようになるということ!!


 技術進歩バンザイである。こんなことが無遅延でできるようになるとは。


 瞬く間にそれは、今までプレイできないでいたエリアの人達の間でひろがっていった。


 僕もその時は嬉しかったし、早くプレイしたいが一心で、ゲームについての予習や動画投稿されているものを片っ端からあさったりもした。


 心を握り潰すかのようなドキドキとワクワク。それはサービス拡大の日が近づくにつれ、どんどん大きくなっていく。


(まだかな!?まだなのかな!?)


 傍から見れば不審者極まりない。唯一の救いは、周りの人にもそんな様子が伺えたことか。

 




 それからどんどん月日がたち、僕は前々から好きだった白雪姫と呼ばれているプレイヤーのバトル映像を見ていた。

 今日は久々に白雪姫が闘技場に現れたと情報が出回っており、調べてみれば誰が投稿したかわからないが、その時の動画が投稿されているのを見てうれしくなる。


「今日は珍しくランク戦だ…」


 僕の憧れである彼女は他のプレイヤーとは違い。どことなく攻撃が美しく。その名に恥じない「白雪姫」を彷彿ほうふつさせる立ち振る舞いが際立つ。


 この時、いつも一人単独行動を好んでいた白雪姫が、今日に限ってフレンド限定席に誰かを招待しているのに気づいた。


 あの子はなんだろう?友達かな?




 そんなこともあって、白雪姫と一緒に彼女について少し興味を抱いた者も多かった。僕もその1人。


 そうして、白雪姫と話題の彼女「ナユカ」について、少し他のプレイヤーの動画を見たりしているうちに、すっかりナユカちゃんも僕の憧れの象徴になっていく。いいなー!はやくRBGしたいな!!


 サービスエリアが拡大してプレイできるようになったら、一気に活躍して。それこそナユカちゃんみたいに初心者ダッシュを決めてみたい。







 僕は今、とてもキラキラした目をしているのではないだろうか?第三回闘技大会の生放送を見ている。会場チャンネルはデュオの白雪姫とナユカちゃんの試合だ。そしてそれは、美しい弾幕を僕に魅せてくれる。


 白雪姫が雪女になっちゃったのはびっくりしたけど、ナユカちゃんと一緒に作り上げる弾幕はキレイの一言につきる。あんな感じに弾幕を張ってみたいなぁー。


 そしてサービス開始はもうすぐ!!!もう待ちきれない!あと数日だと言うのに、僕は期待で夜も寝れてない!


 いや、実際は瞬きしたら朝でした。たぶんぐっすり寝てるね。




*




 これから僕はRBGの世界に飛び込む。それはドキドキとワクワク。革命が起きたせいでログインできる時間が遅くなっちゃったけど、何とかもだえながら今!ついに!




『 Reality barrage Gamers へようこそ!』




 視界が開けると何も無い部屋のような場所に立っていた。よくあるやつね。


『ここではReality barrage Gamers 通称RBGを始めるに当たり基本的な設定と仕様を説明させていただきます』


 そして目の前に立っているのは、メイド。おー。じゃないじゃない!!


 アバターや少し他の設定をしてから次は。



『では最後に名前を決めてください。ただし他の人に不快感を与える名前はできません』



 名前をつける。ついに憧れの世界に飛び込む第1歩。そんな思いからつけた名前は。



アバター名:ビギン



 そうして飛び込んだ僕に待っていたのは…、なんか違うゲームになりつつあるRBGの世界であった。




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