060:予兆
ということで、本日は木曜日。当初予定していた……というか、襲撃されるかもしれない週末が近付いてきている。
三沢さんからの追加連絡によれば、牧野興産は何人かのその道のプロを雇ったらしい。
殺し、偵察、狙撃……三沢さんにハッキリ判ったのはそれくらいで、他にも何人か怪しい人物が組関係の事務所に出入りするようになった様だ。
凄いな、やはり。普通なら手に入らないはずの情報が三沢さんとこに筒抜けじゃないか。
なんとなくだけど……今日とか来そうな気がする。まあ、それだけの人材を雇い入れたなら、まずは調査だよね。普通。だけど、あの手の人達のやり方は強引だとも聞くしな……。
疑わしきは問答無用で攻め込んでくる可能性があるからね。それはそれで良いんだけど。
実は。昨日から現実世界で時間を進める際に【気配】のスキルを十全に発動させて、自宅周辺の怪しいヤツラのチェックを行っている。探知し始めた時からそこそこ引っかかっていたのだが、今日の朝からは数名、確実に怪しいのが見え隠れするのだ。
判りやす。
だが、侮れないのは。そういう判りやすいチンピラから離れて一人……薄いながら悪意を抱いたヤツ……がいる。
様子見……そして、ヤツが本命ってところだろうか? まあ、とりあえず、気付いていないふりをして、会社へ向かう。
当然の様に……チンピラたち(格好もそのものズバリだった)が俺に合わせて動き始めた。まあ、先読みできるので、絶対に待ち伏せされるような道を使わないし、前後で挟まれたりもしない。
普通に会社に出社し、仕事をして、家に帰る。
いつもなら即ダンジョン世界へ向かう所だけど、さすがにここまで悪意が繋がり続けているとそういう気分にならないな。
向こうに行ってしまうと、時間経過で「何をしていたか」があやふやになるのが怖いし。
きりが良いところで「魔術士」をレベル10にしたかったんだけどな。
「まあ、いいか。思っていた以上に強化出来たし」
三沢:緊急連絡です。本日、対象に襲撃がありました。若島様、松山様、最上様の御三方は無事です。森下様のご依頼通り、対象に気付かれずに処理致しました。ですが、当方にも若干の被害が出る程度には戦力を整えている様です。
三沢:一名確保出来ましたので尋問した結果、本命は村野様の襲撃なのは間違い無いようです。拉致監禁を計画していることが明らかになりました。多分、殺害前提な行動でしょう。再度、しつこいようですが。各種手配は必要でしょうか? 今であれば対応間に合います。
村野:情報ありがとうございます。三人の警護ありがとうございました。引き続き警護お願いします。さらに……できる範囲で問題ありませんので、森下社長及び、株式会社ファーベル周辺のトラブル回避、警護強化をお願い致します。再度のご心配感謝致しますが、こちらは結構です。
三沢さんから連絡が入った。どういう構成かは判らないが、三人が襲われ「そう」になった様だ。それを事前に防いでくれたのだろう。
日本でそれをするのは……非常に困難だったと思う。なにせ、三沢さんたちお得意の銃器の使用が不可能なのだから。って使って無いよね? 使ったのかな? サイレンサー付きならいけるのかな?
まあ、彼の部下レベルの人達に被害が出ているってことは、敵もタダのザコじゃない。質も数もそれなりってことだろう。
三沢:了解しました。ただ……既に、牧野興産は今回の件が、村野様の手によるものという確信を得ている様です。かなり強引な手段を取ってくる可能性も高いかと。ご注意を。
ありがたい。というか、まあ、そうだよね。あそこにいたやつら……は全員殺してはいない。トドメを刺しそうになったけれど、寸前で留まった。日常生活に不具合が出るくらいの障害を負った可能性が高いけど。
日頃、モンスター相手に戦っているからね。彼らはどうにも「生き汚い」。必死……とでも言おうか。なので、確実に息の根を止める必要がある。
例え足を失って倒れたとしても、追い打ちで蹴りを入れ、さらに首を叩き落として、身体が分解され消え去るまで安心出来ない。
チンピラ以下とはいえ、あれだけ数がいれば、あそこで何が起こったをそれなりに報告できる者が数名……いてもおかしくないハズだ。
って……うーん。手抜かりだよね。俺。少々怒りで我を忘れてやってしまった感じだよなぁ。とにかく行き当たりばったりだったしなぁ。
せめて……顔を完全に隠して突っ込めばよかった。あいつら銀行強盗風のフェイスマスクしてたんだから、アレを借りて被ればよかったのに。
監視カメラを全部ツブした時点で、警察沙汰には出来ないだろう……と思っていたのは、本当に甘い。あまあまだ。
彼らのような非合法な暴力集団には関係ないよね。そりゃ。
で。松山さんは名前バレしてたんだから、そこからこないだの銃乱射事件繋がり、さらに身長や体格なんかから、自分にたどり着くのも当然だもんな。
ああ、そうか。魔物なら全部殺してたからなぁ。あっちの世界であれば、始末してしまえば何一つ煩わしいことはない。なんか、そんなノリが身に付いている気がする。いかんいかん。
そんな自分なりの言い訳を考えていたら、お客さんが動き出した様だ。時間は……既に明けて、深夜1時。チンピラ集団……十名がうちに仕掛けてくるらしい。
あの一名はまだ様子見か……。
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