第53話・冒険者の知恵とルームへの収穫

「さて、今度はフォレストウルフの群れだね。こんな時は煙玉だよ。さっき温泉近くに落ちてた硫黄と臭い草を混ぜ合わせた玉に火を着けて投げると……」


「キャイ~ン!キャイ~ン!」


「ほらね。鼻の良いモンスターはイチコロだよ♪そこを弓矢で狙って……射つ!」


ビュンッ!トス!「ギャン!?」


「これで一丁上がり!次々行くよー!」


ビュンッ!ビュンッ!トストス!「ギャイン!」「ギャン!?」


 冒険者達は出会い頭にモンスターを狩り、森の帰り道の木々の枝を伐りつつ周りの道を整備しながらも、素材をどんどん集めてはアリシアに渡してくる。


 アリシアはほぼほぼ何もせずに冒険者達から様々な知識を教えて貰いつつ、最後尾を女冒険者達に囲まれて進んでいた。


 何故か後ろから着いて来てしまった好奇心旺盛なカピーや繁殖が容易なプニプニバニーやブラックホーンピッグなどの動物達をインベントリ内のルームに収納しつつ、森を伐採し、モンスターを狩りつつ、なんだかんだしながら、ずんずんエレノの町に向かって進んで行く様はまるで軍隊アリのようですが、一般人の枠を超えた冒険者達からすれば楽な仕事のようだったのは笑うしかないです。


 アリシアが見つけた温泉からの帰り、冒険者達が素早く倒すホーンラビットやフォレストウルフ、数十匹に及ぶマッドベア、ゴブリンなどの大量の素材に死体、果ては大量の薪に薬草や上薬草、特上薬草にハーブ類や毒消し草などの状態回復素材に珍しい食材などを手に入れました。


 インベントリのルー厶内にはモコモコシープが群れで三十六匹、プニプニバニーが六十二匹、ブラックホーンピックがニ十匹、カピーがニ十匹入り美味しい葉野菜が大量に繁り、大量の枯草や野苺の低木が六十株以上繁り、アイテムボックスには木の実が一万に届くほど入手されます。


 アリシアはモンスター知識、動物知識、素材知識、アイテム知識などを冒険者達に習って習得していきました。


 良くも悪くもこれが冒険なんだろうな……的な考えを持ちつつ、アイオス率いるブルーシールドのクラン加入冒険者72名の凄まじい素材集めとモンスターの狩り方を見ながらエレノの町の東門近くに冒険者の足で一時間と少しで到着します。


 エレノの町と大亀の秘湯は意外と近くに有ったようですが、あくまでも冒険者基準……そこから更に30分経った頃にエレノの町の東門の前に到着しました。


 東門の前は、未だにエルダーゴブリンジェネラル戦の跡が色濃く残ってはいるものの平和そのものなのですが、いつもは開いている東門は兵士が警戒しており、門は固く閉じられています。


「おーっす!門を開けてくれぃ!」


「うん?なんだブルーシールドクランのアイオス達か。指名手配中のマレノ商会の傭兵連中が攻めて来たかと思ったぞー!」


「ガハハハハハ、そんな事有るかよ!あんな腰抜け共がエレノの衛兵を相手にして勝てるわけ有るまい?ちゃっちゃと門を開けてくれや!」


「はいよ!おい、直ぐに門を開けてやんな!」


ガチャガチャ……ガチャン!ギギギギギギギ……


「おう!早く中に入んな!また閉めるからよ」


「なんだよ?まだ警戒してんのか?エルダーゴブリンジェネラルの死体のおかげでモンスターもエレノには近寄るまい?何か問題有るのか?」


「ああ、マレノ商会と傭兵連中の他に黒狼団の連中もたまに来るんだよ!」


「へぇー、あのショボい連中、エルダーゴブリンジェネラルに殺られてなかったのか?」


「ああ、ぴんぴんしてるよ。この前も呑気に極上の密造酒の樽を台車に積んで町に入って来やがったわ」


「あー、相変わらずショボい連中だな……」


「まあ、密造酒って言っても売却時の税金はしっかり払ってるし、商人からの通行料云々はちゃんと商人を護衛して町まで安全に送って来るからな。ブックも赤無しで捕まえる理由が全くといって見当たらん。赤狼団と違って人畜無害なのが逆に厄介だよ。町に住めよ町に!」


「ふむふむ、黒狼団は人畜無害なんですねー」


《紛らわしい奴らだな》


「まあ、嬢ちゃんみたいな女の子がゴブリンに拐われてもいかんから一応の注意はしとくが……少し前に貴族の婦人が奴隷を二人連れて外に遊びに行っちまって帰って来ん。何事も無ければ良いんだがな……」


「おう、ほんじゃ俺等はギルドに用が有るから行くぜ!暇ならポンチョの酒場で宴会してるから呑みに来いよ!もうすぐ交代だろ?奢ってやっから。じゃあな!」


「おう!後でな!」


 アイオス達が東門をくぐって町中に入って来ると、まるで盗賊団の襲撃のような威圧感が有り、その間に挟まる形で冒険者達と歩くアリシアは、さながら何処かで誘拐されて奴隷商に売られていく少女のように見えるのは不思議です。


 しかし、アイオス率いるブルーシールドは地域に根付いたクランなので、町民や衛兵を含めて通報したりする人間は、ほぼほぼ居ません。


 ギルドに報告する筈が、わいわいがやがやポンチョの酒場に入って行くアイオス達と、かたや疲れた中年サラリーマンのようにギルドに入って行くジャッシュ達の様子に釈然としないものを感じつつ、アリシアもジャッシュの後ろに着いて行きました。


「お帰りなさいませアリシア様。ご無事で何よりでございます」


「はい、ヘルバイタートータスもしっかり倒して来ましたよ♪」


《倒した……うーん、倒したのかアレ》


「えーと、アリシア様お一人で討伐成されたのでしょうか?」


「あー、そうっすね。俺っち等が合流した時は温泉に居たっすよ」


《亀を倒したら温泉が有ったんだよな…》


「温泉!?エレノの近くに温泉が有ったのですか?」


「それを説明すると長くなるんすけど……ダンジョンも見つけちゃったりしたんすよねー」


「ダンジョン!?またダンジョンが見つかったんでしょうか?マレノ商会ダンジョンの他にですよね?」


「そうっすね。俺っち等は大亀の秘湯ダンジョンって命名したっすよ。やっぱ報告書要りますよね?」








今後も頑張って更新していきますので、ここまで読んで面白い!続きが気になると思っていただけたら、小説のフォローや下の↓♥、レビュー★★★などお願いします!




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