虚~ホロウ~Project 虚無の始まり[新編版]
虚無~うつな~
プロローグ
気が付くと、何もない白い空間にいた。見ているだけで気が遠くなっていく。ふと足元を見ていると自分の体が見えない。まるで自分がこの白に溶けていくような感覚だ。そんな虚ろな気持ちの中、自分の心が無くなっていくような不思議な虚無感を感じ、意識が消えていった。
一人の男がショッピングモールのベンチに座っていた。
「お兄ちゃん!」
一人の少女が男に声をかける。
「何だ?そんなに急いで。」
「こっちに来て!」
服を引っ張られながら着いた先は衣服店だった。
「私ってどんなのが似合うと思う?」
少女はそう聞いてきた。
「未離が喜ぶならどんなものでも文句は言わないぞ。」
そう言うと未離は頬を膨らませて軽くたたいてきた。
「お兄ちゃんはいつもそうなんだから!自分は見た目なんか気にしないだろうけど、私だって立派な女の子なんだからね!ちょっとは…その、気にしてよね。」
未離は腕を組んでそっぽを向いた。
「はぁ、分かったよ。今度こそはきちんとお前を見てやる。ほら、だから機嫌を直してくれ。」
「まぁ、いいけど。お兄ちゃんはいつもそう言って…」
その瞬間信じられないことが起こった。未離の体が徐々に薄くなっていった。
「お兄ちゃん!」
未離はこちらに手を伸ばす。
「未離!」
そう叫んで手を伸ばしたが、彼女はもうそこにはいなかった。
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