5ー46

 今年の夏公開の、時代劇の主題歌の依頼を2年前にもらい、時代劇だし、和楽器で演奏してみようぜって俺の提案で、それぞれ和楽器を習い始めて2年ちょっと。

ついに、やっとと言う感じでレコーディングにこぎつけた。

俺は、琴。

大輝は、和太鼓と鼓。

悠弥が、尺八。

瞬が、三味線。

龍聖も、歌っていない間奏部分で、横笛をやる。

それぞれ、プロの演奏家さんにレッスンしてもらっていた。

ツアー中だけど、今は関東近郊だったから、今日はスタジオでレコーディング。

3日後に、MVを撮る予定。



鏡花水月 ~君 想いて~


流るる雲のように

時は移ろい

川の流れの様に

とどまることはない


うららかな青空に

薄紅 舞い散れど

ほのかな薫り残し

去りゆけば

在りし日 想い

忘れえぬ


陽だまりの如き

穏やかな温かさ

すべてを優しく包み込み

淡き光 途切れようとも

照らされし あの温もり

決して忘れえぬ


鏡の中の花のように

水面に浮かぶ月のように

近くに見えても

決して手に入れることは出来ない

鏡花水月


君を想いし 我が心

捕らわれ 奪われようとも

君を想いし 我が心

遠ざかり 会えずとも

いつまでも 消え得ぬ


桜の回廊 散りゆくとも

我が心の花はいつまでも

散ることなし

我が心の中で

咲き続けよう

いつ いずこにあろうとも



歌詞も、短歌みたいな、和歌みたいな感じをイメージして書いてみた。

まず全員で演奏し、その後1人1人 楽器毎にレコーディングした。

それをヘッドフォンで聴きながら、俺と、瞬でコーラスを入れた。

音を聴いて、思ったのは、悠弥の尺八が すげーいい!ってこと。

弦楽器にはない、“ ゆらぎ ” が、心地良く耳に入る。

それと、龍聖の横笛もいい!

最初、瞬が横笛をやった方がいいんじゃないか?って、みんなで話した。

瞬は、フルートが吹けるから、似た感じで簡単に出来るんじゃないかって。

だけど、瞬が三味線をやりたいって希望したから、じゃ、龍聖やってみる?なんて軽く決めた。

龍聖は、ムズいムズいとよく言っていたけど、音を聴いた限り、完ぺきに仕上げてきたなと思った。

最後に、龍聖のボーカルレコーディングをして終了した。

丸一日 疲れたけど、すごく良い物が出来たって自信を持って言える。

和楽器を使うことは、時代劇の映画の為の企画モノだったけど、普段使っている楽器でのロックの中に、ピンポイントで和楽器を入れてみたりするのも面白そうだな。

俺たち11年目だけど、まだまだ、やれること、やりたいことがいっぱいだ。

毎日が楽しいな。



 横浜でのライブをはさんで、3日後。

今日は、MVの撮影で六本木のスタジオ。

セットを組んでと、CGバック部分での撮影とで、ロケとかは なしで、ここで総てを撮るそうだ。

畳敷きの和室と言う感じのセット。

ふすまの前に、屏風が立てられている。

なんか、凄い大きい。

虎と鳳凰と、松と梅?桜かな?


とりあえず、衣装に着替えてくださいと言われて控え室へ行った。

衣装は、ガッツリ本格的な着物。

ってゆうか、俺 初めて着物 着るな~。

ハーフだし、七五三とかもやってないから 着たことなかった。

スタイリストの三崎さんの指示で、ちょっと年配のおじさんおばさんが1人ずつついてくれて、俺らの着付けをしてくれた。

俺の着付けをしてくれたのは、だいぶ年配のおばあちゃんって感じな人。

お兄さん、着物 似合うね~って言ってくれた。

似合ってるのか?わかんないけど、気分はあがった。


「うっわーー!!龍聖!カッケーな!!」

「いや、桂吾もカッコイイよ!!」

龍聖はタッパもあるし、本当にキリッとしてカッコよかった。

「何年も着てないから久々だけど、子供の頃は

しょっちゅう着物着て、いろいろ儀式とか行事とかあったから、わりと着物は着慣れてるよ」

“櫻井家”のあるあるか。


馬子にも衣装ってやつで、みんなそれなりに格好良く着付けしてもらった。


セットの和室に入って、楽器が置かれている場所にそれぞれスタンバイした。

俺は、琴を前に正座した。

みんなそれぞれの位置にスタンバイし、監督さんの合図で俺の琴から演奏し始めた。

全体を撮るカメラ、1人1人を撮るカメラで一気に撮影した。

それを確認してもらい、演奏部分は一発OKだった。


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