5ー21

 この年、8枚目のアルバムを出した。

デビュー以来、コンスタントに毎年1枚アルバムを出している。

一昨年から、スタジアムツアーを検討していたけど、いろいろと条件があわず、今年日産スタジアムで単発のライブをすることになった。

日産スタジアムのキャパは軽く7万人。

ちょっと、7万という数字に、想像が追いつかない。

今までのツアーは、ホールが大半で、アリーナクラスもやってきたけど、今までで1番大きな箱は俺らの地元 長野のエムウェーブで、キャパは2万人。

武道館が1万人、ガイシホールも1万人、

幕張メッセの9ー11で15000人、

大阪城ホール16000人、横浜アリーナ17000人。

それと比較しても、7万という収容人数はすごい。

それこそ、音響とか、ステージの設営とかどうやるんだろう?って心配になったが、ルピアーノとしては、今までも他のバンドで何度も日産スタジアムでライブをやってきていて実績豊富らしく、今のRealなら なんの問題もないと言ってもらえた。

マジで、ビビってんのは、俺らだけみたい。

日産スタジアムは、ワールドカップにも使われた場所。

俺は、あんまサッカーには興味なくて、スタジアムって言われてもピンときていなかった。

基本、サッカーをやる場所なのか~ってくらい。

実際にスタジアムに行って、観客席に座ってみた。

広い。

すげー広いなぁ!!

ここでライブをするのか~!!

普段のライブでは、Realはサポートを全く入れていない。

コーラスもメンバーでやるようになったし。

だけど、監修に入ってもらうディレクターさんに、今回のライブでは、ギターが常に2人は必要と言われた。

曲によって、俺と瞬で部分的にダブルギターをしたり、途中でピアノへ移動したりって感じで普段やっているが、ステージも広いし、それではダメだと。

それで、初めてサポートを入れることになった。

みんなで相談して、お願いしたのは、Ray−zarのギタリスト陸斗とキーボードの虎太朗。

2人は快く引き受けてくれた。

Ray−zarもライブツアーを廻っていたりして忙しい中、Realの曲を練習してもらって、リハに付き合ってもらうのは申し訳なかったけど。

「俺ら、1個下だから、Realパイセンを参考にさせてもらって、俺らもスタジアムでライブする時に活かすんで!とりあえず、敵情視察ってやつですよ!」

と陸斗は笑った。

「また、Realと一緒のステージに立てるのマジで嬉しい!!」

と、虎太朗も笑った。

「知らない奴を入れんのはキツイな~って思ってたから、2人が受けてくれてマジで助かるわ!!ほんと、忙しい中 申し訳ないけど、宜しくお願いします!!」

と大輝が頭を下げた。

大輝は、リーダーとして、本当にしっかりしている。ただのヤンキーじゃないって。


虎太朗が入ってくれることで、ピアノを虎太朗に任せて、俺と瞬と陸斗でギターを厚く三本にすることもできる。

レコーディングは俺と、瞬でパート別に録って、バイオリン、コントラバス、フルート、ギター、ピアノを重ねた楽曲も、今まででライブでは演奏することができなかったけど、陸斗と虎太朗にギター、ピアノをやってもらえば、可能になる。

やりたい曲がいっぱいで選曲に悩みそう。

せっかくの広い会場だし、静かに聴く曲じゃなくて、ノリノリのバリバリのロックを25曲。

だいぶみんなで悩んで 選曲し、セットリストを組んでもらった。

バンドスコアを渡し、4ヶ月くらい陸斗と虎太朗には、それぞれ練習してもらう。

7月のライブ前に、5回合わせて、通しでリハをして、ライブを迎える予定。



 俺たちもそれだけをやっている訳でもなく、それぞれが忙しかった。


大輝は、リーダーとしての統率力をかわれて、Realのライブや、仕事全般の企画や演出を任されることも多くなって、会社の人たちと会議することがやたら多くなった。

Realだけでなく、ルピアーノの新人のバンドとかの育成やプロデュースにも係わっている。


6年目辺りから、瞬はルピアーノネクスト養成所

で講師をしている。

どんなことを教えてるのかは、詳しく聞いたことないけど、1から音楽の基本を教えてるのかな。

優しく教えてるところは、イメージできない。

きっと、厳しめなんじゃないかな。

でも、瞬みたいな音楽の才能ある人に、音楽の基礎を教えてもらえるなんて、研究生たちは幸せなことだ。

 

悠弥は、突然ダンスに目覚め、ヒップホップダンスを習い、あっという間に超上手くなって、ダンサーってゆう肩書きが通用するレベルになった。

テレビの音楽番組で、Realの曲の間奏部分で悠弥のダンスを披露したら、大絶賛された。

それで、今回の日産スタジアムのライブでは、ダンサー20人と共に、悠弥がダンスをすることになって、曲の練習よりはダンスの練習をよくしている。

毎回、ライブ会場で販売されるグッズとか、ツアータオルのデザインは悠弥の担当。

センスがある。


龍聖は、CMに採用されることが多くなった。

複数のブランドと専属契約をしている。

ファッションブランドのモデルとか、アンバサダーってやつになったり、時計とか、外車とか、高級な物ほど、龍聖のイメージと合うようだ。

極度の人見知りで、俺たちメンバーから離れて1人での仕事は嫌がっていたが、マネージャーの木村さんが一緒に行くなら大丈夫になった。

人見知りだけど、あのルックス、スタイルは喋らなくていいって感じ。

CMや雑誌の広告で、龍聖を見ない日はないってくらい。


俺は、相変わらずで、詞を書き、曲を作るのが1番の仕事。

今は、ルピアーノの後輩のバンドに楽曲提供したりもしている。

忙しい毎日だ。



 そんなこんなで、7月。

日産スタジアムでのライブは、天候にも恵まれ、大成功だった。

7万人の声援は、心がふるえた。

俺たちRealを応援してくれる人が、こんなにいること。

本当に感動した。





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