5ー31
テレビの情報番組で、Realのアルバムをとりあげてくれると言うことで、その収録。
テレビ局ではなく、横浜の山手にある音楽スタジオでの撮影だ。
スタジオに着くと、3人はもう着ていた。
「おつかれ~」
「お!桂吾、龍聖おつかれ~」
悠弥が走って寄って来た。
「お待たせしちゃってた?」
「いや、俺ら今日の仕事 ここからだったから、3人で早めに来てただけだよ。スタッフさんも誰もいなかったくらい」
大輝が笑いながら言った。
瞬はスタジオのピアノを弾いていた。
これ ちょっと、久しぶりに聴くな。
ショパンか。
楽譜もないのによく弾けんな。
すげー、いい感じ。
「桂吾さん、龍聖さん、衣装用意してありますけど、どうしますか?」
衣装スタッフの三崎さんが聞いてきた。
「めんどいから、このままで良ければこれでやりたいけど、なんか、テレビのスポンサーとか?
なんかに、引っ掛かるようなら着替えるし」
「あ!確認します!!」
そう言うと走って行った。
今着てる私服のままで大丈夫って言われたから、俺と龍聖は、衣装には着替えなかった。
スタジオだけど、今日はただ椅子に座ってのインタビューって感じで、演奏するわけじゃないらしい。
発売された最新アルバムと、これから始まるツアーの宣伝ってことだな。
テレビ局のスタッフさんたちが10人くらい到着した。
インタビューしてくれるのは、若い女子アナだった。
「はじめまして!山都テレビの草壁香蓮です。本日は、よろしくお願い致します」
あ、テレビでよく見る人だ。
生声、良い声だなと思った。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
大輝が挨拶した。
「あの、私、長野陵北高校なんです!」
「えーーーーー!!!!マジで~~~!!!!」
俺と悠弥が声を合わせて笑った。
「私、高2の時にRealの皆さんデビューして、もう学校中 Realの話で、もちきりでしたよ。
陵北の先輩なんだよ!!って。いつか、お会いしたいって思っていました」
と、興奮気味に声を震わせた。
「えっと、じゃ草壁さんは俺らの8こ下の後輩なのかな」
と俺は、聞いた。
「そうです!今日、Realのインタビューだって聞いて、もう眠れなかったです!!」
「あはははは~!ありがとうございます」
「私、shunさんと同じ特進クラスだったんですけど、特進でもshunさんは伝説の人として語り草でした」
「あぁ、特進なのに、進学しなかったって?」
瞬は、はははと自嘲気味に笑いながら言った。
「えぇ。創立以来、特進で大学進学しなかったのは、shunさんだけだそうです。でも、常に学年で3位内の成績で、どこにでも入れたはずだって。大学に行こうが行くまいが、才能に恵まれて、そして自分の進むべき道をあの時点で決断することは、そうそう出来る事ではないって。
大体みんな、どう進んでいいのかわからないからとりあえず大学へ進むけれど、やりたいことがハッキリしていれば、将来を見据えて行動することは悪いことではないと」
「あはははは!そんなこと言われてんの?
俺、大学進学しないで就職しますって言ったら、校長室呼ばれて、担任と進路指導の先生まで呼ばれてて、一緒に校長に怒られて、なんか凄い申し訳ない感じだったんだけど」
「あ、そうですよね。卒業してすぐにデビューではなかったですもんね。shunさんが就職されたアオイ楽器さん、一画にshunさんのコーナー出来てて、写真とかめちゃ飾られてるし、皆さんが使っていた貸しスタジオなんて、聖地みたいになってますよ!!」
「聖地!!あはははは!!」
みんなで笑った。
「Realの皆さんは、陵北の伝説の憧れの卒業生です!」
インタビューの打ち合わせをしなきゃいけなかったのが、私的な話をずっとしちゃってすみませんと謝った。
インタビューが終わって帰りの車の中で、かわいかったなと瞬が言った。
そうだな。と、みんなで笑った。
瞬が女性の話をすることは、初めてじゃないかな。
そうだな!俺は、もう1回そう言ってみた。
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