5ー17
7年目
俺と悠弥で、ラジオの番組のパーソナリティをやらせてもらえることになった。
2人で好きに喋っていいって。
水曜日の22時から23時45分までで、生放送。
仕事の移動中とかに、悠弥と打ち合わせをして、どんな話をするか、どんな曲を流すかを決める。
俺も悠弥もお喋りだし、中学からの付き合いだから、話のネタは尽きない。
話そうと思っていた話しから、どんどん脱線して違う話になっちゃう。
でも、それが素の俺ららしくていいと言われた。
毎回ゲストを呼んでいいって。
気になる女性アイドルでも女優さんでも誰でもいいですよと言われた。
俺と悠弥は、高校からボクシングをやっているから、チャンピオンの葉山翔矢に会いたいってお願いしたらゲストに来てくれた。
普段マスコミ嫌いで有名な葉山翔矢が、ラジオに出ると言うことで、テレビやネットニュースでも話題になった。
普段インタビューでも、はい、そうですね、ありがとうございます、がんばります、くらいしか話さない葉山翔矢が、Realの大ファンです!って、夢みたい夢みたいと少年のように目を輝かせていた。
ラジオだから、それは俺らしか見れなかったけど。
8歳年下の葉山は、高校生の時にRealを初めて聴いて、ずっとファンだと、ライブも何回も行ってます!って、悠弥が毎回デザインしているRealのツアータオルを全部持ってて、試合の時も愛用していると言ってくれた。
「毎回すげー、いいんすけど、特に、5枚目のアルバムのツアーが最高で、そん時の赤いツアータオルのデザインも超カッケーくて!!最高っす!!」
全然 別の世界で活動しているから、接点がなくて直接 挨拶もできなかったけど、と。
それは、俺らも同じで、葉山の試合を俺ら2人で何回も見に行っていたけど、普通にチケットを買って、一観客として観戦していただけだった。
1時間45分のうち、ゲストの時間は30分だったけど、暇なんで一緒にいてもいいですか?と言うから、最後までずっと喋っていた。
連絡先を交換して、今度プライベートで3人で飲みに行こうって話した。
お互いにサインを書いたり、書いてもらったり、一緒に写真撮ったり。
会いたい人に会わせてくれて、話が出来るなんて、すげー最高の仕事だな。
今度は、誰に会いたいかな〜って悠弥と考えるのも楽しかった。
有名人じゃないけど、2人とも車が好きだから、自動車メーカーの開発担当の方を呼んで、車の話をずっとしたり。
マニアックな話しすぎて、リスナーは意味わかるかな?って話だったけど、俺らにとっては本当に興味深い内容だった。
2人の中学の時の担任の先生に来てもらったり。
俺らのバカなエピソードをいっぱい覚えていてくれて、ホント笑った。
こんな有名になるとは、夢にも思わなかったって。
呼んでくれて、ありがとうと言われた。
いろんな人と会って、話が出来るって、ホント楽しい。
俺は、大輝に誘ってもらって、バンドに入っただけなのに、Realとして進んできたら、こんなにも道が拓けた。
音楽をやることが、もちろん本筋で、そこはキチっとするけど、それ以外のことをこんなにも楽しくやれるなんて、本当にありがたいことだと思う。
やっぱ、俺、普通の人みたいに、スーツ着て会社に行くみたいな人間にはなれなかったな~。
向き不向きがあるってことか。
芸能界は、俺に向いているのだろう。
会いたい人って聞かれて、即座に思ったのはやっぱり彼女だった。
今、どこで何をしているのか、もう32だし結婚しているのかな。
会社の人とか、ラジオ局の人とかに、この人に会いたいって言えば、簡単に探し出してくれるだろう。
だけど、会いたいけど……そんな会い方をしたいんじゃないんだ。
お膳立てしてもらって会うんじゃなくて、
いつか……
どこかで……
バッタリ!って
そんな いつかが、こないことも わかっている。
そして、偶然バッタリ再会したとしても、何も始まらないことも わかっている。
だから、彼女に会いたいってゆうのは、心の中で神様にお願いしていたけど、口に出して誰かに言うことはなかった。
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