第38話 とにかく全部が、可愛い③

「おかえり、ヴィー」

 イリッツァがドアを開けて出迎えると、カルヴァンは少しご機嫌に目を眇めた後、軽くハグをして額にキスを落とした。

「ただいま、ツィー。先に寝ててもいいって言っただろう」

「ぅ…いや、起きてるよ、これくらいの時間なら」

 当たり前のようにさらりと落とされた唇にほんのりと頬を染めてから唇をとがらせる。相変わらず、この男はどうにもスキンシップが過剰だ。

「そうか?でも、朝から儀式だのなんだの、お前、働きづめだろう」

「――――その言葉、そっくりそのまま返す…」

 装束のマントを外しながら自室へと向かうカルヴァンの後ろをトテトテと意味もなくついていきながら、相変わらずの過保護っぷりに半眼で呻く。

 確かにイリッツァは朝から聖女としての仕事で忙しくしていたが、それでも夜のかがり火が焚かれる神事が終われば解放されたのだ。こんな時間まで帰ってこなかった恋人に心配されるほどではない。

「わ、マントも装束も、結構煤がついてるな。騎士団も明日は、さすがに休みだろ?服、洗う?」

「あぁ、そうだな。――お前も明日は休みだろう?」

「うん」

「じゃあ、明日、お前の服と一緒に、一気に片付ければいい。二人でやった方が早い」

「う、うん…ありがとう…」

「?…そもそも半分は俺の服だ」

 当たり前のような顔で言われて、苦笑を返す。女性の社会進出が昔に比べたら進んだと言われているが、まだまだ家事は女性がするもの、という認識も強いのが実態だ。まして、普段の激務を思えば、カルヴァンには休日くらいゆっくりしていてほしいと思うのだが、この男はどうやら当たり前に家事を分担してくれる気らしい。

「あ、そろそろ帰ってくると思って、風呂、準備しておいたぞ」

「あぁ、助かる」

 言った後、ふとカルヴァンはイリッツァを振り返った。きょとん、と瞳を瞬くイリッツァを見つめ、カルヴァンは思い出したように口を開く。

「お前、もう寝るか?」

「へ?…なんで?」

「…ちょっと待ってろ」

「?…うん」

 着替えるのだろうか、自室へと引っ込んだカルヴァンを見送って、イリッツァは首をかしげる。

(…まぁいいや。ディーからもらったお茶でも淹れてやろう)

 光魔法をかければ疲労など一瞬で回復するのに、どうにもカルヴァンは嫌そうな顔をするのだ。そのため、この前、ランディアが屋敷に来た時に、疲労回復の効能がある茶をブレンドしてもらい、置いて行ってもらった。これなら、彼をさりげなくねぎらうことが出来るだろう。――ランディアがブレンドしたものだ、などと言ったら、少し不機嫌になるくらいはするかもしれないが。

 湯を沸かして茶器を用意し、ランディアに教わった通りに砂時計で時間を図って茶葉を蒸らす。

 見るともなしにサラサラと流れ落ちていく砂を眺めていると、ガチャリ、とカルヴァンの部屋の扉が開いた。

「ツィー」

 呼びかけられ、顔を上げると――

「ぅわっ!?」

 視界一杯に、きらびやかな包装紙が広がり、驚いてのけぞる。

(――ん…?包装、紙…?)

 咄嗟に目の前に掲げられたそれを手に取って気づく。

 キラキラと華やかかつ上質なそれに包まれた、薄くて軽い箱。

「え…?な、何これ…」

 きょとん、と目を瞬いてカルヴァンを見上げると、軽く首を傾げられた。

「――今日じゃないのか?」

「へ?…何が?」

「誕生日」

「――――――――――――――え――――…」

 言われた言葉に、一瞬言葉が出てこない。

「なんだ。忘れてたのか?」

 呆れた顔で言われて、もう一度手元の包み紙へと視線を移す。

 ――忘れて、いた。

 そうだ。

 今日は――イリッツァ・オームの、誕生日。

 ふ、とカルヴァンが吐息で笑った気配があり、もう一度顔を上げる。カルヴァンはいつものように片頬を歪めるようにして笑った。

「『十六歳』になるのは、初めてだろう?」

「――――!」

 カルヴァンの言葉に込められた意味に気づき、ハッと小さく息をのむ。

「おめでとう、ツィー」

「っ――…あ、り…がと……ヴィー…」

 じわり…と胸が温かくなり、言葉がうまく出てこない。何とか絞り出すように礼を伝えて、ぎゅっと手渡されたプレゼントを抱え込んだ。

 リツィード・ガエルは享年十五歳。誕生日は、春の手前の月だった。

 確かに、『十六歳』になるのは、人生で初めてだ。

 リツィードが、どんなに生きたくても生きられなかった十六歳以降の人生を、イリッツァは、今日から歩む事ができるのだ。

 世界で一番大切な人の隣で、一緒に、手を取って歩いていけるのだ。

 その奇跡に、イリッツァは熱く胸を焦がし、込み上げる想いを噛み締めた。

「ん?…茶、淹れてくれたのか」

「あ、う、うん。飲む?」

「あぁ、もらおう。――お前も、プレゼント開けたらいい」

「うん」

 行儀悪く立ったままカップに口を付けるカルヴァンは、どうやらここでの開封を望んでいるようだ。反応が見たいのかもしれない。

「…お前、誕生日にプレゼントなんか贈るやつだっけ?」

「昔は飯作ってやっただろう。今日はさすがにそんな暇なかったからな。――心配しなくても、飯は明日作ってやる。食べたいもの考えておけ」

「ぅ…うん…」

 やや予想と違う回答が返って来て、気恥ずかしい思いで小さくうなずく。

 リツィードだった時代、誕生日は基本的にいつもカルヴァンと過ごした。当たり前と言えば当たり前だが、あの冷え切った家庭で、両親に誕生日を祝ってもらったことなどなかった。何歳かの誕生日の時にそれを知ったカルヴァンが、「今年から、お前の誕生日には、何でも好きな飯を作ってやる」と言い出し、それからは毎年、彼の手料理を食べる待ち遠しい日に変わったのだ。その日だけは、カルヴァンも女遊びに出掛けることはなく、リツィードのリクエストに応えて市場で食材を調達してきては、兵舎の調理場でいつものごとく適当な目分量の男飯を作ってくれた。リツィードの時代の、忘れられない、大事な想い出だ。

「――あぁ。言っておくが、俺は、貢がせることはあっても貢ぐことはしなかったぞ」

「っ…!」

 イリッツァが気恥ずかし気に俯いたことで気づいたのか、カルヴァンは当初のイリッツァの言葉の意図に気づいたかのように言い直した。必死に何でもない風を装ったが、包装紙を開ける手を一瞬留めて息を詰めたことを、きっとカルヴァンは気づいているだろう。くっ、と一つ、いつもの笑い声が小さく響いた。

「嫉妬か?」

「う、うるさっ…違う!」

「くく…相変わらず、素直じゃないな。可愛い」

「っ……」

 素直でないことの、どこが可愛いというのか。イリッツァは耳を赤く染めながら、カルヴァンの揶揄する声を聴かないように包装紙を開いていった。

 中から出てきた箱を開けると――

「わ――服…?」

「あぁ。お前の祭典の時の装束を担当しているデザイナーに頼んだ。サイズは言わずもがな、センスもお墨付きだろう」

「えっ!?た、たたた高かったんじゃないか!?それ――!」

「贈り物の値段を聞くのは野暮だろう。まぁ、普段から大して使わないから、金は意外とある。心配するな」

 聖女の衣装を担当するのは、王都で一番というお墨付きのあるデザイナーだ。当然、普通に依頼をすれば高額になることは間違いないが、現実的な心配をする婚約者に呆れてカルヴァンは左耳を掻く。清貧を愛する心は素晴らしいが、自分がこの国でも有数の上流階級の暮らしを約束されている身分だと、そろそろ自覚してほしい。第一、男からのプレゼントに値段を聞くなんて、本当に常識がない。

 イリッツァは、箱から取り出した布をゆっくりと広げる。

 純白のワンピース型をしたそれは、シルクと繊細なレースをふんだんに使ったデザインだ。ごてごてとした下品な飾りは一切なく、繊細な布の重なりとレース、さりげなくあしらわれた控えめな刺繍だけで女性らしい美しさを演出する。ところどころに織り込まれた金銀の糸が、光の角度で反射して上品な華やかさを醸し出していた。

「すご――…綺麗だ…」

「気に入ったか?」

「うん…!ありがとう…!」

 カルヴァンが服を発注するとなれば、肌を露出するようなデザインなどをオーダーされないかと一瞬不安だったが、見る限りスカートの丈はかなり長く、襟ぐりは多少ゆとりはあるものの、どこかの文具屋の娘が着ていたような下着が見えるのではというほどの開き具合ではない。袖もちゃんと長袖で、ドレープがあしらわれた他では見たことのないデザインだが、さすが王都一のデザイナーといったところだ。

「――でも、あれ?これ、普段着…じゃ、ない、よな…?」

 さすが上質な絹やレースを使用しているからか、肌触りは最高級だが、外に着ていくには些か心もとない薄さだ。

 戸惑うように見上げると、カルヴァンはカップに口を付けながら答える。

「当たり前だろう。そんなの着て外出歩いたら、その姿見た奴全員ぶっ殺すぞ」

「……ってことは、これ、寝間着…?」

「せめてネグリジェとか言えないのか、お前は」

 半眼で呆れたように呻く。小さく嘆息した後、言葉をつづけた。

「日中は、お前は聖職者の服を着ていることが多いし、休みが合いでもしない限り、お前の普段着を見る機会なんかあまりない。――でも、夜なら、俺が王都に居るときは毎晩見られるだろう。しかも、それを着た姿は、世界中でただ一人、俺しか見ない」

「はは…お前らしい」

 どこまでも独占欲を加速させていく婚約者に吐息を漏らすように目を眇めて笑ってから、もう一度しっかりと正面からカルヴァンを見据える。

「今日から着る。――ありがとう、ヴィー。すごく、嬉しい」

 ふわり…と花が綻ぶようにイリッツァの表情が緩む。

 聖女の笑みでもなく、いつもの吐息を漏らす親しみやすい笑みでもなく――思わずドキリとする、"女"を感じさせる笑顔。

「――お前は、本当に、何回俺を惚れさせる気だ…」

「へ?」

「何でもない。――可愛い、って言ったんだ」

 カップを置いて、ちゅ、と戯れに唇を盗むように奪う。イリッツァは驚きに目を瞬いた後、さっと頬をいつものように桜色に染めて、軽くその白銀の長い睫をそっと伏せた。

(…最近、ちょっとした表情とかが、本当に女っぽくなったよな。…いや、勿論いい傾向なんだが)

 こうしてキスをした後も、ただ羞恥に子供が目を泳がせるように赤くなっていた以前と違い、女らしい恥じらいを感じさせるような表情が多くなった。ともすれば、肌の一つも露出していないくせに、濃密な色香を感じることすらあるから不思議だ。いつもは、カルヴァンが意識してそちらに持っていこうとしない限り甘い雰囲気になどならなかったのに、イリッツァが不意に見せる仕草や反応に、甘さが漂うことがある。――ランディアが、『恋人らしくなった』というのは、こういうことかもしれない。

(これ以上なくいいことなんだが――問題は、俺の忍耐があと一年も持つかどうか…)

「――今度、"スイッチ"なんか入れようもんなら、戻ってこれない気がするな――」

「は?」

「何でもない。――風呂、入ってくる。お前もそれに着替えておけ」

 左耳を掻いてごまかし、カルヴァンは万が一にもスイッチを入れないように、さっさと風呂場へと退散した。



 風呂を出て寝支度を整えて寝室のドアを開けると、寝台に腰かけていたイリッツァがぱっと銀髪をはじけさせて振り向いた。その装いは、先ほど贈ったばかりの真っ白なワンピースタイプの美しいネグリジェだ。

(可愛い――)

 自分が贈ったものを恋人が身に着けている様を見るのも、なかなかに独占欲が刺激されて悪くない。世の中の恋人同士が贈り物を贈り合う気持ちに生まれて初めて彼なりの理解を示しながら、カルヴァンは、片眼を眇めて悦に入るように愛しい婚約者の姿を眺めた。

「やっぱり、あのデザイナーは優秀だな。――そういえば、今日の祭事での清楚な装いも、最高に似合ってた」

「ぁ、う、うん…」

「こういう、女っぽい服、お前は自分ではなかなか選ばないだろう」

「そ…そりゃ…な…」

「眼福だ。――今日、これを抱きかかえて眠るだけなのが本当に惜しい」

「っ…お前、本当にそればっか…!」

 いつもの軽口に軽く頬を染めて言い返しながら、近寄って来たカルヴァンを軽く殴る。くく、とカルヴァンは喉の奥を震わせた後、ちゅ、と音を立てて額にキスを落とした。

「まさか、この日を、こんな上機嫌で終えられる日が来るとは思わなかった」

「――――!」

「おかげで、来年もこの時期が苦じゃない。――いや、むしろ来年に限っては今から滅茶苦茶待ち遠しい。明日にでも来てほしい」

「っ…」

 嘯く軽口の内容は先ほどとさほど変わらないのに、その飄々とした口ぶりの裏には、推察することしかできない彼の十五年の苦悩が垣間見えて、イリッツァは今度は言い返すことが出来なかった。

 誕生日と命日が一緒というのはなかなかに複雑だなと思いながら十六年生きてきたが――今は、それが一緒でよかった、と思う。

 今年からは、毎年やってくるこの日を、『親友の命日』ではなく『妻の誕生日』と思ってもらえるだろうから。

「寝るか」

「あ、待っ――ちょ、ちょっとだけ、待って…」

「?」

 慌てて灯りを消そうとしたカルヴァンを制す。

「ちょ、ちょっと、そこ座れ」

「?…どうした」

 少しばかり緊張した様子のイリッツァに、カルヴァンは訝し気な表情で、ギッとイリッツァが座る寝台の向かい側に腰かけた。

「ちょっと――目、閉じて」

「は?」

「いいから」

「……何なんだ、一体」

 早口で要求され、小さく嘆息してから、言われた通り素直に目を閉じる。

(疲労回復の魔法でもかけられるのか?――さっきの礼に、何かサプライズでもしてくれるのか)

 イリッツァも何かを用意していたのか――とぼんやりと考えていると――

 ふ…

「――――――――――」

 それは、いつかの雪のように。

 一瞬触れて――触れたことすら忘れてしまうくらいあっさりと温度が消えていく。

 ただ、雪とは違い――温かく、少しだけ、湿り気が――

 ぐいっ!

「ぅわ!!!?」

「――どういうことだ?なんで目を閉じさせた?そういう可愛いことをする時は絶対にサプライズなんか仕掛けるな阿呆」

「っ――!」

 幻のようにしっとりとした柔らかい何かが唇に触れた瞬間、すぐさまカルヴァンは眼を開けるのとほぼ同時に、身を引こうとしていたイリッツァを両腕の中に捕まえて顔を覗き込んだ。

「あぁくそ、もう一回だ、ツィー。もう一回しろ」

「やっ…やだ!!!絶対やらない!!」

「なんでだ。いいだろう。お前からキスしてくれる顔だぞ。――絶対見たい」

「み、みみみ見せないっ…」

「ケチくさいこと言うな。――あぁ、可愛い。可愛い、ツィー」

 キスをさせたいと言っているくせに、雨のようにキスを降らせてくるのは何なのか。イリッツァは顔を真っ赤にしながらうつむいて雨から逃れようとするも、どうやらカルヴァンは気にしていないらしい。覗き込むようにして、額や頬にも軽やかなリップ音を立てながら何度も口づけを繰り返す。

「どんな風の吹き回しだ?今まで、お前からキスなんてしてくれたことなかっただろう」

「っ……」

「この服の礼のつもりか?――贈り物ごときでこんなことしてくれるなら、明日から毎日プレゼント地獄だぞ」

「そ、それはやめろっ…」

 控えめにツッコミを入れるが、言葉の合間にも何度も降ってくる唇のせいで、あまりうまく伝えられない。いつの間にかぎゅっと閉じていた瞳をそっと開くと、目の前にかすかな情欲の炎を湛えた灰褐色があった。

「あぁ。――ヤバい、スイッチ入りそうだ」

「っ――ちょ、まっ…」

「ツィー。――愛してる」

「~~~~~っ」

 こうなった時のカルヴァンは、こちらの話など全く聞かない。噛みつくように唇を重ねられ、ねっとりと堪能される。

 いつまでもしつこい口付けに、ドンドン、と抗議の意味で軽く肩を叩くとやっと体が離れていった。

「なんだ。もう少し楽しみたかったのに」

「っ…ば、かやろ…酸欠で殺す気か…!」

「鼻で息しろって最初に教えてやっただろ」

 ふっと悪びれることなく鼻で笑われて、キッと恨めし気に睨む。肩をすくめてその視線を受け流す瞳には、どうやら微かに見えた情欲の炎は収まっているようだった。ほっ、とイリッツァは安堵の息を吐く。

「しかし、誰の入れ知恵だ?――まぁ、どうせあの暗殺者辺りだろうが」

「ぅ゛……」

 図星を差されて目を泳がせると、くくっと笑い声が響いた。

「だ、だって…ディーが……俺からキスしたことなんて一度もない、って言ったら――」

「別に、とがめてないぞ。目を閉じさせられたのだけはいただけないが」

「そ、そそそそれは譲れない!」

「じゃあ、今度はキスするから眼を閉じろと宣言してからやってくれ。――薄目開けて見ておく」

「やるか馬鹿!!」

 カッと赤くなって抱きかかえるようにされていた体を押しのけ距離を取る。本当に、いくつになっても悪童のような性格は変わらないらしい。

(全然、翻弄なんて出来なかったぞ、ディー…)

 ランディア直伝の"愛される努力"の一つだったわけだが、ランディアはこれを授けた時、「たまにはカルヴァンを翻弄してあげなよ」と言っていた。こういうのが好きそうだというのは、さすがに長い付き合いでわかっていたから、嬉しいサプライズプレゼントをもらった礼に――そして翻弄出来たらラッキーと思って――勇気を出してやってみたのだが、どうやらこの余裕綽々な様子を見るに、翻弄は出来ていないらしい。喜んではくれたようだが。

(はぁ…やっぱり、慣れないことはするもんじゃない)

「ちょっと、座れ。真面目な話する」

「?…言っておくが、別れ話は聞かないぞ」

「しねーよ、そんなの。また家燃やされそうになるのは御免だ」

 半眼で呻きながら返す。

 本当は、キスされて驚いて思考が止まったカルヴァンに、どさくさ紛れにささっと伝えて終わろうと思っていたのだが――どうやら、そういうわけにもいかないらしい。

 正面から向き合わなければいけないことに気後れしながら、それでもイリッツァは静かに覚悟を決めた。

(神様――どうか、お許しください)

 十六年前と同じく、何度も罪を犯す愚かな自分を。

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